London Elektricity『YIKES!』インタビュー


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’96年にEP『Sister Stalking』でデビューを果たすと、クラブ・ジャズとドラムンベースを融合させたそのハイ・センスな音楽性で一躍脚光を浴びたロンドン・エレクトリシティ。以降『プル・ザ・プラグ』(’98)、『ビリオン・ダラー・グレイヴィー』(’03)、『パワー・バラッズ』(’05)、『シンコペイテッド・シティ』(’09)と、コンスタントに作品を発表し続けている人気アクトです。ちなみに、プロジェクトを操縦するトニー・コールマン(蛇足ですが、ユニット時代のパートナー、クリス・ゴスは、現在ロンドン・エレクトリシティらが所属するレーベル、HOSPITALの運営に専念してます)は、もともと’90年代初頭に活躍したアシッド・ジャズ〜ダウンテンポ・バンド、イジットのメンバーだったことでも有名ですね。

そんなロンドン・エレクトリシティが、活動15周年の節目を飾る、待望の最新アルバム『ヤイクス!』を4/27にリリースします。というわけで、ここでは本作の内容について語った、トニーさんのインタビューをご紹介しましょう。


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LONDON ELEKTRICITY

ディープなメロディーとソウルフルなグルーヴを追求し続ける、
実力派ジャジー・ドラムンベース・アーティスト

__ロンドン・エレクトリシティの最新作『ヤイクス!』は、『シンコペイテッド・シティ』(’09)以来のオリジナル・アルバムとなりますね。アルバム制作の準備、レコーディングは、いつ頃スタートさせたのでしょうか?

「制作の準備を始めたのは’09年からだね。アルバムを制作する際、僕はドラム・ブレイクスからベース、キーボード、そして楽曲全体の雰囲気に至るまで、新しい音をゼロからつくって、真新しい“パレット”(セッティング)にしたいんだ。その方が想像を掻きたてるし、確実に独自のサウンドができるからね。今回は、SPL DrumXchanger(ドラムサウンドの差し替えが可能なプラグイン・ソフト)を多用したよ。このソフトウェアは、全く新しいブレイクスを構築するのに最適で、すごく気に入っている。 で、本格的な制作に取りかかったのは’10年の初頭で、昨夏までにボーカルのエルサ(・エスメラルダ)と週イチのペースで曲づくりをした。「Meteorites」だけは後半になってつくったけど」

__今作を手がけるにあたって、何かアルバム・コンセプトやテーマといったものはありましたか?

「コンセプトは全く考えない主義だけど、今作では、美しいコード進行や、ディープだけどキャッチーなリフから、メランコリックな雰囲気を出すことができて嬉しかった。楽器に関しては、子供時代に初めて習ったピアノとギターを多用したよ。歌詞面でのコンセプトは…エルサに直接聞いてみて(笑)。「Fault Lines」以外は、全曲彼女が歌詞を書いたから」

__今作のメイン・ボーカリストをエルサ・エスメラルダ(Elsa Esmeralda/Elsa Hedberg)にお願いした理由は、何でしたか?

「前作に参加してもらった時、エルサの声質がすごく気に入って、波長も合ったから、もっと仕事をしたいと思ったんだ。彼女は、実に素晴らしいソングライターで、“ありがちなサウンドは避けたい”という考えも共通していたから、曲づくりも楽しかったね。今作ではボーカル部分を全くフレッシュな方向へと展開したかったから、彼女にはぜひ参加してもらいたかった」

__今作のタイトルを『ヤイクス!』(=ヤバいっ!)にした理由を教えてください。また、タイトル曲「Yikes!」は、どのようにして誕生した楽曲ですか?

「“ヤイクス”って言葉は、ガキの頃、ビビったり、怖い思いをした時によく使ってたんだけど、オールドスクールな感じがして、大好きなんだ。あとで指摘されるまで、まさか薬のことを指す言葉とは思わなかったけど(笑)。で、タイトル曲の「Yikes!」は、ヘビーメタル・サウンドを融合させた、ボッサ風のギター・リフから思いついたものさ。ブレイク・パートを足したらすごくいい感じになったから、そこを中心にピアノ、シンセ、ベース、ボーカルへと広げたよ。ビルドアップした音に、ボーカル・ディレイで解放感を出して、それを変化させながらメロディーができ上がった」

__本作の内容は、あなたのトレードマークで、ファスト・ソウル/リキッド・ファンクとも呼ばれる、ソウルやジャズのテイストを取り入れた、華やかでメロディアスなドラムンベース・サウンドを、新たなスタイルで表現したものとなっていますね。今作の曲づくり、音づくりで、特に意識したことは何でしたか?

