Animal Collective「Guys Eyes」

Animal Collectiveが、「Guys Eyes」のビデオを公開しました。「Guys Eyes」は、2009年に高評価を獲得した9th・アルバム『Merriweather Post Pavilion』収録曲です。ビデオでは、サーフィンの映像が緻密にエディットされていて、不思議なハマリ感を出していますね。

The Dead Weather「Blue Blood Blues」

The Dead Weatherが、「Blue Blood Blues」のPVを公開しました。「Blue Blood Blues」は、The Dead Weatherが5/26に日本発売したセカンド・アルバム『Sea Of Cowards』のオープニング・トラックです。ビデオは、めちゃハイコントラストなライブ映像になっていますね。

2010年6/13-6/26の注目リリース

今週リリースのうち、アルバムのShinichi OsawaからDJ MASTERKEYまでは、7月1日発売のLOUD187号にてピックアップしております。そちらもよろしければチェックしてみてください。

ALBUMS

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Shinichi Osawa/ SO2
日本のダンスミュージック・シーンを代表するトップ・プロデューサー / DJによる、約3年ぶりのオリジナル・アルバム。エレクトロやテクノ、フォークロア・ミュージックなどの要素を融合させた、既存のジャンルや枠組みでは形容できない、全く新しいダンス・トラックを展開。日本盤のDELUXE EDITION(初回限定盤)は、大沢伸一と上村真俊によるDJユニット、OFF THE ROCKERによるミックスCDが付いた3枚組仕様。
6/30リリース(ELECTRIC)★★★★★★★★★★

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KYLIE/ Aphrodite
’87年のデビュー以来、世界的なポップ・スターとして活躍し続けるカイリー・ミノーグの通算11作目。エグゼクティブ・プロデューサーに、マドンナを手がけたスチュアート・プライス、ソングライター/プロデューサーにカルヴィン・ハリスやシザー・シスターズのジェイク・シアーズらを迎え、エレクトロ・ポップの中でも、最先端を行くサウンドを展開。
6/30リリース(POP)★★★★★★★★☆☆

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DELOREAN/ Subiza
従来のダンス・ロック系バンドとはひと味違う、エレクトロニック&ポップな音楽性で注目を浴びている、スペインのインディー・ポップ・バンドによる最新作。キャッチーでまばゆいメロディーと、バレアリック・ビーツに通じる、ストレートなダンス・ビートが詰まった意欲作。
6/30リリース(POP/ ELECTRIC)★★★★★★★☆☆☆

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DJ MASTERKEY/ From The Streets Back Again
20年以上の音楽キャリアを持ち、伝説的ユニットBUDDHA BRANDのメンバーとして知られる、ヒップホップ・シーンの重鎮DJによる最新ミックスCD。国内アーティストにフォーカスし、スタンダードなヒップホップから、ウェッサイ、R&Bまで、強力なキラー・チューン31曲をミックス。
6/30リリース(HIP HOP/ R&B)★★★★★★★☆☆☆

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SCISSOR SISTERS/ Night Work
過去2作のアルバムで全英チャート1位を獲得している、NY出身のダンス・ポップ・バンドによる最新作。共同プロデューサーにスチュアート・プライスを迎え、セクシーでグリッターな、彼らならではの最新鋭エレクトロニック・ディスコ・サウンドを展開。
6/30リリース(POP)★★★★★★★☆☆☆

ORBITAL「The Gun is Good」

Orbitalが、6/20にリリースした両A面ニューシングル「Don’t Stop Me / The Gun is Good」から、「The Gun is Good」のPVを公開しました。「The Gun is Good」では、近年のエレクトロ音色にも通じる、歪んだシンセ・トーンも飛び出します。名曲「Chime」から20年、まだまだOrbitalの感性は衰えていません。

ちなみに「Don’t Stop Me / The Gun is Good」の限定アナログ盤は6/27発売ということです。

Paul McCartneyが、YouTubeでライブをストリーミング放送

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Paul McCartneyが、UK時間6/27午後8:30(日本時間6/28午前4:30)から、ロンドンのハイド・パークで行うライブの模様を、YouTubeのBornHIVFreeチャンネルでストリーミング放送すると発表しました。このウェブキャストは、“Hard Rock Calling” フェスティバルから実施されるもので、その後1か月間、録画でも提供されるということです。

Born HIV Freeキャンペーンは、“2015年までにHIVを持って生まれてくる子供をなくそう”という活動で、Amy Winehouse、U2、Jean-Paul Gaultierらの協力も得ているもの。今回のウェブキャストは、Paulの“Up and Coming Tour”における、UK、アイルランド開催分のエンディングを飾るとともに、母体から感染するHIV根絶へ向けての努力を、人々に訴えかけるものとなることでしょう。

Beck/Record Club「Tiny Daggers」

Record Club: INXS “Tiny Daggers” from Beck Hansen on Vimeo.

