昨年、デビュー・アルバム『ターニング・ダウン・ウォーター・フォー・エアー』をリリースし、インディー・ポップ・シーンから一躍注目を集める存在となったジェームズ・ユール。彼が、セカンド・アルバム『ムーブメント・イン・ア・ストーム』をリリースしました。フォーキーなサウンドとダンサブルなエレクトロニカを融合させた、彼ならではの音楽性が楽しめる注目作です。
というわけで、最新作の内容について、ジェームズ・ユールさんに話を聞いてみました。
「このアルバムには、特にテーマになったものはないんだ。もしあるとしたら、僕の人生の中にあった、一定の時間を書き記す、ってことかな。前作をリリースしてから、僕はずっとツアーに出ていたから、曲を書いてレコーディングしたくてたまらなかったんだ、本当に。だからこのアルバムは、そんな僕が抱いていたアイディアのコレクション、って感じだね」
では、そのアイディアとは、具体的にはどのようなものだったのだろうか?
「当初は、ちょっとハードなダンス・トラックをいくつか書いて、それをアコースティックな楽曲と一緒に並べてみたい、って思ってたんだ。でも、レコーディングが進むにつれて、すごく良いと思えた楽曲は、全て僕がギターで書いたものだってことに気づいてね。こうして、ハードなトラックの多くは、ボツになってしまった」
さらに彼は、こんな言葉も付け足した。
「僕のプロデュース/ミックスの技術が向上したことも、今作のサウンドが変化した理由の一つになっていると思う。自分が望んでいるサウンドを選び出したり、つくり出すことには、相当な時間をかけたんだ」
そんな本作の内容は、彼らしい端正なアコースティック~エレクトロニックな音楽性はそのままに、リード曲「Crying For Hollywood」のようなダンサブルな曲はより躍動的に、「First In Line」のようなアコースティックな曲はよりソフトにと、前作以上にメリハリのついたもの。今作の中で、彼が特に重視している楽曲はどれになるのだろう?
「「Sing Me A Song」か、「Ray Gun」かな。この2曲は、自分が書いてきた曲の中でも、100%に近いくらい満足できるものになったよ。アルバム全体の中で僕が特に気に入っているのは、「Sing Me A Song」で、ゲスト・ボーカリストのサマンサが歌っているところだね。このパートは、アルバム一枚書けるくらいのアイディアを、僕にもたらしてくれたんだ」
今後は、他バンドのプロデュースや、様々なサイド・プロジェクトも手がけていきたいというジェームズ・ユール。本作『ムーブメント・イン・ア・ストーム』は、非凡なソングライティング・センスのみならず、そんな目標を掲げる彼の、キラリと光るプロデュース・センスも楽しめる充実作だ。
interview & text FUMINORI TANIUE
translation NANAMI NAKATANI