TOWA TEI『94-14』&『94-14 COVERS』インタビュー


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’90年代初頭に世界的ブレイクを果たしたDeee-Liteのメンバーとして活躍した後、1994年にソロ活動をスタートさせたプロデューサー/DJ、TOWA TEI(テイ・トウワ)。デビュー作『Future Listening!』から2013年の『LUCKY』まで、Sweet Robots Against The Machine名義の作品も含めて9枚のアルバムをリリースする一方、ソングライター/プロデューサーとして様々な作品やプロジェクトに携わってきた人気アーティストです。最近は展覧会の開催やYukihiro Takahashi & METAFIVEでの活動等でも話題を集めていますね。

そんなTOWA TEIが、7月にリリースした『94-14 REMIX』に続き、ソロ活動20周年を記念したリマスタリング三部作の続きとなる『94-14』と『94-14 COVERS』を9/3にリリースします。『94-14』はこの20年間で送り出したオリジナル曲の中から計18曲を厳選した名曲集、『94-14 COVERS』はセルフ・カバーやニュー・レコーディングを含む計12曲を収録したカバー・ソング集で、いずれの作品もTOWA TEIならではのセンスと音へのこだわりが詰まった、一般的な“ベスト盤”とはひと味違う内容を誇っています。

ここでは本作『94-14』と『94-14 COVERS』の内容を中心に、ソロ20周年企画の“94-14”三部作についてTOWA TEIに話を聞きました。なお、彼は9/8(月)から9/28(日)までエキシビション<TOWA TEI THINKS PRETTY THINGS>を、9/12(金)に<TOWA TEI 20TH ANNIV & 50TH BIRTH ★Party★>を、東京 丸の内の(marunouchi) HOUSEで開催する予定となっています。


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TOWA TEI『94-14』&『94-14 COVERS』インタビュー

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PART 1

__今回のソロ20周年三部作の企画は、いつ頃から思い描いていたものなのですか?

「一昨年のある段階で“もう20周年になるのか”って思って、“何かやらなきゃな”っていう話はあったんですけど、具体的な話をしたのは去年の秋くらいでしたかね。去年『LUCKY』を出した頃には、もう2014年はこの3枚(『94-14』『94-14 COVERS』『94-14 REMIX』)を出すだろうっていう風には思ってました」

__『94-14』『94-14 COVERS』『94-14 REMIX』の3種類をリリースするのは、当初からのアイディアだったんですか?

「なんとなく口走っちゃったことだったんですけど、そうですね。いわゆる2枚組のベスト盤ってありますけど、それだと20周年という今回の企画の場合は混ざっちゃうといいますか…。あくまでもコンピレーションなんで整合性がないのは当然だとしても、20年間のことを…正解はないんですけど、捻ればいいという感じでもないですしね」

__オリジナル曲、カバー曲、リミックス曲で分けた方が、作品集としてすっきりしますね。

「『94-14』はソングライターとしてのオリジナル曲のみにして、カバーもいろいろやってきたので、それは『94-14 COVERS』として分けたいな、と。で、他の人にやってもらったリミックスはリミックスで『94-14 REMIX』に。リミックスだって入り切らなかったくらいなんでね。だから入らなかった曲は好きじゃない、というわけではないんですよ。あと、3枚組にするよりは、それぞれ分けて出した方がジャケットも3種類つくれますしね」

__そうですね。

「あとは、今回“ベスト”って言葉はあんまり使いなくなかったですね。3枚のベストというよりも、1994年から今日2014年までにやったものの中からのコンピレーション、っていうことで。特に『94-14 COVERS』は、新レコーディングス的な側面も持ってますし。いわゆる“ザ・ベスト”盤にあたる『94-14』も、結果的に全曲リマスタリングしてますしね」

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PART 2

__『94-14』の選曲は、どのように進めていったのでしょうか?

「歌ものを中心に選びましたね。で、当時の気分、その当時のアルバムの気分や自分の気分だったりとかで、ボーカルの音量が低かったりするものがあったんですけど、そういう曲は、当時DATなどに落としたテイクの中から最もボーカル・ラウダーなものを見つけてきて、さらに中域を持ち上げるような作業をしてから入れました。そうしないと、アルバム全体がつながらないんですよ。もちろん、そうやって上手くまとめつつ、各曲それぞれの時代感や雰囲気も出てると思いますけど」