Beckが中心となって、あるアルバムをすべてカバーしてしまおうというRecord Club企画の第4弾から、「Tiny Daggers」が公開されました。今回の題材に選ばれているのは、INXSの『Kick』(1987)。「Tiny Daggers」は、そこから10曲目のカバーになりますね。ボーカルをとっているのは、LiarsのAngus Andrew。ジャム・バンドさながらのトライバルなビートと、ペダルエフェクターから生まれるサウンドが印象的なこのカバー、12分以上という、見ごたえたっぷりなものとなっています。

SUMMER SONIC 2010 第14弾出演アーティスト発表

SUMMER SONIC 2010が第14弾出演アーティストを発表しました。今回新たに追加されたのは、以下の通りです。

JASMINE/ JAY’ED/ lecca/ te’
coldrain (OPENING ACT)/ [Champagne] (OPENING ACT)/ Rake (OPENING ACT)/ ビッグポルノ

【Riverside Garden】※TOKYO ONLY
星野 源/おおはた雄一 guest:原田郁子/ sighboat/ Dachambo/ あらかじめ決められた恋人たちへ
半野喜弘/ suzumoku/ 加護亜依~Jazz the First Door~/ 植村花菜/ ナオト・インティライミ

各ステージのオープニング・アクトと、東京会場のキャンプ・エリアに隣接するステージ、Riverside Gardenの出演者が一挙に発表されました。そのほか、SUMMER SONIC 2010各会場の出演者やステージ割り、全体の詳細は、コチラをご覧ください。

MEG シンプルで温かみのある音を紡ぎ上げた、 転機のニュー・アルバム

モデル、自身のブランドCAROLINA GLASERのデザイナーとして活躍し、ファッション・フィールドでも注目を集めているポップ・シンガー、MEG。シングル『OK』(2007)を発表して以来、エレクトロ・ポップ・アイコンとして人気を博す彼女は、数々のクラブ・ミュージック・クリエイターと関わり深いことでも広く知られている。

ここにご紹介する『MAVERICK』は、そんなMEGが約1年ぶりに完成させたフル・アルバム。中田ヤスタカ(capsule)が楽曲プロデュースを手がけた話題盤だ。6作目のフル・アルバム『BEAUTIFUL』(2006)で見せた、ジャンルレスなスタイルを加速させ、ピアノやストリングス、生ドラムのサウンドと、レトロなシンセが融合した、新感覚のポップ・チューンが楽しめる本作。ミドル〜スロー・テンポの、メロディアスな楽曲が主体となっている点も注目要素だ。

エレクトロ・ポップ・アイコンから次のステップへと羽ばたいた、MEGの最新モードが詰まった『MAVERICK』。その制作背景について、本人に話を聞いた。


【“型にハマらない自分”を宣言したアルバム】

ーー前回のインタビューでは、“『BEAUTIFUL』を完成させた時には、やりきった感があった”と話していましたよね。それを経て、ニュー・アルバムの制作にはどんな気持ちで臨んだのでしょうか?

「バンド編成でライブをやるようになって、ライブでは自分の音楽をすごく伝えやすくなったなぁって感じたので、それもあって、ニュー・アルバムでは、時間をかけて歌詞を書きたいと思いました。その時に伝えたい音楽を、ていねいにつくりたかったんです」

ーー前作よりステップアップした作品をつくるために、どんなことを意識しましたか?

「エレクトロとか、クラブで聴いて耳障りがいい曲って、言葉のリズムを重視して歌詞を組み立てていますけど、このアルバムでは、ただリズムに乗っているだけじゃない、書きたいことを綴った歌詞にしたいと思ったんです。それを、ライブでも歌いたいっていう気持ちがありましたし」

ーーダンサブルな要素よりも、MEGさん自身のメッセージが重要だったんですね。

「そうですね。楽器を取り入れてライブをやってみて、ゆっくりした曲を歌うのも面白いなって思ったし。リズムだけじゃなく、きちんと歌を伝えたいと思うようになったんです。だから今作でも、わりとバラード的なものや、遅いテンポの楽曲の方が、歌詞を書きやすかったですね」

ーー実際の制作過程はいかがでしたか?