「ディープで、内容は濃いけど音に空間があって、ポップだけど同時にアンダーグラウンド…というような、自分が大好きな音づくりを忠実に進めていったね。「Fault Lines」や「Round The World In A Day」といった楽曲では、新たな音楽的方向性を切り開けた。とにかく、曲中で同じ音をリピートしていくことは避けたよ。前半のサウンドが後半にまた登場するようなダンス・ナンバーはつまんないし、飽きちゃうから。楽曲には、常にストーリー性と発展性が欲しいんだ」

__今作の中で、あなたが特に重要視している楽曲は何ですか?

「まずは「Meteorites」かな。作曲期間の後半に、ペルセウス彗星が地球に接近した日があったんだけど、その夜は、家族と一緒に流星群を見に行ったんだ。で、子供達を寝かせた後、自宅スタジオでバック・トラックを制作して、それを翌日エルサに送った。当初、彼女は「Meteor Showers」(流星/隕石のシャワー)ってタイトルにしていたけど、最終的には「Meteorites」になったね」

__ロマンチックですね。

「あと、「The Plan that Cannot Fail」も重要な曲だ。これは、あっという間に、自然とでき上がって、どうやって書いたか覚えていないほどなんだ。ちょうどその日は、一日中空いていたから、曲を書いた後にすぐレコーディングしたよ。タイトルは、イギリスの漫画キャラクター、ラスタマウスが登場する本の一文からとったんだ」

__今作の日本盤には、日本のエレクトロ・ポップ・アーティスト、AMWEをフィーチャーした「ロンドンは夜8時 (LON8PM⇄TYO4AM) feat. AMWE」と、そのリミックス「ロンドンは夜8時 (LON8PM⇄TYO4AM) feat. AMWE (TeddyLoid Remix)」も収録されていますが、楽曲を手がけた感想はいかがですか?

「AMWEをフィーチャーした楽曲制作は、楽しかったよ。この「ロンドンは夜8時 (LON8PM⇄TYO4AM)」は、「Meteorites」のメロディーに新しい歌詞をのせたものなんだ。(日本語の)歌詞内容って、僕にはちゃんと理解できない部分もあるけど、譜割りがちゃんと合っていれば、日本人ボーカリストとのスタジオ作業は大変じゃないね。実は今回、「Elektricity Will Keep Me Warm」って曲では、フランス語、スウェーデン語、スペイン語バージョンも制作したんだけどね(笑)」

__また、今作には、Vocaloidソフト(音声生成ソフト)の初音ミクをフィーチャーした、「ラウンド・ザ・ワールド feat. Miku Hatsune (millstone Vocaloid MIx)」も収録されていますね。こちらの楽曲を聴いた感想はいかがですか?

「ラウンド・ザ・ワールド」のVocaloidバージョンは最高だよ。オリジナル楽曲の本質を上手く捉えていると思う。この曲を聴くと、思わずニヤリと笑ってしまうよね」

__今作にあわせて、現在あなたのサイトで、“LONDONELEKTRICITV” というビデオのプロジェクトもやっていますが ( http://www.londonelektricity.com/tv/ )、これはどのような企画なんですか?

「これは、アルバム全楽曲のPV制作を目標にしている、意欲的な企画だよ。実現しないかもしれないけど…目標は高く掲げたいからさ! 現時点(4/9)で、6曲分のオリジナルPVがあるから、収録楽曲の半分は実現した(笑)。毎週金曜日にサイト内で新たなPVを発表していって、UKでは4/22に(日本では4/27に)アルバム・リリース日を迎えるんだ。毎週PVを発表すること自体が楽しいし、ファンもツイッターでつぶやきたくなるかな? なんて思ったりしているよ(笑)」

__ところで、ロンドン・エレクトリシティは、今年でデビュー結成15年を迎えましたね。ご自身の活動を振り返ってみて、どんな感想をお持ちですか? ’96年頃と比較すると、音楽シーン/クラブ・ミュージック・シーンもずいぶん変化しましたよね?

「ここまで長く続いたことが信じられないけど、もっと長いことやっていく気がするな。ロンドン・エレクトリシティは、生涯続くものだと思ってるから、今が何周年かみたいなことは、あまり重要じゃないんだ。もちろん、記念パーティーは開催したいけどね(笑)。ロンドン・エレクトリシティをここまで継続できて、今後さらに実現させたいこともあって、本当に嬉しいね」

__では、最後に、あなたの次なる活動目標を教えてください。

「今年は、DJ業にもっと力を入れる予定だし、エルサとライブもやる予定だよ。先日「Elektricity Will keep Me Warm 」をアンプラグドで演奏してみたんだけど ( https://www.youtube.com/watch?v=Opwt3J3z57c )、今後はアンプラグド・ライブも考えているよ。そして来年、また次回作に取りかかるんだ」

tanslation Keiko Yuyama
interview & text Fuminori Taniue


【アルバム情報】

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LONDON ELEKTRICITY
Yikes!
(JPN) U/M/A/A / XECD-1131
4/27発売
HMVで買う

tracklisting
01__Elektricity Will Keep Me Warm
02__Meteorites
03__Had A Little Fight
04__The Plan That Cannot Fail
05__Yikes!
06__Fault Lines
07__U Gotta B Crazy
08__Round The World In A Day
09__Love The Silence
10__Bells In My Head
11__Invisible Worlds
12__ラウンド・ザ・ワールド feat. 初音ミク (millstones “Vocaloid” Mix)
13__ロンドンは夜8時 (LON8PM⇄TYO4AM) feat. AMWE
14__ロンドンは夜8時 (LON8PM⇄TYO4AM) feat. AMWE (TeddyLoid Remix)

【オフィシャルサイト】
http://www.umaa.net/artist/london_elektricity/
http://www.londonelektricity.com/
http://www.hospitalrecords.com/artists/londonelektricity/

【VIDEO】

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