Flume『Flume』インタビュー


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シドニー出身の21歳という、若きエレクトロニック・ミュージック・アーティスト、Flume(フルーム:本名 Harley Streten)。オーストラリアの注目レーベル、Future Classicが送り出した新星で、そのドリーミーなサウンド、ソウルフルなメロディー、そしてエッジの効いたビート・メイキングが話題を呼び、本国ではワン・ダイレクションを押さえチャートの1位を記録するなど、かなりの人気を集めている注目株です。

そんなFlumeのデビュー・フル・アルバム『Flume』が、日本でもリリースされました。USではMom & Popからリリースされ、UKでは Transgressiveからのリリースが決定しているアルバムです。彼独自のエレクトロニック・ミュージック・センスで、キャッチーかつエモーショナルな音世界をつくり出している本作。その内容は、「Left Alone ft. Chet Faker」「Sleepless ft. Jezzabell Doran」「Holdin On」といった話題曲を収録した注目作となっています。

ここでは、本作『Flume』の内容について、FlumeことHarley Stretenのインタビューをご紹介しましょう。以下に、最新PV「‪More Than You Thought‬」も貼ってありますので、チェックしてみてください。


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Flume『Flume』インタビュー

__音源の発表やライブを行うようになってから、あっという間に世界中で話題となって、色々動きが早いと感じていると思います。始めた頃は、こんな風になると想像してましたか?

「周りの動きが早いと感じることもあるけど、逆にそうでもないと思う瞬間もあるんだよね。まだ同じ所に住んでるし、同じ車を運転してるし、同じ友人とつるんでるし(笑)。でも海外に行く機会が一気に増えたのと、日々に決まったルーティーンみたいなのがないのは確かだよ。成功できるって自信を持ってやってきたけど、ここまで動きが早いとは思ってなかった」

__音楽に興味を持ち始めたのはいつ頃ですか? 特に何に影響を受けて音楽にのめり込んでいきましたか?

「2000年前後のトランス・ミュージックに凄く影響を受けたね。物心ついた時から音楽はずっと好きだったけど、特定のジャンルに取り付かれたのは、トランスだったかな。隣に住んでた兄弟のお兄ちゃんがよく聴いてて、そこに遊びにいっては音源を貸してもらったり、CDに焼いてもらったり。まだ9歳とかだったかな」

__自分自身で音楽をつくり始めたのはいつ頃ですか?

「実はサックスを9年くらいやってたんだけど、ビート・プロダクションが徐々に自分のメインのアウトプットになっていったね。11歳くらいからそれをやり始めたから、もう10年近くか。趣味でずっとやってきたけど、ここ1年で本気の仕事になってきたね」

__あなたの音楽には、温もりや人間味があります。エレクトロニック・ミュージックの中で、その生々しさをどのようにして表現しようとしているのでしょうか?

「自分は、未完があるからこそ、それが完璧だと思うんだ。少しミスがあっても、あえてそれは残したりする。ダンス・ミュージックをずっと聴いてきて、その無機質さ、あまりの完璧さに飽きたんだ。磨かれ過ぎているというか、機械感が強いというか。ドラムのビートをつくる時とかも、グリッドを消して、リズムに個性を与えようとしているよ」

__作曲はどのように進めるのでしょうか? 凄くメロディックですし、いろんなレイヤーを重ねている感じがします。いわゆるシンガー・ソングライターのような感覚で挑むのでしょうか?

「自分で曲のアイディアをしっかり形にできるように、いくつかのガイドラインや戦略を決めているんだ。多くの場合は、コード進行かビートから始めるね。結構ビッグで、ヒップホップのようにヘヴィーな曲にしたかったら、特にビートから始める。けど「Sleepless」みたいな、もっとチルな曲だったら、メロディーから考えて、ビートは後から組み込むんだ。トラックのクライマックスは16か32のループで組むのが好きで、それが完成したら、ヴァースやBセクションを書いたりする。そこからまた曲をブロックごとに別けて、細かい部分を満足するまで微調整していくんだ」

__なるほど。

「EQやコンプレッションのような本当に細かい作業は、曲の全体の響きや、クリエイティブな作業を邪魔することが多いから、最後の最後まで置いておくね。…これはあくまでも作曲の一つの例だけどね。日によってはもうずっとメロディー考えたり、ビートを工夫したりしているよ。でも一日中キック・ドラムをEQして何もできない…みたいなことになるのを避けるために、自分で決めているやり方でもあるんだ」

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__曲のどのくらいがサンプルされているんですか? 結構なディガーだったりするんでしょうか?

「サンプルをするのは昔好きだったよ。レコード屋に行っては、激安で放出されている箱から、何か不思議でインスピレーションになるようなものを探してた。ただ今の活動の中では、著作権などの問題が必ず生じるから、サンプリングは避けているね。でも2ドルのレコードをいっぱい買って、何に出会うか分からないという、あのワクワク感は恋しいね」

__エレクトロニック・ミュージックをやっていると、すぐジャンル分けされることがあるかと思いますが、あなたの音は幅広く表現されているように思います。様々なスタイルをクロスオーバーしている意識はありますか?

「自分が良いと思ったものをつくっているだけなんだよね。凄く飽きっぽくもあって、何か新しいやり方、スタイルがないか、常に探してるんだ。意図的にジャンルの壁を崩そうとか、そんな大層なことは考えてなくて、気に入ったものを表現しているだけだよ」