「結局、制作のスタートが押してしまって、1ヶ月ないぐらいで10曲つくらなきゃいけなくなっちゃったので、大変でした。今回は、言葉遊びみたいな歌詞じゃなかったし、一回書いてから一晩寝かせないと、ニュアンスを弱めたり強めたりっていう部分が見直せないじゃないですか。でもそんな時間も無く、歌を録りながら間に合わせることに“これでいいのかな?”って疑問に思ったりもして。そんな、“何だろう、このモヤモヤ感は?”っていう思いを表したのが、タイトル曲の「MAVERICK」なんです」

ーーそれは、思いもよりませんでした。先日のライブでMEGさんは、“「MAVERICK」は、アルバムの中で一番気に入っている曲”と話していましたよね?

「そう。タイトルに合うテーマのものを書けたから、安心したんですよ(笑)」

ーーこの歌詞をどう解釈したらいいんだろう? って思っていましたよ…。

「あははは(笑)。やっぱりアルバムを出すなら、自分のペースで制作したいんですよね。なので…型にハマらないっていう意味で、アルバム・タイトルも『MAVERICK』にしたんです。来年からの展開も含めて、今見直して組み立ててる最中で。メジャー・レーベルでの活動自体も」

ーーえぇっ!? それは、衝撃の展開ですね。

「型にハマるってことは、MEGにとって、とても退屈で窮屈なんですよ。発散したくて音楽をつくっているわけじゃないし、楽しんでもらえる人たちに、一番いい形で作品を届けてあげたいって思って。そこに、規制が出てくるとね…。メジャーでは、型にハマったこともやってみようとしたけど、自分には向いてなかったなって思うんです」

【アコースティック色を強めた、次なる音楽スタイル】

ーー中田(ヤスタカ)さんとの制作は、今回はどんな風に進めたのですか?

「今回は初めて、デモが中田くんの弾き語りで上がってきたんです。今までのデモには、実際CDに収録されるトラックとあまり変わらないものが多かったんですけど、今回はリズムとエレピ、仮歌くらいしか入っていなかったんです。そこから、最終的に楽曲がどういう風に変わっていくかわからなかったし、シンプルなオケから歌詞のイメージをふくらませなきゃいけなかったから、パターン化しちゃわないように考えたり。さらにややこしいパズルをやっているみたいな感覚になりましたね」

ーーそうだったんですね。その他にも、何か新しいアプローチはありましたか?

「今回は中田くんの中に、“いつもの手は使わない”ってルールがあったような気がするんですよ。いつもだったら、ビーって鳴らすような箇所をしなかったり、もっとドンドン、リズムが来るようなところを、あえてハズしているというか。禁止事項を彼の中で決めてつくった、コンセプト・アルバムみたいな感じがします。違うかもしれないけど(笑)」

ーーたしかに、アルバム全体を通して温かい音になっているし、ミドル / スロー・テンポの楽曲も多かったので、中田さんの、アップデートされたモードが出ているのかな? と思いましたね。

「って、中田くんも言ってましたよ(笑)」

ーーそうでしたか(笑)。MEGさん自身も、エレクトロ・ポップのアイコン的存在から、脱皮した印象を受けました。

「ありがとうございます。でも逆に、ジャンルが何かわからなくなったかもしれないですね」

ーーストリングスなど、アコースティックな音を多用していたり、シンセもゴリゴリしたサウンドではなく、レトロな音色になっていますよね。

「ちょっと懐かしい感じがしますよね」

ーー「OUR SPACE」は、ヨーロッパの民族音楽みたいな雰囲気も持っていて、かなり斬新だと思いました。

「ねー(笑)。紙一重なんですけど、面白いですよね。それぐらい思い切りの良さがある曲だと思います」

ーーMEGさん的に、新鮮だった曲は他にありますか?

「「MOSHIMO」とか」

ーーあぁー、シンプルなエレピのリフと、生音っぽいドラムが印象的な曲ですね。こういった斬新な楽曲は、作詞や歌も大変でしたか?

「面白い方向へ持っていくのか、キュンと切ないものにするべきか、最初はわからなかったですね。何を乗せても歌詞の意味が前に出てきちゃうし、シンプルなメロディーなので難しかったです」

ーーところで、レコーディングはどんな感じだったんですか?

「いつも通り、中田くんと私以外は誰も来ず。ボーカル・ブースから出たら誰もいません、みたいな感じでした(笑)」

ーーやっぱりそうでしたか(笑)。中田さんから、何かアドバイスはあったんですか?

