アレックス・カプラノス(Vo/G)、ニック・マッカーシー(G/Vo)、ボブ・ハーディ(B)、ポール・トムソン(Dr)の四名からなる、英グラスゴーで結成されたインディー・バンド、Franz Ferdinand(フランツ・フェルディナンド)。デビュー・アルバム『Franz Ferdinand』(2004:全英チャート3位)で、’00年代音楽シーンの最前線に躍り出て以来、『You Could Have It So Much Better』(2005:全英1位/オリコン洋楽1位)、『Tonight』(2009:全英2位/オリコン洋楽1位)と、ヒット作を送り出してきた人気バンドです。「Take Me Out」(’04)や「Do You Want To」(’05)は、時代を象徴する曲といっても間違いではないでしょう。
そんなFranz Ferdinandが、約4年ぶりとなる通算4作目のアルバム『Right Thoughts, Right Words, Right Action』(ライト・ソーツ、ライト・ワーズ、ライト・アクション)をリリースしました。時間をかけつつもノリを重視した制作を心がけ、アレキシス・テイラー&ジョー・ゴダード(Hot Chip)、ビヨーン・イットリング(Peter Bjorn & John)、トッド・テリエ(Todd Terje)らとのセッション等も経て完成させた本作。その内容は、ポップで踊れてウィットにも富んだ、彼ら本来のバンド・サウンドが見事に表現されたものとなっています。
ここでは、本作『Right Thoughts, Right Words, Right Action』の内容について、バンドの中心メンバーであるボブ・ハーディに話を聞きました。なお、本作のデラックス・エディションは、ボーナス・ディスクの“Right Notes, Right Words, Wrong Order (Live at Konk Studios, London)”が付いた2CDとなっています。また、Franz Ferdinandは11月に来日公演も決定しています。詳細は以下をご覧ください。
Franz Ferdinand『Right Thoughts, Right Words, Right Action』インタビュー
__ニュー・アルバム『Right Thoughts, Right Words, Right Action』の完成とリリース、おめでとうございます。前作『Tonight』の時もそうでしたが、今作も約4年ぶりのリリースとなりますね。
「同じ4年間でも、今回の4年間は『Tonight』の時とかなり質が違ったね。『Tonight』を制作する前は、ツアーを2年近くずっと続けていたんだけど、その後2ヶ月くらい休みをとって、まだ新曲ができていない状態で、すぐスタジオ入りしたんだ。だから『Tonight』は、作曲とレコーディングをほぼ同時進行で進めていった作品だった」
__はい。
「でも、今回は十分な休みをとろうということで、2010年の春から2011年の春まで、1年間オフにしたんだよ。で、その後曲を書き始めたんだけど、『Tonight』の時とは違って、曲を少なくともギターやピアノで弾けるところまで完成させてから、レコーディング・スタジオに入ったんだ。だから、サウンドを曲に後乗せしていくような方法だったね。『Tonight』の時は、音をヒントに曲をつくっていくような方法だったけど。だから曲づくりの方法も、前作とはかなり違うよ」
__前作の制作と異なる点として、今回は各地でレコーディング・セッションを行いながら作業を進めいったそうですね。具体的にはどういうプロセスでアルバムを完成させたんですか?
「曲づくりは2011年からスタートしたんだけど、メンバー全員が集まったのは、2012年になってからだったんだ。で、2011年に曲づくりを始めた段階の時は、例えばアレックスとニックはロンドンにあるニックのスタジオで作業をしたり、僕とアレックスでスコットランドのスタジオに入って歌詞の相談をしたりと、断片的に別々の作業をしていたよ」
__なるほど。
「2012年に初めてメンバー全員が集まった時は、ホット・チップ(Hot Chip)のアレキシス・テイラーとジョー・ゴダードと一緒に、ロンドンのスタジオで作業をしたね。その後は、いったんストックホルムでセッションをしたりもした。そんな感じで、今回はちょっとずつちょっとずつ積み上げていったレコーディング作業だったよ」
__今作では、いま名前が挙がったアレキシス・テイラーとジョー・ゴダードの他に、ピーター・ビヨーン&ジョン(Peter Bjorn & John)のビヨーン・イットリングや、トッド・テリエ(Todd Terje)らとも作業をしていますね。それぞれどういう経緯で参加してもらうことになったんですか?