__DATから別テイクを探し出すというのは、大変な作業ですね。

「まとめるにあたって、曲のイントロ部分を切ったりとか、そういった作業もしてますよ。例えば「Butterfly」(1999)は、イントロのピアノが入ってないEPバージョンの方を使ったりしてますし、「Latte & Macaron」(2002)は、長いと思ったんで半分に切りましたしね。ジングルっぽくしようと思って。実際は10曲目の「Latte & Macaron」までが21世紀の曲なんですけど、このアルバムとしては9曲目の「Milky Way」(2005)までが前半、という感じになってますね。で、「Milky Way」に入っている教授(坂本龍一)のエンディングは、アルバム『FLASH』(2005)ではなくなく入れなかったものなんですよ、全体の流れを考えて」

__『94-14』の曲順は、現在から過去にさかのぼっていく流れになっていますが、確かに2005年の「Milky Way」と2002年の「Latte & Macaron」の間で雰囲気が変わりますね。

「「Latte & Macaron」は、Sweet Robots Against The Machineの曲なんですけど、あのときのアルバム『TOWA TEI』(2002)は、20世紀と21世紀をまたいじゃったんですよね。僕はちょうど2000年に軽井沢に引っ越したんですけど、その前にはほぼできていた感じだったんです。でも引っ越しをするので中断して、落ち着いたので“じゃあ仕上げよう”って思ったら、だいぶ気分が変わってきちゃって、そこからまたダラダラつくり直して…。一番時間がかかったアルバムかもしれない。今聴くと、てんこ盛りすぎますね」

__ちょうど節目の時代の作品だったんですね。

「その後は、Sweet Robots…の名前で使い分けていく理由もなくなってしまいましたしね。とにかく、この『94-14』のために結構いろいろやってますよ。さかのぼっていくほどDATから録り直したりだとか、そういう作業が増えました。近年の曲に関しては、ほとんど変更してないですけどね。マスタリング技術も上がってますし。それにしても、オリジナル曲だけに絞った上でも、どうやって過去20年の曲をまとめるのかというのは、きりがないなって思いました。それで、時系列でさかのぼっていく曲順にしようって思ったんですよ。各アルバムから2~3曲ずつ入れていくことにして」

__なるほど。

「だから、入れられなかった曲もたくさんあります。また違ったアングルからコンパイルしてみたいですね。今回の『94-14』に関しては、最後の曲「Amai Seikatsu」(1994)からまた1曲目の「Apple」(2013)にループする流れは、いいなって思ってます。全然違和感なくて」

__ところで、テイ・トウワさんは普段自分のアルバムを聴き返すということは多いんですか?

「あんまりないですね。シチュエーションを変えて…例えば温泉に行って寝るときにかけてみたり、ということはたまにあるんですけど、スタジオやリビングで聴くということはないです。もちろん、今回は聴きましたよ。山のようなDATも聴いたくらいですから」

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PART 3

__テイ・トウワさんは、これまでにカバー曲を多く手がけてきた印象がありますが、カバーをしてきた理由というのは何でしょうか?

「これはやっぱり自分のDJとしての側面、音楽好きの側面として良い曲っていっぱいあるんでね。で、自分ではつくれない曲というのもあるんでカバーをしよう、と。例えば、The Knack「My Sharona」のカバー(2005)なんかはそうですね。この曲にあるパワーコードのリフの、口ずさめるトップノートみたいなものは、なかなかつくれそうもないんでカバーしてみたりとか。これは当時DJでちょっとロックなフィーリングがほしいってときに、オリジナルの「My Sharona」をかけちゃうと音圧に弱いということから、DJで自分が使えるようにとつくったものですね」

__そういう動機からカバーした曲も多いんですか?

「いや、そんなに多くはないと思いますね。Hall & Oates「Private Eyes」のカバー(1997)にしたって、僕はオリジナルとは違って、クラブというよりは地味にボサでカバーしているわけですから。このカバー以降、何でもボサノヴァでカバーすればオシャレだと思っているカッペがいますけど(笑)、これはそういうメンタルでやったカバーではないですよ。あとTom Browne「Funkin’ For Jamaica」も、“良くできた曲だなぁ”って思ってカバーしたものですね。これはTom Browne本人まで呼んでやりましたから。まあ、いろんな意味でのフェイバリットであることが、カバーする一つの基準にはなってますかね」

__なるほど。

「Deniece Williams「Free」のカバー(2002)は、2ステップにハマっていた頃だったんで、原曲は遅い曲ですけど“2ステップっぽくなるな”って思ってやりましたね。でも、けっこう原曲そのまんまの方向性で、音圧だけを上げたようなイメージのカバーもありますよ。あと、Marcos Valle「Batucada」のカバー(1994)は、ニューヨークで本人に会ったときに、“いままでにカバーされた「Batucada」の中で、キミのが一番好きだよ”って褒められましたね。このカバーは、’70年代にカバーされたちょっとレアな「Batucada」というのがあって、そのバージョンがとても好きだったんで、それをなぞりつつ打ち込みっぽくやったものなんですけど」

