加藤ミリヤ『M BEST』インタビュー


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 ‘04年に「Never let go / 夜空」で、高校生のときにデビュー。以来、20枚以上にのぼるシングルと5枚のオリジナル・アルバムをリリースしてきた加藤ミリヤ。その人気は絶大で、’10年に発表された『HEAVEN』は、チャート1位を獲得しています。中学一年のときに試聴機で聴いたメアリー・J・ブライジに衝撃を受け、母に買ってもらったターンテーブルを触るようになったという早熟な女性アーティストは、今や日本を代表するシンガーソングライターの一人になったと言ってよいでしょう。

 彼女が、この7年間の活動を総括する初のフルベストアルバム『M BEST』を完成させました。デビュー曲から、最新シングルの「BELIEVE」まで、シングル曲ほぼすべてと、新録曲二曲などを含む33曲入り二枚組のコンピレーションは、まさに“ベスト”と呼ぶにふさわしい内容。‘11年に発表された、既発アルバムには未収録のシングル曲群が網羅されているのも、嬉しいところでしょう。

 ベスト盤・リリースという節目のタイミングに、加藤ミリヤは何を考え、どんな曲をつくっているのか? ここではそれを解明してみました。


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加藤ミリヤ
新境地で手に入れた、
価値ある初フルベストアルバム

ーーデビューから7年を経ての、初フルベスト盤リリースとなるわけですが、なぜ今ベストを出そうと思ったのでしょう?

「最近は誰でもベストを出せる世の中になってしまったけれど、私の中では、ベストというのは、キャリアを積んで、人々に認知された歌手にしか出せないものっていう認識があったんです。また、ベストアルバムは、もっと自分自身が前へ進んでいくために、いつか出したいものだとも思っていました。そんなことを、この1年考えていた中で、直感的に今がいいなと思ったんです。あとは、Disc-2に入れた「勇者たち」っていう曲を、今年初めに、自分が書けたっていうことが決定打になりました」

ーー「勇者たち」は、自分の中でフェーズが変わったと感じさせるような曲だったんですね。

「「勇者たち」は、自分的に、“こんないい曲ができてしまった”と結構久々に、もしかしたら初めて思えた曲だったんです。そこには、“自分の中にこういうメロディーラインがあったんだ”とか新たな発見もありました」

ーーその「勇者たち」以降、2011年に入ってからリリースした曲は、今までの曲と感じが違うと思うんですよ。なので、それらについて重点的に聞かせてください。まず「勇者たち」を最後の曲にしたのは、この曲が一番の自信作だからですか?

「そうですね。ほんとにそうです。この曲は、ずっと世の中に残っていてほしいと、自分でも思える曲なんです。自分の言うべきこととかが、すごく自然に出てきました」

ーーこの曲では、一人称に”僕”が使われていますし、歌詞の題材も今までのものとは変っていますよね。これまでとは違った層にアピールすることを意識したのでしょうか?

「加藤ミリヤっていうと、“10代の子とか若い子が聴く歌手でしょ”みたいなイメージがあるのかもしれませんし、そうなっていることは自然なことだと思うんですけど、自分の中では、特に21、22歳くらいになった時から、聴き手を限定されたり、何か決めつけられるっていうことに、違和感を感じるようになっていたんです。自分よりも年代が上の方とかにも聴いてもらえる音楽を書ける自分が、ほんとはいるんじゃないかとか、そういうことを思うようにはなっていってます」

ーーミリヤさんと言うと、そのデビュー・タイミングや、デザイナーとしての活動もあって、“女子高生のカリスマ”とか“ファッション・リーダー”的な捉え方をされることが多いと思いますが、実際は作詞作曲をするシンガー・ソングライターがメインの活動じゃないですか。そこに、自分の固定されたイメージとのギャップを感じることはありませんか?

「感じることも多いです。私が歌詞を書いているっていうのは、わりと人に知られていることだと思うんですけど、曲まで書いているって、はたしてどれくらいの人が知ってるのかなって考えたこともあります。ファッションは私にとって重要な要素のひとつですが、良くも悪くもビジュアル・イメージが強いから、そこで偏った違ったイメージを持ってしまうのかなと思います」

ーーもっと音楽家として、アーティスト的な側面をちゃんと打ち出していきたいという意識はありますか?

「ありますね」

ーー「勇者たち」の後にリリースした「BABY!BABY!BABY!」では「リンダリンダ」をサンプリングしていますが、このアイディアはどこから生まれてきたのでしょう?

「私は、ヒップホップ、R&Bが好きだから、サンプリングってすごく当たり前に自分の中にあるんです。特に日本の曲とかを自然にサンプリングする手法が、もうちょっと人に理解されるまで、これからもやりたいなって思ってるんですよ。それでミーティングをしてた時に、「リンダリンダ」がドラムンベースになってるのが、頭に浮かんできたんです。それで、ダメもとでデモをつくって使用申請を出してみたら、OKが出たんです。私的には、そこでOKが出たってことが救いですね。甲本さんがデモを聴いて認めてくれたっていうことに意味があるから、作品が世に流れていった時の反応がどんなものでも、受け入れられる覚悟はあります」

ーー邦楽の有名な曲を使うと、その曲やアーティストの熱狂的なファンの方がヘンなことを言ってきたりすることもあると思うんですけど、そういうところを気にせずに、日本人の曲でもサンプリングして、R&Bやダンスミュージックの中にJ-POP的に取り入れたっていう点では、ミリヤさんは革新者だと思いますよ。アルバムには新曲も二曲収録されていますが、そのひとつ、「RAINBOW」は、90’s R&Bみたいに仕上がりましたね。

「そうですね。すごくそれは意識しました。やっぱり自分が一番好きなのは’90年代のサウンドなんで。そういったところでは、そういう自分を今後もうちょっと出していきたいなって思ってもいます」

ーーもう一曲の新曲「Me」は、自分からの宣言みたいなものですか?

「はい。今自分の内にふつふつと湧き上がっている想いを全部吐き出すみたいな曲が無いと、ベストってただのシングルの寄せ集めになってしまうから、それは避けたくて。だからこういう新録曲を入れたんです。私の中では、わりとロックよりな仕上がりになったところが、すごく気に入ってます」

ーーこのベスト盤は、リスナーにどんなふうに楽しんでもらえたらよいと思っていますか?

「私が16歳のときから、22歳のときまでの、その瞬間にしか感じることができなかった気持ち的なものが、言葉で一曲一曲書かれているので、その歴史、一人の人間の感じていることを自分のことのように聴いてもらえたら嬉しいなと思います。」

ーーそういう意味では、歌詞もちゃんと見ながら聴いてもらえたらいいですね。

「いいですね」

interview & text TOMO HIRATA


【アルバム情報】

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加藤ミリヤ
M BEST
(JPN) SONY MUSIC RECORDS / SRCL-7773~7776
初回盤 2CD+2DVD
HMVでチェック

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加藤ミリヤ
M BEST
(JPN) SONY MUSIC RECORDS / SRCL-7777~7778
通常盤 2CD
HMVでチェック

【LIVE INFORMATION】
“KAWI JAMELE presents 加藤ミリヤ M BEST TOUR 2011”開催決定
詳細はこちら http://miliyah.com/

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