「歌い方の指示はありましたよ。中田くんは、歌心のあるエディットをする人なので、“ここは人の力だと、ひと息で歌うのは絶対無理だけど、後でキレイに処理するから、分けて歌ってつなげよう”とか、これまでの制作よりもディレクションが多かったですね」

ーー歌詞には、これまでと違って“大人の女性の恋愛観”が描かれているように感じたんですが、いかがでしょうか?

「やっぱり、書いていてしっくりくる言葉じゃないと、“これ、みんなに伝わるのかな?”って思うので。その時の状況をリアルに残せたらOK、みたいなところはありましたね」

ーー歌詞には、これまで以上に、リアルなMEGさんが表れているんですね。

「そういう歌詞が書きたかったんです。ここ2年間ぐらいは、リズムに乗せてキャラクターを演じるのが面白かったんですけど、もうちょっと、中身の部分を残していきたいなって思い始めて」

ーーなるほど。『MAVERICK』は、シンガー / アーティストとして、パーソナルな部分を深く掘り下げたアルバムなんですね。

「だからこそ、慎重に言葉を選びたかったし、時間もほしかったんですよ」

ーーその変化は、アルバムのアートワークにも表れているんでしょうか?

「そうですね。エレクトロ・ポップみたいなものにも飽きてきたし、年相応の生々しさをアートワークでも表現したいなと思ったんです」

ーー初回限定盤は、24ページのブックレット写真集や、ポストカード、ステッカーが付いた、BOXセット仕様になっているそうですね。パッケージに対するこだわりも、さすがMEGさんだと思いました。

「CDを買った時って、家に持って帰って開ける瞬間が楽しいじゃないですか。それは大事だと思うので、できるだけ付録をいっぱい入れたいと思ったんです。やっぱり、きちんとしたものをつくって届けたいですからね」

ーーMEGさんは、CD制作だけでなく、ライブなどを含めた活動全てに対して、常にアイディアが豊富ですよね。

「私は、別にすごく歌が上手いわけでもないし、面白いことが言えるわけでもないから、MEGっていう存在自体が、みんなに面白いプロジェクトだって思ってもらえるキャラクターとして、常に何かを発信していけたらいいなぁって思っているんです。MEGというキャラクターには、退屈しないことを何でもやらせたいんですよね」

ーー繰り返しにならないように、常に新しいことを提供するのは簡単ではないので、それを実現できているのはスゴイと思いますよ。

「私は常に、自分のことを気になったくれた人を、ふるいにかけているんだと思います(笑)。“これは好きだけど、あれは好きじゃない”とか。“プロデューサーは中田くんでいいんじゃない?”って周りが言ってくれても、ハドーケン! と一緒にやってみたり(笑)。ファンのみんなは、よくついて来てくれるなぁ、マジでありがとうって思いますね」

ーー今後新たにチャレンジしたいことは、何かありますか?

「カワイイ曲を書くのは楽しいんですけど、自分じゃない人に歌ってほしいなぁってゆう歌詞が生まれることもあるんですよ。だから、他のアーティストに歌詞提供をしてみたいですね」

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Gorillaz「On Melancholy Hill」

Gorillazが、「On Melancholy Hill」のPVを公開しました。「On Melancholy Hill」は、3/3に日本発売された最新アルバム『Plastic Beach』から、二枚目のシングルカットです。Damon Albarnのボーカルと、島感満点のバッキング・トラックが心地よいですね。

SHANTI インタビュー

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アメリカ人と日本人の両親を持ち、幼い頃から音楽に親しんできたバイリンガル・シンガー、SHANTI。ジャズ・ミュージシャンとのセッションや、自らギター演奏を披露するアコースティック・ライブを精力的に行う一方で、CM音楽や、J-POPアーティストのバック・コーラスに参加し、活躍を見せてきた実力派だ。ボーカルのみならず、類い稀なソングライティング・センスでも、注目を集めている。

ここにご紹介する『BORN TO SING』は、そんなSHANTIのメジャー・デビュー・アルバム。多彩なミュージシャンを迎え、アコースティック・ギターを主軸に、生楽器の温かみあるサウンドと、セッションならではのグルーヴが追求された意欲作だ。ここでは、時にメロウに、時に情熱的に響きわたる、彼女の表情豊かな歌声を堪能できる。また、ボーナス・トラックとして、吉澤はじめとコラボレートした「Curtain Call」が収録されている点も注目だ。

『BORN TO SING』の制作風景に迫るべく、SHANTI本人にインタビューを行った。


ーーSHANTIさんはこれまでに、ジャズ・シーンからJ-POPフィールドまで、様々な方面で活動をしてきましたが、ルーツにはどんな音楽があるのでしょうか?

