ロサンゼルスのビート・シーンを拠点に活動する、唯一無二の個性と才能を有するエレクトロニック・アーティスト、フライング・ロータス(Flying Lotus)。エレクトロニカ、ジャズ、ソウル、ヒップホップ、ロックなど、あらゆる音楽ジャンルを横断するフリー&スピリチュアルな音楽性で、2000年代後半以降、シーンの最先端を象徴する存在として脚光を浴び続けてきた人気クリエイターです。レーベル、Brainfeederの主宰者としても有名ですね。
そんなフライング・ロータスが、フル・アルバムとしては名作誉れ高い『Cosmogramma』(’10)以来となる、通算4作目のニュー・アルバム『アンティル・ザ・クワイエット・カムス』(Until the Quiet Comes)を9/26にリリースします。作品毎に進化してきた彼らしく、リスナーの期待を決して裏切らない独自の音楽的センスをキープしながらも、前作とは異なる新たな音世界を描き出した本作。トム・ヨーク、サンダーキャット、エリカ・バドゥらとのコラボレーション曲を含むその内容は、アルバム・タイトルからも連想できる通り、より神秘的で美しい雰囲気を宿したものとなっています。
ここでは、本作『アンティル・ザ・クワイエット・カムス』の内容について語った、フライング・ロータスのインタビューをご紹介しましょう。なおフライング・ロータスは、11/23(金)幕張メッセ、11/24(土)大阪 ATCホールで開催される<エレクトラグライド2012>で、来日することが決定しています。
Flying Lotus『Until the Quiet Comes』インタビュー
__最新作『アンティル・ザ・クワイエット・カムス』の作品テーマについて教えてください。
「サイケデリックなロック・アルバムにしたいと思ったのがベースだね。自分が好きなプログレッシヴ・ロック、ジェントル・ジャイアントやカン(CAN)などから受けた影響は大きいよ。このアルバムを聴いて、そのことが判明するかどうかは、分からないけど。とにかくミニマルなアプローチのアルバムを目指していたんだ。多様な音のパレットから選びたいとは思わなかった、と言えば分かるかな。全体的に統一されたサウンドを創り出すというのは、以前から目指していたことなんだ」
__今作は、“神秘的事象、夢、眠り、子守唄のコラージュ”として制作した側面もあるそうですね。なぜそれらを題材にしたアルバムをつくろうと思ったのでしょうか?
「その当時抱えていた色々な問題や悩みを表現したかったということもあったし、自分の好きなプログレッシヴ・ロックから得たインスピレーションや閃きをもとに、このアルバムはできたんだ。リスペクトできる音楽を聴くと、スパークして閃くだろう? あれを大事にしなきゃって思ったんだ」
__“ミニマルなアプローチ”で制作したとのことですが、今作の曲づくりやサウンドメイキングで特に重視したことや、トライしたかったことは何でしたか?
「今流行っている音楽のようなものはつくりたくなかった。音楽をつくるなら、自分の独自性を大事にしたいからね。トレンディな音楽も楽しいけど、自分のアルバムにはいらない。俺は、自分の人生体験を反映するような作品がつくりたいんだ。トレンディな音楽は、ライヴの方にとっておくんだ」
__今作の制作プロセスというものは、従来作とは異なるものだったんでしょうか?
「音のスタイルは変わっても、作曲法は今までと全然変わっていないよ。というか、ビート・マシーンで遊んでいた子供の頃から変わってないね(笑)。スタジオの椅子に座るまで、何が起こるか分からない。機械で色々遊んでいると、インスピレーションが湧いてくるんだ。外にいる時に何か閃いたら、ケータイに録音してサンプルしたりもするけどね」