__そうなんですか。

「この曲が入っているアルバム『Future Listening!』(1994)って、実はそんなにテクノっぽくないんですよ。発想がテクノという感じで。なんで、あのアルバムの中でみんなが思っている“テクノ+ボサノヴァ”という曲は、この「Batucada」のカバーだという気がします。当初は“Technova”というアルバム・タイトルにしようと思っていたんですけど、アティテュードとして思っていた“Future Listening”の方をタイトルにして良かった」

__『94-14 COVERS』には、セルフ・カバーも含めてニュー・レコーディングのカバーが12曲中6曲も収録されていますね。

「Billy Griffin「Hold Me Tighter In The Rain」のカバーと、自分の「Mars (94-14)」はずっとやりたいと思っていたものなんです。なんで、この機会にやることにしました。オープニングの「Last Century Modern~Technova (94-14)」は、INO hidefumiさんと話しているときに“カバーをやりたい”って言ってくれたんで、僕が“じゃあ「Technova」とかどう? その冒頭にちょっとだけ「Last Century Modern」のこの部分くっつかない?”ってアイディアを出したものですね。だから、アイディアは僕でパフォーマンスはINO hidefumiさん、という特殊な曲になってます」

__はい。

「で、この3曲をやったあと何か箸休め的なものが欲しくなったんで、自分の曲を全く違う解釈で、“ゲームクリエイターとかがつくったらこんな感じかな”ということで、ピコピコっとシンセだけで「Siesta (94-14)」をやってみました。「Last Century Modern (94-14)」もですね。この2曲はもともとアコースティックな曲だったんで、やってみて新鮮でした。あと「Private Eyes (94-14)」は、当時録って出していなかったものですね。パーカッションがない初出のバージョンなんですけど、結果として今回のためにとってあったんだなぁ、って思ってます。僕、いろんなバージョンをとってあるんですよ。結果的に『94-14 COVERS』は新レコーディングも入っていて、3枚の中では未来にも向かっている橋渡し的な内容になったと思いますね」

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PART 4

__既にリリースされている『94-14 REMIX』についても少し教えてください。『94-14 REMIX』は、「Technova」をサンプリングしたA Tribe Called Questのラスト・シングル「Find A Way」が聴き所の一つですね。

「いろんな人にリミックスしてもらったんですけど、「Find A Way」(1998)がダントツで好きなんですよ、申し訳ないんですけど。「Technova」をサンプリングした曲ということでリミックスとは違うんですけど、この『94-14 REMIX』に入れたかったですね」

__思い出深い曲なんですか?

「僕は、Deee-Liteのときにステージから落ちて怪我したおかげで、ボサノヴァやインド音楽にハマれたんですけど、それは、今から考えると決まっていたというか…縁だったのかなって思えます。僕、ラジオ番組をはじめたんですけど、A Tribe Called QuestのAliがたまたまRoy Ayersにくっついて来てたんで、ゲストで出てもらったんですよ。Q-Tipの方とはなんだかんだ会う機会があったんですけど、Aliとは20年以上会ってなかったんです。で、会ってなかった時期にA Tribe Called Questはラスト・シングルで「Find A Way」を出したり、こうしてまた会えたり、めぐりめぐって僕らには不思議な縁があるよねって、いろいろ話をしたんですよ。で、今回『94-14 REMIX』に「Find A Way」を入れることもできたわけですし」

__本当ですね。今回、自身の作品をまとめて聴きかえしてみていかがでしたか?

「そうですねえ。去年『LUCKY』を出した後に、今しかできないと思って過去を顧みる作業をやりましたけど、やりだしたら面白かったですね。やっぱり、全部僕がデザインやミックスをしているわけだし、聴くと当時のことも思い出すし。でも、他にもやらなきゃいけないことがいっぱいありますからね(笑)。優先順位で言うと、やっぱり今つくっている曲が一番楽しいですし。一つ言えるのは、いろいろと昔の曲を聴いて“何も変わってないな”って思いました。それは…ちょっと残念でもあったかな。進歩してないなって」

__そうですか。

「その時々でのこだわり、こだわり方は変化してるんですけどね。でも、20年前の曲だからってそんなに古くさくもなってないとも思いましたけど。それは、“そういう風につくってきたんだなぁ”って思いですかね」

__最後に、テイ・トウワさんの今後の活動目標について教えてください。

「クラブDJではない方面の、例えば今やっている“INTERSECT BY LEXUS-TOKYO”(レクサスが南青山で展開しているブランド体験施設)のためにサウンドプロデューサーとして選曲することとか、自分のキャリアをいかせるテイラーメイド的な分野の仕事は広げていきたいです。…お菓子とか飛行機のリミックスをしたいですね(笑)」

