SEEKAE『+DOME』インタビュー


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’06年にアレックス、ジョージ、ジョンの3名で結成された、シドニーを拠点に活動する実験的エレクトロニカ・バンド、シーケイ。’08年にリリースしたデビュー・アルバム『The Sounds of Trees Falling On People』が、オーストラリアやアメリカで高い評価を獲得し、世界の音楽ブログにおけるピックアップ・アーティスト・ランキングのトップ10に入った逸材です。

そんなシーケイが、待望のニュー・アルバム『+ドーム』を7/6にリリースします。その内容は、ポスト・ロック、グリッチ・ポップ、ダブステップ、アンビエント…といった要素を、バンド演奏という形で結合させたユニークなもの。“アルバムを象徴するような曲”だという「3」や、タイトル曲の「+DOME」を筆頭に、ビートと音のディテールにこだわり抜いた、彼ら独自の音響世界が広がる作品となっています。

緻密で芸術的なビート・メイキング、サウンド・コラージュが詰まった『+ドーム』。本作の内容について、シーケイに話を聞きました。


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SEEKAE

ユニークなビート・メイキングとサウンド・コラージュを創造する、
シドニーから登場した注目の新世代エレクトロニック・バンド

__まずは、あなた達が2006年にシーケイを結成したきっかけについて教えてください。

「退屈だったのと、ビデオ・ゲームがみんな好きだったのと、そろそろマジで彼女をつくりたいという気持ち。その三つの融合かな」

__バンド結成当初の音楽的なコンセプトは、どのようなものだったのでしょうか?

「始めた当初は、それぞれが持っていた楽器で、自然と役割分担されていたんだ。ジョージはMPCのビート担当で、アレックスは、女の子ボーカルと、ローランドのサンプラーを使ってサブ・ベース・サウンドをぶちかまして、ジョンは、紅茶とクッキーの用意をしていたよ。全体的には、当時自分たちが聴いていたような音楽を吸収して、反映したものにしたかったね。今はどちらかというと、よりバンドらしい一体感のある、オーガニックな感じにしたいと思っているよ」

__ちなみに、シーケイ結成以前は、メンバーそれぞれどのような活動をしていたんですか? また、あなた達の音楽的なバックボーンなども教えてください。

いろんな音楽的背景があるよ、それぞれ。例えば、ジョージはクラリネットをやっていて、両親、お姉さんとカルテットをやってたり、アレックスとジョンはインディー・ロックのバンドで、それぞれドラマーとギタリストをやっていたよ」

__で、あなた達は、2008年にデビュー・アルバム『The Sounds of Trees Falling On People』を発表し、母国オーストラリアやアメリカを中心に、高い評価を獲得しましたね。あのアルバムを通じてチャレンジしてみたかったことは、どのようなものだったのでしょうか?

「あの反応には、正直驚いたね。もともとは、アレックスのお母さんがやっているマッサージ屋さんのBGMで使ってもらうためにつくったつもりだったのに、ラジオでかかり始めたりしたから。結構かるようになってからは、お母さんに“音楽を変えて”って頼んだよ(笑)」

__では、日本デビュー作となるニュー・アルバム、『+ドーム』について教えてください。今作のテーマ、コンセプトはどのようなものでしたか?

「1枚目とは違って、今回は明確にやりたいことがあったね。みんなでスタジオに入って作曲して、もっと生楽器や生演奏の要素を加えたかった。もちろんデジタルな面も残したかったけど、アルバム全体にオーガニックな雰囲気を与えたかったんだ。デジタルとアナログの境界線が分からないようにしたかった」

__「+DOME」という曲名の意味合いと、この曲名をアルバム・タイトルにした理由について教えてください。

「“+DOME”って、アレックスの犬の名前なんだ。その犬は、アルバム作業の全てを見届けていたからね。ほとんど寝てたけど(笑)。曲自体は、VSTのプラグインでKONTAKT4というのを見つけたことから生まれて、たくさんの悩みを経て誕生したものだよ」

__音楽的には、あなた達の特徴であるポスト・ロック、グリッチ・ポップ、ダブステップ、アンビエント…といった多様な音楽的要素がオーガニックに結合した実験的なインストゥルメンタル・ミュージックを、より深く追求した内容の作品だと感じました。今作の曲づくりで特に意識したことは何でしたか?

