ディープ・ハウスの先駆者として知られるビッグ・ネーム、ケリ・チャンドラーが、’08年2月にニュー・アルバム『Computer Games』を発表しました。アルバム名の通り、コンピューターとゲームを題材にしたエレクトロニックなサウンドを披露し、往年のケリ・チャンドラー・ファンをビックリさせたのは、記憶に新しいところですね。
LOUDでは、そんな新作の制作風景を探るべく、ケリ本人にインタビューを行いました。その際、機材&ゲーム・ヲタクの彼らしいディ〜プなお話をたくさん聞くことができたのですが、残念ながら本誌(LOUD159号)では全てを紹介できず…。
というワケで、iLOUDではエピソード2を公開しちゃいます。本誌インタビューと併せて、ケリのマニアっぷりをお楽しみください。
→ケリ・チャンドラー・インタビューを読む
——このアルバムは、どんなシステムのスタジオで制作したんですか?
「俺は二つスタジオを持っているんだけど、一つはデジタル対応の7.1chサラウンドで、ホームシアター仕様になっている。あのスタジオの音は、俺が一番好きな音のバランスだね。20キロヘルツから7万キロヘルツまで再生可能だから、どんな音も聴き逃さないのさ。何年もかけてつくり上げたスタジオなんだけど、新しいドライバの方が良いサウンドだと思ったら、常に交換して更新しているよ」
——もう一つのスタジオは?
「もう一つは、その下のフロアにあるんだけど、どちらかと言うと“アナログ部屋”になっている。モジュールなど、自分でつくったものがたくさん置いてあるんだ。こっちは壁一面にスピーカーがあって、クラブ・システムができ上がっているのさ。このスタジオにはミラーボールもあって、それを取り囲むようにキーボードがぐるっと多数置いてある。さらに、8フィートもあるミキシング・ボードの上半分はSSL、下半分はニーヴに改造して設置しているんだ」
——全てカスタム仕様なんですね。
「あぁ。あと、たくさんのモニターやターンテーブルのコレクション36台もある。ターンテーブルは全部分解しちゃってあるから、友達が来てDJしたいっていう時は、好きなものを引っぱり出してきてケースに乗せて使うんだ」
——スゴイ状況になっていますね。今回のアルバム制作では、どちらのスタジオを使ったんですか?
「両方のスタジオを使って、感触をつかみながら制作した。どっちのスタジオでも煮詰まってしまった時は、リビングに置いてあるピアノの前に座るんだ(笑)。リビングにはグランド・ピアノが一台置いてあるだけだから、自分を落ち着かせるためにピアノを弾くのさ。そうやって初心に返ると、それまで思いつかなかったアイディアが生まれることもあるからね。あとは、鯉を飼っている池がある裏庭を散歩して、何かひらめいたら急いでまたスタジオに行くっていう感じだったよ」
——気分をリフレッシュさせる方法は、意外と癒し系なんですね(笑)。ところで、DJプレイにおいても、あなたはオーディエンスの度肝を抜くようなシステムを持っているそうですね。
「’07年の11月にでプレイしたんだけど、その時はオープンリールのデッキ3台のみを使ってDJしたよ。3日間に渡るアニヴァーサリー・パーティーの中で俺は大トリだったから、メチャクチャなことをやって、みんなを驚かせようと思ったのさ。あの日は、そりゃあ大変な盛り上がりだったね。たしか、Youtubeでその時の映像が見られるはずだよ」
——オープンリールのDJプレイは、かなりテクニックが必要なんじゃないですか?
「そうだな。きちんとプレイを成功させるには、それなりの技術が必要だ。昔ながらのやり方だから、古いテープを引っ張ってきてカミソリの刃で切るようなものだしね」
——あなたの、機材に対する探究心には本当に脱帽です。
「他の人がもう使っていないような機材を引っぱり出して、誰もやっていないことをやるのが面白いのさ。だから、ターンテーブルもこんなに集めているってワケ。どこのクラブへ行っても“ここのシステムはよくわからない”って状態にならず、自分のベストが出し切れるように、可能な限り全ての機材を入手して、その使い方を習得したんだ。一度手を付けたものはとことん極めたい。生まれつき、そういう性格なのさ」
interview & text EMIKO URUSHIBATA
translation YURIKO BANNO
インタビュー本編は、LOUD159号で。
ケリ・チャンドラー『Computer Games』をHMVでチェック
Computer Games Album Release Party 2008.2.8 @ YELLOW, Tokyo