YUKI、中島美嘉ら様々なアーティストへの楽曲提供やプロデュースを手がけるクリエイター集団、アゲハスプリングス代表の玉井健二と、音楽とゲームの融合を続けてきたゲーム・クリエイターの水口哲也によるハイブリッドプロジェクト、元気ロケッツ。’06年に、ネット上で「Heavenly Star」のミュージック・ビデオを全世界に向けて公開し、そのフューチャリスティックな音と映像で、一躍注目を浴びた存在です。
そんな元気ロケッツが、’08年以来となる新作、『“make.believe”3D Music Clips e.p.』をリリースしました。本作は、なんと、今話題の3D技術を採用したフルCG映像と、5.1chの楽曲からなる、世界初のBlu-rayミュージック・ビデオ集となっています。収録されるのは、今年度第14回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門において、審査委員会推薦作品である新曲の「make.believe」と、既存曲の新ミックスとなる「Heavenly Star (3-Dimensionaly Mix)」「Star Surfer (3-Dimensionaly Mix)」の全3曲。全編を通して、元気ロケッツならではの、希望に満ちたポジティブでダンサブルな楽曲と、壮大な世界観が、立体的なスケールで目と耳に飛び込んでくる会心作です。
最新テクノロジーを駆使した音と映像で、元気ロケッツのネクスト・ステージを表現した『“make.believe”3D Music Clips e.p.』。その誕生背景について、二人に話を聞きました。
元気ロケッツ
3D映像と5.1chのサウンドで繰り広げる、新次元の音楽体験!
__まずは、3D映像に着目したきっかけを教えてください。
水口「元気ロケッツは、常に音と映像の一体感を考えて、ライブをやってきたんですが、“シナスタジア(=共感覚)”というものを突き詰めると、立体映像と音楽の組み合わせが、重要なテーマになってくるんです。だから、現在のような3Dの流れが来たら、誰よりも先にやりたいと思っていました。それと、’10年の5月に六本木ヒルズで行ったソニーのイベントで、「make.believe」を発表する機会があったんです。そのとき、280インチの巨大LEDで、映像を上映できたこともあり、僕らの中で3Dが盛り上がっていったんですよね」
__元気ロケッツのコンセプトを踏まえると、3Dを取り入れるのは自然な流れだったんですね。新曲の「make.believe」は、どんな経緯で生まれたんですか?
玉井「“make.believe”というブランド・メッセージを掲げた、ソニーが発信するプロジェクトとのコラボが発端で、その言葉から得たインスピレーションを、そのまま音像化しました。今回は映像が3Dということで、必然的にそれに見合う音ということで、5.1chで楽曲を構成しました。というのも、2Dの場合は、映像を画面の外側から見ている感覚になるけど、3Dだと、その映像の中にいる感覚になるんです」
__なるほど。音で立体感を表現するために、どんな手法を用いましたか?
玉井「聴き手の周囲をぐるぐる回る音や、星が通り過ぎる音などを入れています。Lumiが耳元で歌っているように聞こえる部分もあったり、2chのステレオではわかりづらい部分が、本作では鮮明に聴こえると思います。あと、音で人を気持ちよくさせたり、ビックリさせたりする方法があるんだけど、そういうテクニックを超越して、もっと人の心をゆさぶる表現があるんです。今回は、そうした部分を大事にしました」
水口「映像制作では、撮影からCG制作を含め、初めての経験ばかりだったので、手探りの状態で作業していきました。でも、“make.believe”という言葉が持つ、“あきらめなければ、願いは現実となる”というポジティブなメッセージを、元気ロケッツの世界観とどう合わせるかを考えるのは、とても楽しい作業でしたね」
__本作の3D映像は、背景に広い奥行きがあり、映像を手でつかめるんじゃないかと思うほど、立体的かつ鮮明で驚きました。「make.believe」のビデオでは、宇宙空間や地球、雄大な自然といった場面を背景に、Lumiさんが歌っていますが、どんな世界観をイメージしたのでしょう?
水口「元気ロケッツは、“宇宙視点”を意識したプロジェクトなんです。「Heavenly Star」の歌詞にも出てくるんだけど、“No border between us=僕らの間に国境はない”という感覚が、僕らの根底にあるので、「make.believe」では、そういった21世紀的なスケール感を、意識の中で旅をするように映像にしていきました」
__本作には、「Heavenly Star」の映像も、新たに3Dバージョンで収められていますが、オリジナルから、どんな部分を変化させましたか?
水口「「Heavenly Star」の映像は、すでに完成された作品なので、それを3Dに置き換えたら、どんなことができるか?というのが一番のテーマでした。オリジナルの映像を部分的に使ったり、イラストだった部分をCGにしてみたり、実験的なものになりましたね」
__3Dと5.1chというフォーマットは、元気ロケッツのイマジネイティブな世界観と、見事に合致していると感じました。最後に、元気ロケッツとしての、今後の展望を教えてください。
水口「1月にラスベガスで行われる<2011 International CES>(国際家電ショー)に出演します。そこでは、25mプールほどの大きさがある、700インチのスクリーンを使ってライブを行うので、すごく楽しみですね。あと、元気ロケッツでやりたいのは、Lumiという存在や、彼女の視点、意識を通じて、僕らの新しい表現を、世界に向けて“No boarder between us”という感覚のもと、発信し続けていくことなんです。地球上にいる60億人のうち、少しでも多くの人が共感できることをやっていきたいですね」
玉井「そうですね。昔は、音楽と映像、映画などが、それぞれ分けられていたけど、僕らはそうした垣根を取っ払いたいんです。最終的には、CDやDVDという限定された形ではなく、元気ロケッツというコンテンツになりたいと思っています」
interview & text HIROKO TORIMURA
【3D映像とは?】
3D映像とは、人が両目で物を見る仕組みを利用し、両目に対して縦横の情報に加え、映像の奥行きや、立体感を与えるもの。右目用と左目用で、別々に撮影された映像の合成を、3D専用メガネをかけて見ると、視聴者の脳で左右二組の映像が重なり、立体的な映像として認識される仕組みです。たとえば『“make.believe”3D Music Clips e.p.』では、モニター画面の中に広い奥行きを感じたり、Lumiが目の前に飛び出してきたりする、これまでにない映像体験を味わうことができます。(写真: ’10年5月に六本木ヒルズで行われたソニーのイベント、<dot park>で披露された「make.believe」の映像)
www.sony.co.jp/united/3D/
【作品情報】
元気ロケッツ
“make.believe”3D Music Clips e.p.
(JPN) SONY / SRXL-17
tracklist
1. make.believe
2. Star Surfer (3-Dimensionaly Mix)
3. Heavenly Star (3-Dimensionaly Mix)
【LINK】
元気ロケッツ Official Site
agehasprings web site
元気ロケッツ twitter