FOALS 美しく神秘的に進化を遂げた、 UKの人気アート・ロック・バンド


英オックスフォード出身のアート系ダンス・ロック・バンド、フォールズ。メンバーは、ヤニス・フィリッパケス(Vo/G)、ジミー・スミス(G)、エドウィン・コングリーヴ(Key)、ウォルター・ジャーヴァース(B)、ジャック・ビーヴァン(Dr)の五名。’07年にリリースしたシングル「Balloons」で一躍脚光を浴びた、当時台頭した新世代アーティストたちの中でも、人気、実力共にトップ・クラスのアーティストだ。’08年にリリースしたデビュー・アルバム『アンチドーツ(解毒剤)』は、全英チャート初登場3位を記録し、ゴールド・ディスクを獲得している。

そんな彼らが、待望のニュー・アルバム『トータル・ライフ・フォーエヴァー』を5月26日にリリースする。曲の構造やルールを重視した前作とは全く異なる、自由で自然発生的なサウンドを探求した進展作だ。その内容は、シングル「This Orient」や、ヤニスが“テクノロジーが支配する未来になっても、人間どうしのコンタクトはリアルなままであってほしいという、僕の願望”だと語るタイトル曲を筆頭に、スペーシーでイマジネーティブな音世界が詰まったものとなっている。

本作『トータル・ライフ・フォーエヴァー』のについて、フォールズのリーダー、ヤニスに話を聞いた。なお彼らは、6月15日に原宿のアストロホールで、8月1日にフジロックでパフォーマンスすることが決まっている。


ーーデビュー・アルバム『アンチドーツ(解毒剤)』のリリースから、約2年が経過しましたね。お元気でしたか?

「元気だったよ。’08年の12月までずっとツアーに出ていて、オックスフォードに戻ってからみんなで家を借りて、9ヶ月間くらい曲づくりに専念していたんだ。その後、スタジオに入ってレコーディングした以外は…散歩したり、歯を磨いたり、フツーの人間らしく暮らしていたよ」

ーーでは、ニュー・アルバム『トータル・ライフ・フォーエヴァー』について教えてください。まず、そのみんなで借りたという家、“House of Supreme Math-matics”は、どんな所なんですか?

「自然に囲まれた場所で、最高の環境にある、4階建てのタウンハウスなんだ。その地下を小さなスタジオに改造したのさ。って言っても、DIY的につくったんだけどね。僕らと、幼なじみの何人かがルームメイトで、そこでの生活は楽しかった」

ーーその家で、どのように曲づくりを行っていったんですか?

「今作の制作では、前作のように、誰がどの楽器をどうやって弾くか、といったルールや枠組みを設定したくなかったから、前作とはかなり違う方法で進めていったね。何のプランもなくて、流動的だった。特に最初の頃は、全員が部屋に集まって演奏するってシチュエーションもなかったよ。自由気ままな雰囲気を大事にしたかったんだ。だから、誰かが何かを弾き始めて、そこに他のメンバーが加わってって感じで、自然と曲ができ上がっていった。今作は、どの曲もすごく直感的で、プライベートなんだ。自分達の心と体、耳や眼で感じたこと、その一つ一つから生まれてきた作品だね」

ーーなるほど。レコーディングは、昨年末、スウェーデンのヨーテボリにあるスタジオで行ったそうですね。どうしてそのスタジオを選んだんですか?

「前回のNYに続き、今回も一度も行ったことのない場所でレコーディングしようって、決めていたんだ。そこは、スヴェンスカ・グラモフォンっていう、まるで巨大な実験室みたいなスタジオだったんだけど、ナイスだったね。心理的なつながりや思い出のない場所でレコーディングするのって、僕らに合っていると思う。クリアな気持ちで制作に望めるし、静養しているみたいな感じになるのも好きなんだ。でも、もう一度ヨーテボリに行きたいかって聞かれたら、答えはノーだね(笑)。そこは重要なところじゃないから」

ーー本作では、プロデューサーにルーク・スミス(元CLOR)を起用していますが、彼との作業はいかがでしたか?