__9/8~9/28には、東京 丸の内の新丸ビル内 (marunouchi) HOUSEで、エキシビション形式の<TOWA TEI THINKS PRETTY THINGS>が開催されますね。

「2012年の『MACH 2012』に時にコラージュ作品の個展<ecollage>をたまたまやることができて、去年はレギュラーパーティーの<Motivation>を止めたりしてるんで…なんですかね、新譜を出したらリリース・パーティーとツアーをやってというスキームからは離れてきてるのかな、とは思います。もともと何かモノをつくることが好きなんで、モノづくりを続けてきたいです。今は新しい曲をつくるのが楽しくて、もう新作もつくっているところですよ」

Interview iLOUD


【リリース情報】

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TOWA TEI
94-14
(JPN) WARNER / WPCL-11965
2014/9/3 ON SALE
HMVでチェック

tracklist
01. Apple with Ringo Sheena
02. Radio with Yukihiro Takahashi & Tina Tamashiro
03. The Burning Plain with Yukihiro Takahashi & Kiko Mizuhara
04. Marvelous with Yurico
05. Mind Wall with Miho Hatori
06. A.O.R. with Lina Ohta
07. Taste of You with Taprikk Sweezee
08. Sometime Samurai with Kylie Minogue
09. Milky Way with Yukalicious, Joi Cardwell & Ryuichi Sakamoto
10. Latte & Macaron
11. Mars with Ikuko Harada ( Clammbon )
12. Butterfly with Ayumi Tanabe & Vivien Sessoms
13. Let Me Know with Chara
14. Happy with Vivien Sessoms, Bahamadia & Bebel Gilberto
15. Time After Time with Amel Larrieux & Vivien Sessoms
16. Luv Connection with Joi Cardwell & Vivien Sessoms
17. Technova with Bebel Gilberto
18. Amai Seikatsu with Maki Nomiya

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TOWA TEI
94-14 COVERS
(JPN) WARNER / WPCL-11966
2014/9/3 ON SALE
HMVでチェック

tracklist
01. Last Century Modern~Technova (94-14) with INO hidefumi [New Recordings!]
02. Hold Me Tighter In The Rain with Vivien Sessoms [New Recordings!]
03. Mars (94-14) with Aoi Teshima & Ikuko Harada [New Recordings!]
04. Siesta (94-14) [New Recordings!]
05. Get Myself Together with Taprikk Sweezee
06. Free with Rozz, Vivian Sessoms & Juiceman
07. My Sharona with Tycoon Tosh & Buffalo Daughter
08. Last Century Modern (94-14) [New Recordings!]
09. Funkin’ For Jamaica with Joanne, Les Nubians, Wizdom Life & Tom Browne
10. Forget Me Nots with Joi Cardwell & Vivien Sessoms
11. Batucada with Bebel Gilberto
12. Private Eyes (94-14) with Bebel Gilberto [New Recordings!]

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TOWA TEI
94-14 REMIX
(JPN) WARNER / WPCL-11900
NOW ON SALE
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tracklist
01. Funkin’ For Jamaica (Boris Dlugosch’s & Michi Lange’s Radio Edit)
02. Radio (YSST Intersect Mix)
03. Butterfly (Cornelius Remix)
04. Find A Way [by A Tribe Called Quest]
05. BMT (SP-1200 Remix)
06. Let Me Know (TT Remix)
07. Risk Some Soul (Kneedeep Remix)
08. Free (Richard Earnshaw Remix)
09. Luv Connection (Masters At Work Mix)
10. Happy (Morning Happiness)
11. Marvelous (Spring)
12. CHATR (Señor Coconut Remix)
13. Sound Museum (Haruomi Hosono Remix)

【イベント情報】

TOWA TEI THINKS PRETTY THINGS [EXHIBITIONS]
会期:2014.09.08 Mon ~ 2014.09.28 Sun
会場:(marunouchi) HOUSE

住所:東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸ビル7F

OPEN:11:00

CLOSE:28:00 Mon~Sat / 23:00 Sun & Holiday

入場料:無料


TOWA TEI 20TH ANNIV & 50TH BIRTH ★Party★
日程:2014.09.12 Fri

会場:(marunouchi) HOUSE

OPEN:20:00

CLOSE:24:00

入場料:無料

出演:TOWA TEI / SHINICHI OSAWA / INO hidefumi /
DJ HICO / DJ RUBY / Live: DORIAN

【オフィシャルサイト】
http://wmg.jp/towatei20th/
http://www.towatei.com/

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