__アルバム『Flume』では、ボーカリストも幅広いスタイルの人を起用していますね。どうやって出会ったボーカリストですか? また、ボーカルはあなたの音楽にとってどれほど大事なものなんでしょうか?

「アルバムに参加してもらった多くのボーカリストは皆、Future Classicレーベルとつながりがある人ばかりだよ。最初、歌ってもらう人を探す時に、まだ僕自身はあまり知られていなかったいから苦労していて、レーベルが色々と手伝ってくれたんだ。例えば「Bring You Down」のGeorge Mapleは、Flight Facilitiesの「Foreign Language」で歌っていた人だね。一回会って、その流れで友人の家で録音したよ。「On Top」のT-Shirtは、実はニューヨーク出身で、自分のマネージャーが彼に偶然出会って、そこから自然と発展していった」

__「Left Alone」のChet Fakerは、いかがですか?

「Chet Fakerは、面白い話で、ある日、友人が彼の音楽を紹介してくれたんだ。普通にビール飲んでのんびりしている時に、彼がChetのCDをかけてね。一瞬であの歌声に惚れ込んで、翌日すぐ彼の名前をググってさ(笑)。そしたら、実はメルボルンに住んでるってことが分かって、びっくりしたよ。アメリカか、もっと遠い場所にいる人だと思ってたから。で、メルボルンに行った時、会わせてもらって、そこからすぐ意気投合して、もうあとは自然な流れだった。友人やつながりのある人から多くのコラボレーションが生まれているから、とても嬉しい」

__アルバム『Flume』は、初のフル・アルバムになりますが、全体のテーマはどういうものでしたか? それとも、シンプルに今までの楽曲を集めた感覚でしょうか?

「レーベル(Future Classic)と契約してから、アルバムの曲を全部書いたんだ。だから、その時の自分の人生を切り取ったような感じだね。Flumeはずっと趣味でやっていたプロジェクトだけど、レーベルが僕に自信を与えてくれて、もっと色々工夫してもいいという自由をもらえた気がする。それを反映した作品だと思うよ」

__あなたは、ライブでも話題になっています。こうした宅録ビートの世界をライブ・パフォーマンスに昇華させる時、どのような部分を意識しているのでしょうか?

「お客さんとの一体感を生むことと、視覚的にも面白いものにすることが大事だと思う。今、ちょうど次のツアーに向けて新しいライト・ショーが完成したよ。それぞれの曲にインタラクティブなビジュアルが連動するんだ。で、Infinity Prismという機材を手に入れたから、これで多くのキッズ達の度肝を抜きたいと思っているよ」


__華やかなダンス・ミュージックの世界にいながら、あなたの音楽にはどこか切ない雰囲気、メランコリックな部分がありますね。あなた自身、アルバム『Flume』のエモーションはどのようなものだと考えていますか。また、その感情はどこから来ていますか?

「メランコリックな音楽は、小さい頃から好きなんだ。あの、感情的なコード進行とかに惹かれるんだよね。最初トランスにハマったのも、そこかも知れない。MobyやM83のようなアーティストは大きなインスピレーションになっているし、彼らのようにサウンドに感情的な要素を取り入れて、それをエレクトロニック・ミュージックの世界でやってみたいって、自然に思っていたよ」

__あなたの故郷であるオーストラリアには、ユニークで、盛んなダンス・ミュージック・シーンがありますね。その中にいて、あなた自身はシーンをどのように見ていますか?

「ドープなビート・ヘッズもいれば、エレクトロニック・ミュージックのことをあまり分かっていない若い子達もたくさんいて、自分のような音楽がその両方の層に届くのは、凄く嬉しいことだね。いんなリスナーとクロスオーバーしていて、それはとてもポジティブなことだと思う」

__そうですね。

「自分もある程度知られるようになって、ここからまたさらにかっこいい若い連中が出始めてきたんだ。Kilter、Willow Beats、Polographiaとかね。こういう流れは嬉しいよ。そして、もっと前からやっているHermitudeやTa-Ku、Chet Fakerも、みんな名前が知られるような存在になったし。シーン自体は小さいからみんな仲間だし、お互い支え合ったりコラボしたり、環境が凄く良いよ。例えばTa-Kuは、最近僕の「Left Alone」をリミックスしてくれたばっかりで、これがもう最高の出来なんだよ!」

__では、今後の目標や野望を教えてください。

「ヨーロッパとUSをまたツアーでまわる予定なんだけど、その後は新作に向けて作業を始めたいと思ってるよ。ツアーばっかりしていたから、いろんなアイディアが溜まっているし、スタジオに戻るのが楽しみでしょうがないよ!」


【リリース情報】

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FLUME
Flume
(JPN) P-VINE / PCD-20271
発売中
HMVでチェック

tracklist
01. Sintra
02. Holdin On
03. Left Alone feat. Chet Faker
04. Sleepless feat. Jezzabell Doran
05. On Top feat. T-Shirt
06. Stay Close
07. Insane feat. Moon Holiday
08. Change
09. Ezra
10. More Than You Thought
11. Space Cadet
12. Bring You Down feat. George Maple
13. Warm Thoughts
14. What You Need
15. Star Eyes

【オフィシャルサイト】
http://p-vine.jp/artists/flume
http://flumemusic.com/
http://www.facebook.com/flumemusic

【VIDEO】


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