The Kills『Blood Pressures』インタビュー


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ジェイミー・ヒンス(G/ホテル)とアリソン・モシャート(Vo/ヴィヴィ)からなる、ロンドンを拠点に活動するロック・デュオ、ザ・キルズ。’02年に正式デビューして以降、ブルースとポスト・パンクの要素を融合した『ノー・ワウ』(’05)や、トリプルエクスチェンジをプロデューサーに起用し、ダンス・サウンドを導入した『ミッドナイト・ブーム』(’08)といった話題作を送り出してきた、人気バンドです。アリソンは、ジャック・ホワイトらと結成したデッド・ウェザーのメンバーとして、ジェイミーはケイト・モスの夫としても有名ですね。

そんな彼らが、通算4作目となる最新作『ブラッド・プレッシャーズ』を4/6にリリースします。ジェイミーが“グレイス・ジョーンズの作品なんかを、俺達なりにつくり直して…”と語っている通り、レゲエの要素を独自に解釈した「Satellite」や、どこかジョン・レノンの弾き語り曲を彷彿とさせる「Wild Charms」など、シンプルさを極めた、エモーショナルにしてクールな楽曲群が詰まった進展作です。

ここでは、そんな『ブラッド・プレッシャーズ』の内容と、その音楽的背景について語った、彼らのインタビューをご紹介しましょう。


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THE KILLS

音楽的幅広さと同時に、シンプルさにも磨きをかけた、
クールでスタイリッシュなUKロック・デュオ

__早速ですが、最新作『ブラッド・プレッシャーズ』について教えてください。何かテーマのようなものはありましたか?

ジェイミー「偏執的で、閉所恐怖症的…って、このレコードを完成させてから、アリソンとアルバムのテーマについて話していたんだ。ジェンダーや人間関係がたくさん扱われていて、そして、セックスについての作品でもある。だから、血圧(ブラッド・プレッシャーズ)ってタイトルなんだ」
アリソン「今のところ、今作はすごくダークなレコードだと思っているわ。私達には、二人とも偏執的なところがあると思うの。自分達がすごく好きなものには、取りつかれたようになるし、嫌いなものに関しては、たぶんもっと取りつかれたようになる部分がある。このレコードが実際にどんなものなのか、実際には何を伝えようとしているのか。それを知るには、ライブで演奏してみる必要があると思うわ」

__今作は、前作『ミッドナイト・ブーム』とは、ひと味違うサウンドになっていますが、どのような変化があったのでしょうか?

ジェイミー「俺達の音楽が変わったのは、アリソンが、昨年の大半をデッド・ウェザーのツアーに費やしていたからだろう。彼女からアイディアを得て、それを音楽へと変換するのには、すごくカタルシスがあったね。例えば「The Last Goodbye」は、もともと4/4拍子だったものを、ワルツに変えてみた曲さ」
アリソン「デッド・ウェザーは、(ザ・キルズと)全然違ったタイプのバンドね。一つには、あれは四人組のバンドで、いっぺんにたくさんのことが起こっているの。すごく即興的なところもあるしね。でも私は、ステージで次に何が起こるか分からないという状況に、慣れてなかった。ドラムマシンを使ってパフォーマンスすることに慣れ切っていたから。だけど、そのおかげで、以前よりも声を楽器として使うのが上手くなったと思うわ。単に歌詞を耳に届けるだけじゃなくて、ギターやそのフィードバック音と張り合えるような声やノイズを出せるようになったんじゃないかな」

__なるほど。

ジェイミー「俺はたくさんのバンドをやってきたけど、いろいろと考え過ぎていたところがあったんだ。もっと自由にやった方がいいんだよ。そういった点で、アリソンは俺をすごく助けてくれる。俺はいろんなことに時間をかけ過ぎてしまうタイプだけど、彼女は、俺にもっと自然にやるよう強いてくれるんだ」
アリソン「私達は、双子のように感じる日もあれば、全然似ていないと思う日もあるんだけど、アートや音楽については、共有しているものがたくさんあるのよ。でも、ジェイミーは完璧主義者ね。私は、その瞬間を捉えたスナップショットや、アクシデントが大好きなんだけど。それに、私はアメリカ人で、彼はイギリス人…そういうことよ」