「アレキシスとジョーはDominoでレーベル・メイトだし、昔からの知り合いだからね。実は、僕らがDominoと契約した時、アレキシスはまだDominoのスタッフとして働いていたんだよ(笑)。そんなこともあって、今回はDominoのボス、ローレンスのアイディアで彼らに手伝ってもらうことになった。パプでそんな話が持ち上がって、そのままニックのスタジオになだれ込んだんだよね(笑)。でもホット・チップは、ちょうどアルバム・リリースとツアーを始める時期だったから時間がなくて、2曲しか一緒にできなかった」
__どの曲ですか?
「アルバムの最初の曲と最後の曲、「Right Action」と「Goodbye Lovers & Friends」だね。でも、アレキシスとジョーと作業をしたことで、いろんな人と組んで音をつくっていくという、このアルバムの方向性、フレイヴァーが決まったと思う。というわけで、次はどうしようかといろいろアタリを付けていく中で、ビヨーンの名前が出てきたんだ。僕らは、彼の手がけたリッキ・リー(Lykke Li)のアルバムのサウンドが好きだったし、ピーター・ビヨーン&ジョンとは共演したこともあったからね。で、ニューカッスルでアレックスとビヨーンが会って、すぐに仲良くなって、参加してもらうことが決まったよ。彼とのセッションは、ストックホルムにある彼の素晴らしいスタジオで行ったよ」
__トッド・テリエに関しては、どのように?
「トッド・テリエに参加してもらうのも、アレックスが話をつけたんだったと思う。僕らは彼のファンだったから、彼がDJギグでロンドンに来た時、一緒にディナーをして、スタジオに来てもらって、デモ曲を聴いてもらったんだ。そうしたら、彼はミュージシャンとしても優れているから、シンセをいじりなからいろんな音を乗せていってね。で、彼は、それを地元オスロにあるシタジオに一度持ち帰って、仕上げてくれたんだ。「Love Illumination」と「Stand On The Horizon」が、その曲だよ」
__今作には、他にどんなアーティスト、ミュージシャンが参加しているんですか?
「ヴェロニカ・フォールズ(Veronica Falls)のロクサンヌ・クリフォードが、「Fresh Strawberries」のハーモニーで参加しているね。「Stand On The Horizon」のストリングス・セクションには、オーウェン・パレット(Owen Pallett)が参加している。彼はレーベル・メイトだからね。あと「Goodbye Lovers & Friends」には、アレキシス・テイラーがコーラスとしても参加しているよ。いかにも彼らしい高音の声が入っているから、すぐに分かると思うよ。まぁ、そんな感じかな。知り合いが中心さ」
__先ほど、アルバムの方向性として、“いろんな人と組んで音をつくっていく”という話が出ましたが、今作の曲づくりやサウンドメイキングで特に重視したことは何だったのでしょうか?
「それは、例えば6ヶ月間同じ場所で、同じプロデューサーと一緒にアルバムを仕上げていくよりも、3日間しかないけど、やれるとこまでやって、それで面白いものができればそれはそれでいいんじゃないか、という考え方やノリを重視したってことだと思う」
__なるほど。
「基本的には、3週間をひと区切りにしたイメージで作業していったんだけどね。1曲だけの時もあるし、数曲の時もあるんだけど、最初の1週間で曲を書いて、次の1週間でバンドとしてリハーサルやアレンジをして、最後の1週間でスタジオに入ってレコーディングをする。だから今作は、EPシリーズを何回かに分けて制作していったような感覚に近いんだ。で、最終的には20曲くらいでき上がって、その中からアルバムとしてまとめられる良い曲を10曲選んだ、というわけだ」
