TOKYO HOUSE UNDERGROUND – Milton Jackson リリース第一弾、Destination EPインタビュー


現在進行形の“東京”、そして、“アンダーグラウンドなシーン”というフィルターを通して、世界の新進気鋭作家を紹介するという目的で発足した、TOKYO HOUSE UNDERGROUND。Apt. Internationalが、配信リリース限定で毎月お送りする、新プロジェクトです。

このたびその第一弾として、Freerangeなどから作品を発表し、欧州のみならず世界的に評価を受けているディープ・ハウサー、Milton JacksonのニューEP、『Destination』がリリースされることとなりました。ここでは、“まさにMilton節!”と唸りの上がる好楽曲、「Destination」を引っ提げた、彼のインタビューをお届けします。

まず、あなたの音楽的なルーツを、うかがいたいと思います。幼少の頃に影響を受けた音楽、そしてエレクトロニック・ミュージックに興味を持つきっかけになったアーティストを、それぞれ教えてください。

「エレクトロニック・ミュージックを聴き始めたのは、1990年代中盤から後半にかけてだね。ドラムン・ベースやハウスが好きだったんだ。若い頃は、Kerri ChandlerやLTJ Bukemが好きだったんだけど、歳をとるにつれて、Steven Tangみたいな、ディープでメロディックなテクノにひかれていったね」

そういったルーツは、自身の音楽に反映されてると思いますか?

「たぶん、初期のドラムン・ベースは、自分の音楽に影響していると思うよ。(初期のドラムン・ベースが持っていた)ヴァイブスを見習おうとしているし、自分のインスピレーションは、そういった古い楽曲から導き出されることが多いんだ」

あなたが近年発表している作品は、温かみがありながらも、ディープかつテッキーな、独特の風合いを持っていますね。日本にも、ファンがたくさんいます。こういった、独特なサウンドを生み出す秘訣はあるのでしょうか?

「制作には、LogicとAbleton(Live)を一緒に使っているよ。たくさんのサンプルとピッチを、シンセの代わりに使っている。そうすると、温かみのあるサウンドになるんだ。あと、たくさんのアウトボード、サミング・ミキサー、Oberheim Matrix(※ヴィンテージ・シンセ)と、Akaiの古いサンプラーも重要な機材だね。オークションでシンセを買うのが好きで、何曲かの制作に使っては、すぐ売ってしまうんだ。常に新鮮でいる為にね。

その他にも、制作に関してこだわっている点はありますか?

「ドラムをサンプリングするために、昔のレコードをたくさん買っているよ。アナログからサンプリングすると、音に温かみが生まれるからね。そのやり方だと、ノイズも一緒に取り込むことになるんだけど、サンプルCDからサンプリングしたような、キレイすぎるキックよりも、素晴らしいことは確かさ。だから、アナログからサンプリングするのが一番いい方法だと思っているよ。それに、最近はみんな同じような機材を使って、同じサンプルCDを買っているだろう? 僕の音には、それとは違う独自の風合いがあると思うよ」

あなたは、Apt. Internationalがお届けする配信楽曲シリーズ、TOKYO HOUSE UNDERGROUNDの第一弾アーティストにピックアップされましたが、このプロジェクトの軸となっている、東京には、どんなイメージを抱いていますか?

「東京は、いつ行ってもフレンドリーで、探索するにも、レコードを買うにも最高の場所だよ。日本のクラブでは、ちょっとエクスペリメンタルなプレイも許容されるし、ヨーロッパよりもオープンな部分がたくさんあると思うよ」

これまでに来日した際の、印象的なエピソードがあれば教えてください。

「東京には、これまでに3回行ったことがあるんだけど、毎回いい体験をしているよ。そのうち一回は友達と一緒に行ったんだけど、アルコールと時差ボケのダブルパンチで、友達が思いっきりダウンしてしまってさ。僕のDJ中に、彼がステージから落ちてしまったことがあったね。ステージはとても高いところにあったから、病院に連れて行かなくちゃと思ってたんだけど、彼は大丈夫だったよ。翌朝は築地の魚市場にいったんだけど、魚の匂いが、二日酔いの彼をさらに気分悪くさせていたよ(笑)」

TOKYO HOUSE UNDERGROUND第一弾リリースとなるニューEP、『Destination』表題曲のコンセプトを教えてください。

「日本に向かう飛行機に乗るとき、僕はいつもすごく興奮しているから、「Destination」では、その気持ちを再現しようと思ったのさ。ヨーロッパから日本へのフライトは、ロシアの上を通るから、北極圏の近くを飛ぶだろう? タイミングが良ければ、そこで素晴らしい景色が見られるんだ。この曲には、そんな気分を当てはめたかった。だから曲名も、「Destination」にしたのさ。メロディーに多様な動きがあって、旅行をしているような雰囲気を持った曲だね」

今後、TOKYO HOUSE UNDERGROUNDシリーズでピックアップすべき、おすすめのクリエイターはいますか?

「James Blakeの作品は、興味深いと思うな。R&Sからアルバムがリリースされる予定なんだけど、彼の音楽はショッキングだよ! Skudgeの楽曲も、疾走感があって僕好みだな。TOKYO HOUSE UNDERGROUNDでは、彼らやShur-i-kanといったクリエイターを、フックアップするべきだよ! 彼らなら、必ずいい作品を提供してくれると思う」

その他、最近興味を持っている音楽や、凝っていることはありますか?

「個人的には、1980年代後半から1990年代にかけての、古いダンスミュージックを掘るのが好きなんだ。特にこの時代の、フレンチ・ディープ・ハウスは最高だよ。あとは、Soundcloudで古いDJミックスを探すことにも凝っているね。最近、DJ Deepが1994年に発表したDJミックスを見つけたんだけど、とても素晴らしかったよ!」

Interview & Text by Keita Takahashi

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