米メリーランド州ボルティモアで10代の頃からラップを始め、フィラデルフィアのドレクセル大学在籍時に、ディプロ率いるホラートロニックスのクルーと出会い、ヒップホップ、バイリ・ファンキ、マイアミ・ベース、ダンスホールといった様々なビートをミックスした新たなムーブメント、ボルティモア・ブレイクスの伝説的存在となったスパンク・ロック(Spank Rock)ことナイーム・ジュワン。’06年に、UKの老舗レーベルであるNINJA TUNE傘下のBIG DADAから、長年の親友であるボルティモア出身のDJ/プロデューサー、トリプルエクスチェンジ(XXXChange)と共に制作したアルバム『YoYoYoYoYo』をリリースすると、一躍注目を浴びた気鋭アーティストです。
そんなスパンク・ロックが、待望のニュー・アルバム『エヴリシング・イズ・ボーリング・アンド・エヴリワン・イズ・ア・ファッキング・ライアー』(Everything is Boring and Everyone is a Fucking Liar)をリリースしました。エグゼクティブ・プロデューサーに、なんとエレクトロ界の人気アーティスト、ボーイズ・ノイズを迎え制作した内容で、マーク・ロンソン、サンティゴールド、ビッグ・フリーディアらがゲスト参加した注目作となっています。
ここでは、そんな本作の内容について、ナイーム・ジュワンに話を聞きました。「Energy」のリズムは、CANの「Vitamin C」(’72)がネタだったんですね。
SPANK ROCK
エレクトロ・ラップの鬼才が完成させた、
ブリーピーでファンキーな新次元ハイブリッド・ビート
__前作『Yoyoyoyoyo』をリリースしてから、もう5年経ってしまったんですね。この5年間のご自身の活動について、どのように総括していますか?
「あんまりふり返ることは良くないと思うんだけど、アートとビジネス、作曲と健康であることを、バランス良くこなせるようになってきたと思う。今回、自分のクリエイティビティーを信じて、妥協せずにアルバムを一枚をつくり上げたことには、大きな達成感を感じているよ」
__では早速、そのニュー・アルバム『エヴリシング・イズ・ボーリング・アンド・エヴリワン・イズ・ア・ファッキング・ライアー』について教えてください。まず、今作の曲づくり〜レコーディングは、いつ頃からスタートしたのでしょうか?
「レコーディングは2年くらい前から始めたかな。でも、当時契約していたDowntownと上手くいかなくなって、半分以上は一回捨てたね。で、そこからボーイズ・ノイズ(Boys Noize)と新しい音源をつくり始めたんだ」
__ボーイズ・ノイズと組むことにした理由は何でしたか? また、彼との作業はいかがでしたか。
「彼のベルリンにあるスタジオで、1ヶ月レコーディングしたんだけど、僕自身は決して良いムードじゃなかったから、たぶん相当難儀な相手だったと思うよ。でもアレックス(=ボーイズ・ノイズ)は忍耐強かったし、何よりずっとエキサイトしていたね。彼は、僕に音楽をつくる楽しさをもう一度教えてくれたんだ。良いアイディアをたくさん持っていたし、僕が新しいことにトライするのを促してくれたりもした。良いプロデューサーとは、アーティストからベストな作品を引き出せる人だと思うんだけど、アレックスはそれを実現させたね」
__ビート面、サウンド面において、今作ではどのようなチャレンジをしてみたかったんですか? 音楽的には、モダンでアヴァンギャルドなエレクトロ・サウンドが散りばめられた作品となっていますね。
「より力強いエレクトロニック・サウンドを目指したかった。『YoYoYoYoYo』のようにローファイな感じじゃなくて、もっと音質も良くて、そして誰もが聴いてもユニークだと感じるような作品にしたかったんだ」
__では、そんな今作のタイトルを、“Everything is Boring and Everyone is a Fucking Liar”とした理由について教えてください。挑戦的、挑発的なタイトルですね。
「このタイトルには、人々に自分達のイマジネーションをもっと使って欲しい、という意味が込められているんだ。あとは、今のアメリカの音楽業界に対する反対声明でもあるね」
__なるほど。ちなみに今作のリリック面では、何か特に意識したことはありましたか?
「たくさんあったよ。でも….自由、進化、精神、性、かな」
__で、今作は「Car Song」にサンティゴールド(Santigold)、「Nasty」にビッグ・フリーディア(Big Freedia)、さらにマーク・ロンソン(Mark Ronson)などなど、様々なアーティストが参加した作品にもなっていますね。彼らとのコラボレーションはいかがでしたか?
「どのコラボレーションも、魔法のように素晴らしかったよ。サンティゴールドとは何度か共演させてもらってて、彼女のデビューにも参加したし、いつも楽しいよ。現代最高のソングライターの一人だと思うね。でも今回一番興奮したのは、ニューオーリンズのビッグ・フリーディアとのコラボだね。あの街のエネルギーはハンパじゃないものがある。フリーディアがいないと僕のアルバムは完成しなかった、ってくらい大事だったよ」
__先行公開した「DTF DADT」は、どのようにして誕生した曲ですか?
「Mad Decent(ディプロのレーベル)に所属しているPOPOというバンドのゼブ・マリックが、このビートをくれたんだ。で、即興を織り交ぜたりして、すごく自由な形で構成された曲になっている。いわゆる既存のポップの流れを無視したね。それぞれのトラックをもう持ってなくて、mp3しかなかったから、曲に核となる部分を見つけるのが大変だったけど、良いチャレンジだった。大きな石から像を掘り出すような作業だったよ。アレックスは音の質に不満をもらしていたけど、その荒々しさみたいなのに魅力を感じていた部分があったね、自分的には。そこが美しい、って感じたんだ」
__あなたのボーカルをフィーチャーしたシングル曲「Energy」も、カテゴライズできない斬新なトラックに仕上がっていますね。この曲は、どのようにして誕生したものですか?
「ボーイズ・ノイズとクリストファー・コスグローヴとで、ロサンゼルスで書いた曲だね。アルバムの中で一番最後に書いた曲だった。一緒にレコーディング作業ができる最後の日に、ビッグなポップ・ヒットをつくろうって挑戦してみたんだ。でも、途中でポップな曲なんか書きたくないって思い始めて、自分が良いと思ったものを書こうってことになった。で、CANの「Vitamin C」(’72)にあるドラム・ブレイクをループさせて、その後は歌詞がどんどん湧き出てきたよ。何かの魂が部屋に入ってきて、自然と曲ができ上がってしまう…そんな感じだった」
__魔法の時間ですね。
「そこからボーイズ・ノイズはベルリンに戻って、生楽器で音を録音し直したんだ。アルバムに入っている他のエレクトロニックな音からは、少し離れた感じだよね」
__分かりました。では最後に、スパンク・ロックの次なる活動目標ついて教えてください。
「もっと音楽をつくって、とにかく楽しむことさ!」
【リリース情報】
SPANK ROCK
Everything is Boring and Everyone is a Fucking Liar
(JPN) P-VINE / PCD-17496
HMVでチェック
tracklist
01. TA DA
02. NASTY feat. Big Freedia & Tyette
03. CAR SONG feat. Santigold
04. BIRFDAY
05. THE DANCE
06. #1 Hit
07. TURN IT OFF
08. HENNESEY YOUNGMAN SKIT
09. RACE RIOT
10. BABY
11. HOT POTATO
12. COOL SHIT
13. DTF DADT
14. ENERGY
【VIDEO】
【オフィシャルサイト】
http://p-vine.jp/artists/spank-rock
http://spankrock.com/
http://www.facebook.com/spankrockofficial