__シングル曲の「Right Action」は、どのようにして誕生した曲ですか?
「ロンドンのフリーマーケットで、アレックスが絵はがきを見ていた時、橋の写真がプリントされているものがあって、そこにこの曲の歌詞の冒頭の部分、“Come home practically all is nearly forgiven…”という言葉が書いてあってね。で、ひらめいたんだ。この言葉の持つ不確実なフィーリングを表現するのに、メジャーとマイナーの音程を行ったり来たりするような曲をつけて、完成させた曲だよ」
__「Love Illumination」についても、どのようにして誕生した曲なのかご紹介ください。
「この曲のリフは、もともと別の曲で使っていたものだったんだ。そっちの曲はうまくいかず、歌詞的にも焦点を絞れず、そのままになってたんだよね。でも、そうこうするうちに、僕とアレックスで話をしていたらカルトの話題になって、結局カルトっていうものは、人の愛されたいという気持ちや帰属意識につけ込んで、ここにくれば居場所があり愛される…みたいに持っていくんだよね、みたいな話をしたんだ。で、これをテーマにした歌詞を書きたいね、ということになって、その別の曲で使っていたリフを持ってきてつくったのが、この曲さ」
__ふり返ってみて、今作の制作プロセスは、バンドにどのような変化や良い効果をもたらしたと思いますか?
「ずっとスタジオに籠って作業をしていると、木を見て森を見ず、もしくはその正反対のような状況になりかねない。でも今回の場合は、とりあえず完成した2曲、3曲をスタジオから持ち出して、普段の生活の中で聴いたりできた。そうすると、次はこういうのをやってみたいとか、新たなアイディアも生まれてくるんだ。今回は、そういった余裕を持てたことが良かったよ。作曲とレコーディングを分けたことも、とても良かったと思うし」
__『Tonight』を制作した時の反省点がいかされている感じなんでしょうかね。
「『Tonight』の時は、ゼロからレコーディングをスタートして、出てきたリフ、グルーヴ、音からなんとなく曲を組み立てていって、その中からボーカルのメロディーを探しあてて、それに合う歌詞を考えて…という作業だったからね。でも、今回の作業は、それとは全く逆の順序だった。その結果、僕としては各曲の輪郭がとてもはっきりしたんじゃないかと思っているよ」
__そうですね。では、今作のアルバム・タイトル、“Right Thoughts, Right Words, Right Action”は、この一連の制作プロセスを指した言葉のようにもとれますね?
「ハハハ。確かにそうかもね(笑)。実際には「Right Action」の歌詞から引用したアルバム・タイトルなんだけど、この言葉にあるポジティブな感覚は、今作の制作過程に通じていると思うよ。これから始まるツアーも、この言葉のようであってほしいね」
photo: Andy Knowles
interview: iLOUD
【リリース情報】
Franz Ferdinand
Right Thoughts, Right Words, Right Action
(JPN) DOMINO/HOSTESS / HSE-10133 (WIGCD255XJ) [デラックス・エディション]
(JPN) DOMINO/HOSTESS / HSE-10136 (WIGCD255J) [通常盤]
8月21日 日本先行リリース
※日本盤のみボーナストラック2曲収録/歌詞対訳&ライナーノーツ付
※デラックス・エディション:初回生産限定盤/ボーナスCD付2枚組
※iTunesデラックス・エディション:高音質Mastered For iTunes仕様/歌詞入りPDFブックレット付
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tracklisting
01. Right Action
02. Evil Eye
03. Love Illumination
04. Stand On The Horizon
05. Fresh Strawberries
06. Bullet
07. Treason! Animals.
08. The Universe Expanded
09. Brief Encounters
10. Goodbye Lovers and Friends
11~13. 無音トラック
14. Evil Eye (Todd Terje extended mix) [ボーナストラック]
15. Stand On The Horizon (Todd Terje extended mix) [ボーナストラック]
※トラック11~13は、本編とボーナストラックを区切る無音トラックとなっています。
デラックス・エディション DISC 2
“Right Notes, Right Words, Wrong Order” (Live at Konk Studios, London)
tracklisting
01. Bullet
02. No You Girls
03. Evil Eye
04. Fresh Strawberries
05. Right Action
06. Goodbye Lovers and Friends
07. Can’t Stop Feeling
08. Treason! Animals.
09. Love & Destroy
10. Do You Want To
11. Ulysses
12. Love Illumination
13. Stand On The Horizon
【VIDEO】
【来日公演情報】
Franz Ferdinand
Japan Tour 2013
11月19日(火)東京 ZEPP TOKYO
11月20日(水)東京 ZEPP TOKYO
11月22日(金)大阪 ZEPP NAMBA
http://www.smash-jpn.com/live/?id=1991
【オフィシャルサイト】
http://rightthoughtsrightwordsrightaction.jp/
http://www.franzferdinand.com/