「今作が、方向性や視点にブレのない作品になったのは、ルークのおかげだよ。余計なレイヤーを重ねることは避けて、サウンドにスペースを入れるようプッシュしてくれた。僕らっていつもカオスになりがちだから、彼との仕事は興味深い経験になったよ。ルークは、すごく頼れる存在だったね」

ーーその結果、本作のサウンドは、前作よりもディープで、時にスピリチュアルなムードを感じさせるものへと進化しましたね。

「その通り。今作では、もっとシネマティックな奥行きを表現したかったんだ。前作は、同じことを何度も繰り返す傾向にあったけど、このアルバムは、全体としてちゃんと一本の線状になっていると思う」

ーーリリック面に関して、本作で特に追求してみたかったことは何でしたか?

「もっとエモーショナルな表現を意識したよ。前作の作詞は、もっとイメージ中心というか、ビジュアル的で、少し遊び心のあるものだった。でも今作では、もっと正統的な作詞のプロセスに興味がわいてきたんだ。最近は、これまで全然聴かなかった、古いポップスにも気持ちが傾くようになっててね。それで、もっとユニバーサルで、でもパーソナルな感情がある歌詞を書きたくなったんだと思う」

ーー本作のアルバム・タイトル、“トータル・ライフ・フォーエヴァー”は、とても意味深長な言葉ですね。この言葉の意味合いについて教えてください。

「基本的には、この言葉の壮大さが好きなんだ。すごく力強いよね。でも、意味はいくつもあるよ。アルバム全体の様々なフィーリングをまとめてくれる言葉でもあるし、まるで聖歌みたいにダークな部分のある言葉でもあるし、もしくは広告コピーのような命令にも読める。要するに、そういった二重のフィーリングを表現したかったんだ。受け入れられているのに、脅かされている感覚っていうのかな。広告とか、政治や宗教のスローガンって、表向きはフレンドリーでも、裏に支配的なメッセージが隠されているんだよ」

ーーシングル曲の「This Orient」と「Spanish Sahara」は、それぞれどのようにして誕生した曲ですか?

「「This Orient」は、サウンド・コラージュみたいな曲なんだ。スタジオの中で、組み立てながらレコーディングしていった。そういった意味では、自然にでき上がっていった他の曲とは全然違うものだ。「Spanish Sahara」の方は、アルバムの中でも一番楽に書けた曲だった。唯一難しかったのは、最初に数分間ドラムを外すことだったよ。特別な個性と空気感を持った曲になったから、すごく満足している」

ーーでは、最後の質問です。今年は、6月に一度東京公演をした後、フジロックで再来日しますね。どんなライブ・パフォーマンスを予定していますか?

「エネルギッシュで、エキサイティングかつラウドなライブになるだろうね。日本では毎回素晴らしいライブを経験してきたから、今からすごく楽しみだよ。ライブは、アルバムとは全く別物になるよ。アルバムを再現することはしないからね。僕らの曲を聴いたことのないオーディエンスも来てくれると嬉しいな。そういうオーディエンスを前にすると、自然発生的で自由なサウンドが湧き出てくるんだ」

アルバム情報

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FOALS
Total Life Forever
(JPN) WARNER
WPCR-13845

01. Blue Blood
02. Miami
03. Total Life Forever
04. Black Gold
05. Spanish Sahara
06. This Orient
07. Fugue
08. After Glow
09. Alabaster
10. 2 Trees
11. What Remains
12. Spanish Sahara (Mount Kimbie Remix) * BONUS TRACK
13. Spanish Sahara (Deadboy Remix) * BONUS TRACK
14. This Orient (Starkey Remix) * BONUS TRACK
15. This Orient (Video) + CD EXTRA

【Official Website】
http://wmg.jp/artist/foals/
http://www.foals.co.uk/


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