__今作には、トム・ヨーク、サンダーキャット、エリカ・バドゥ、ニキ・ランダ、ローラ・ダーリントンらが参加していますが、彼らとのコラボレーションは、あなたにどのような刺激を与えてくれましたか?
「コラボすると、自分だけでやっていたら絶対に思いつかなかったようなことが生まれるんだ。それが一番楽しいね。俺は彼らみたいにピアノやドラムができるわけじゃないから、自分だけじゃ不可能な要素を加えられるのも嬉しい。そうしないと、楽しくなくなってしまうだろう? 自分が落ち着ける場所ばかりにいても、面白い音楽はつくれないからイヤだね。特にサンダーキャットとは兄弟のような関係で、あいつが一番俺の向上心に火をつけてくれるよ。彼らとは、今後も一緒に仕事していきたい」
__先行公開された「See Thru to U feat. Erykah Badu」は、どのようにして誕生した曲ですか?
「エリカとは以前から交流があって、数年前に亡くなった俺の母親を思い起こさせる人物なんだ。彼女からのエネルギーは、とても強く感じられる。この歌の最後のハーモニー・コードの部分は、俺のアイディアなんだ。彼女との作業はとても興味深かったよ。言うまでもなく、彼女はすごい才能を持ったアーティストで、ビートの中での自分の立場をよく把握しているんだ。彼女独得のスタイルができ上がっているから、そのままで、すでにもう完璧なんだ。こっちであれこれ指示を出したり、音を編集しなくても、バランスのとれた歌い方が分かっている」
__アルバム・タイトル曲の「Until the Quiet Comes」は、どのようにして誕生した曲ですか?
「この曲と曲名には、色々な意味があるんだ。当時の俺の心境をほとんど物語っている言葉でね。アルバムを制作していた頃は、色々あって頭がおかしくなりそうだった。そんな時、呪文のように“静けさが訪れるまで”(until the quiet comes)って心の中で何度も繰り返すと、落ちつけたんだ。それ以外にも、“静けさが訪れるまで音楽を続けよう”とか、“静けさが訪れるまで自分自身を見つけよう”とか、色々なシチュエーションで自分の頭の中にポッと浮かんだフレーズでね」
__11月に行われる<エレクトラグライド2012>では、どのようなパフォーマンスを披露してくれる予定ですか?
「まだ全く何も考えていないよ。でもどんな形であれ、パーティーが盛り上がるのは間違いないぜ! アルバムをただそのまま流すつもりなんてないから、期待していてくれ」
__あなたの今後の活動目標や、新たにやってみたいプロジェクトなどがありましたら教えてください。
「とにかく今よりももっと良いものをどんどん創りたい、それだけだ。これからも成長して、他のアートにも挑戦したいし、一つのサウンドやヴァイブにずっと浸かっているのはイヤだから、どんどん挑戦して学び続けたい。本当は誰もがそうあるべきであるはずなのに、忘れちゃうんだよな。みんなもっと裸になるべきだよ(笑)」
interview iLOUD
photo Timothy Saccenti
【リリース情報】
FLYING LOTUS
Until the Quiet Comes
(JPN) Warp/Beat / BRC-350
9月26日発売
※初回生産分のみスペシャル・パッケージ仕様
HMVでチェック
tracklisting
01. All In
02. Getting There feat. Niki Randa
03. Until the Colours Come
04. Heave(n)
05. Tiny Tortures
06. All the Secrets
07. Sultan’ s Request
08. Putty Boy Strut
09. See Thru to U feat. Erykah Badu
10. Until the Quiet Comes
11. DMT Song feat. Thundercat
12. The Nightcaller
13. Only if You Wanna
14. Electric Candyman feat. Thom Yorke
15. Hunger feat. Niki Randa
16. Phantasm feat. Laura Darlington
17. me Yesterday//Corded
18. Dream to Me
19. The Things You Left (Bonus Track for Japan)
【オフィシャルサイト】
http://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Flying-Lotus/BRC-350/
http: //www.flying-lotus.com
http: //www.facebook.com/flyinglotus
【来日情報】
エレクトラグライド2012(electraglide 2012)
11/23(金)幕張メッセ
FLYING LOTUS / SQUAREPUSHER / FOUR TET / AMON TOBIN ISAM /
ANDREW WEATHERALL / KODE9 / DENKI GROOVE / DJ KRUSH /
DJ KENTARO / TAKAGI MASAKATSU and more!!
11/24(土)大阪 ATCホール
FLYING LOTUS / SQUAREPUSHER / FOUR TET /
ANDREW WEATHERALL / KODE9 and much much more!!
more info
http://www.electraglide.info/
http://smash-jpn.com/band/2012/11_electraglide/index.php