「アルバムとしては、低音が結構ずっしりした感じにはしたかった。リズムをより分厚くすることも意識したね。でも、それに反して、純粋にメロディーだけを前に置いた曲なんかも織り交ぜることで、全体的にバランスの良い、完成された形になった気がしているよ」

__サウンドメイキング面で重視したことは何でしたか?

「フィールド・レコーディングをたくさんやって、それをAbleton Liveでエディットしていった。そのコンセプトとは、自分達独自の音なんだけど、加工を重ねることによって認識できないほどのものにしていく、というものだね。曲の中にこうした音を何層も重ねることで、曲の表情を変えていって、最終的にはその曲の方向性を固めていく…という感じだね」

__曲づくり自体は、どのようなプロセスで作業を進めていきましたか? あなた達独自の作曲方法などがありましたら、少しご紹介ください。

「以前はそれぞれが曲を書いて、練習時にそれを持ち込んで作業していく…という感じだったけど、今は最初の段階からみんな揃って書き始めるようにしているね。で、曲によって作曲の仕方や、みんなの役割も変わってくるね。例えば、アレックスがパーカッションのパートをやっている間に、ジョージとジョンがメロディーを考えたり、時にはその真逆もある。で、曲が仕上がるまでの各プロセスで、みんな意見を出し合ってるんだ」

__ちなみに、曲づくりにおけるあなた達のインスピレーション源とは、どのようなものなのですか?

「多くの源は、結構変わったものに由来していたりするかな。その時読んでいた本とか、映画のキャラクターだったり、僕らの音楽に寄せられたコメントの内容だったり。何か固定したインスピレーションというものはないね。かなり無作為だ」

__最新シングル「Blood Bank」は、どのようにして誕生した楽曲ですか?

「ジョンが、彼と一緒に住んでる仲間がレコーディングしていたアカペラの曲をカットアップして、曲のボーカル部分をつくり上げたんだ。で、その時、僕らはヒップホップやベース重視の音楽を聴いていたから、この曲もなるべく低音をでかくしたかった。僕らの音楽でも踊れるんだぜ、という意気込みがあったかな」

__今作の中で、特にあなた達が重要だと考えている楽曲をご紹介いただけますか?

「たぶん「3」が、一番アルバム全体を象徴するような曲だと思う。僕らにとって進化を遂げられた曲だったし、追い求めていたサウンドを捕らえられた気がする。それと、トム・クルーズの一番のお気に入りらしいよ」

__あなた達が、生楽器を用いたライブ・サウンドとエレクトロニック・サウンドのコンビネーションに魅力を感じている理由とは何ですか?

「生楽器で奏でられる音楽には、独特の高揚感と歓喜があると思っていて、それはエレクトロニック・ミュージックでは成し得ないものなんだ。その反面、電子機材でつくり出せる音とその質感には、不思議で面白いものがたくさんあって、まだまだ未知の領域も多い。で、その両方を混ぜるというのは、時には大きなチャレンジなんだけど、ハマった時の喜びは本当にすごいんだ」

__最後に、あなた達の次なる活動目標を教えてください。

「ちょうどUKのツアーが終ったところなんだけど、今年はアメリカとヨーロッパの本土でもライブをやりたいと思っているんだ。そしてもちろん、日本にも早く行きたいよ!」

interview & text Fuminori Taniue


【リリース情報】

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SEEKAE
+Dome
(JPN) P-VINE / PCD-93417
7月6日発売
HMVでチェック

tracklisting
01. Go
02. 3
03. Blood Bank
04. Reset Head
05. Mingus
06. Underling
07. Gnor
08. Two
09. Yodal
10. Rock’s Performance
11. +Dome
12. You’ll
13. Altise Lament
14. Face Facts
15. Salad

【オフィシャルサイト】
http://p-vine.jp/artists/seekae
http://www.seekae.com/
http://www.riceisnice.net/artists/seekae/

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