__レコーディングは、前作同様、米ミシガン州のベントン・ハーバーにあるキークラブ・スタジオで行ったそうですね。

ジェイミー「あそこは、完全に第二の故郷のような場所だからね。邪魔する物事が一切ないんだ。一日中音楽をつくるための環境が与えられているんだよ。正直、スタジオ外の世界で何が起こっているのか、全く気付かないくらいにね。俺は、サンプリングとプログラミングを徹底的に研究したよ。ドラム・キットをいじるのに、たくさんの時間をかけたんだ。孤独感すら感じさせる、その一人きりの作業は、本当に最高だったよ」

__今作における楽曲制作のプロセスは、どのようなものでしたか?

アリソン「私達は、いつも別々に曲を書いているんだけど、最初から最後まで一緒に仕上げる時もある。で、私がいつもやっているのは、アコースティック・ギターでメロディーや歌詞を書くことよ。で、ジェイミーがそれを気に入ったら、彼はちゃんとした音楽として、それに形を与えるの。彼が書いた曲に関しては、最初から最後まで彼自身で仕上げたわね。私が思うに、彼はすごく苦しみながら曲を書いていて、すごく秘密主義なのよ。普段、つくっている途中の曲を、なかなか聴かせてもらえないわ」

__今作のキー曲は何になりますか?

アリソン「一つは「DNA」で、この曲の歌詞を書いたのはジェイミーね。彼が最後の一行を書き上げた時、私はもうその曲をスタジオで歌ってたのよ。実際、あれはレコーディング最後の夜だったと思う。あの曲は大好きね。もう一つは「The Last Goodbye」で、歌詞を書いたのは私ね。あの曲は本当にすぐできた。どこからともなく生まれた感じで、自然に書けた曲の一つよ。で、ジェイミーはそれを聴いて、オプティガン(光で音の波形を読み取り再生する、’70年代の電気オルガン)を使うのがベストだと判断したの。彼のおかげで、すごく特別な仕上がりになったわ」

__最後に、作品のインスピレーション源になっているものがあれば、教えてください。

アリソン「ブルースは、間違いなくインスピレーションになっているわ。私が本当に好きな音楽、本当に私に語りかけてくる音楽っていうのは、どれもブルースか、何かしらの形でブルースに影響されている音楽なの。ブルースに飽きたことなんてないし、ブルースが自分のものだと感じられなかったことも、一度もない」
ジェイミー「彼女は、いまだにブルースから何か新しいものを発見しているよ。それに、ジャック・ホワイトと仕事をしたことで、もっとブルースが面白いと思うようになったんじゃないかな。一方、俺はと言うと、前作をつくった後、ちょっとフラストレーションが溜まっていたんだ。でも、色々と試してみて、バハマのコンパス・ポイント・スタジオ作品や、グレイス・ジョーンズの作品なんかを、俺達なりにつくり直してみようってアイディアを思い付いたことで、完璧にスッキリしたね」

photo Edouard Plongeon


【アルバム情報】

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THE KILLS
Blood Pressures
(JPN) DOMINO/HOSTESS/ WIGCD249J
4月6日発売
HMVで買う

tracklisting
01. Future Starts Slow
02. Satellite
03. Heart Is A Beating Drum
04. Nail In My Coffin
05. Wild Charms
06. DNA
07. Baby Says
08. The Last Goodbye
09. Damned If She Do
10. You Don’t Own The Road
11. Pots and Pans
12. ウィロウ・ウィープ・フォー・ミー(日本盤ボーナストラック)
13. サテライト(ワーブラー・アリワ)(日本盤ボーナストラック)
14. サテライト(アウト・オブ・オービット・ダブ)(日本盤ボーナストラック)

【オフィシャルサイト】
http://www.hostess.co.jp/thekills/
http://www.thekills.tv/

【Video】

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