「アメリカに住んでいるおじいちゃんは、ジャズ・ピアノを弾いていたり、父はドラマーだったりと、音楽が血に入っているんですよね。親戚にもミュージシャンが多くて、オペラ歌手や楽器のプレイヤー、あとはミュージカルに出ている人もいます。だから、シンガーになったのも自然なことで、“このジャンルのアーティストとの出会いが衝撃的で!”とか、そういうものってあまり無いんですよ」

ーー音楽が身近にあるのは、当たり前のことだったんですね。このたびリリースされた、メジャー・ファースト・アルバム『BORN TO SING』は、どんなテーマの作品でしょうか?

「とにかく、“自分の声を伝えたい”というのが一番でした。今まで、いろんなスタイルの音楽をやってきたから、今回のアルバムにも、ひとつのジャンルにとどまらない、様々なスタイルの曲が収められています。私は日本在住の洋楽アーティストというか、自分のバックグランドが二つあるということもあるわけですが、スタイルは多様でありながらも、最終的には、“その楽曲や、メロディーが望む歌い方でいいんだ”って思ったんです。素直に表現することが、アルバムのテーマでしたね」

ーーそんな本作では、生楽器を主体とした、温かみのある音が特徴的ですね。

「『BORN TO SING』の音は、ジャンルで言うよりも、オーガニックなサウンドと言った方が、理解しやすいかもしれないですね。生楽器の音づくりも、大事にした部分なんです。ライブの良いところって、自分の肌で、音の周波数を直に感じられるところだと思うんですよ。それをできるだけリアルに、CDでも残したいなと思いました」

ーーレコーディングは、どんな感じで進めたのですか?

「シンプルに、“この人と一緒に演奏したい”って思うミュージシャン達を集めて、一斉にレコーディングしました。譜面に、一人一人のパートを書いて渡したりはせず、録る前にリハーサルをして、その中で“ギターはこのリフで”、“ドラムのアプローチはもっとこうで…”とか、アイディアを出し合って微調整をしましたね。各ミュージシャンが持っている色を、つぶしたくなかったんですよ」

ーーその点では、各楽器の個性と、セッションならではの躍動感が、際立っていると感じました。また、アコースティック・ギターを中心に構成された楽曲もありますね。

「ここ3年ぐらい、木原(良輔)さん、私、西山(史翁)さんで、ギター・トリオ形式でライブをやっているんですよ。その中で生まれたサウンドをもとに、ドラムやベースを入れてアレンジを発展させた曲ですね。これまでライブでやってきた積み重ねが、表現できたと思います」

ーーたくさんのミュージシャンから良い要素を引き出す、SHANTIさんならではのコツってありますか?

「そうですね…。実は、ミュージシャンどうしが、たくさんおしゃべりしたり、食事を一緒にするっていうのが、すごく大事だと思います。ミュージシャンって、それぞれが個々のアーティストじゃないですか。みんな“自分時間”で生きているので、一緒にいても居心地にズレがあるんですよ。それは、私が自宅に招いて食事をつくったり、お茶を飲みながら話していくことで、お互い気持ちがほぐれて解消されるんです。そうやってリラックスした後に、何も考えず演奏をすると、すごく良いものが出てくるんですよね」

ーーそれは、意外なコツですね。作曲のアイディアは、どのように生まれるのでしょうか?

「歌詞とメロディーが同時に、頭の中に聞こえてくることが多いです。何日も何日も、4〜8小節ぐらいのメロディーが鳴って、頭から離れなくなるんですよね。『BORN TO SING』で、他のミュージシャンと共作している曲も、メロディーは基本的に私が書いたんですけど、ミュージシャンの人たちがセッションで弾いていた、コードのニュアンスや雰囲気の中に、情景みたいに言葉が見えてきたんですよ。すべてが自然発生なんです」

ーーセッションやライブで生まれる一瞬一瞬を、切り取って曲にできるのは、SHANTIさん自身が、歌と楽器演奏という双方のフィーリングをわかっているからなんでしょうか?

「楽器が弾けることで、ミュージシャンとつながりやすいっていうのはありますね。でも、ジャズ・ピアニストの演奏と、私の演奏では雲泥の差があるので(笑)。音楽の基本的な理論や、コードのつくり、スケールについても学びましたけど、理論に基づいて曲づくりしているわけではないんですよ。どちらかと言うと私は、アンテナを常に張り巡らせて、いろんなものを吸収しながら音楽をつくるタイプなんです。街には騒音もいっぱいあるし、嫌なものを吸収しちゃうこともあるんですけど、そういうグチャグチャしている、いらない要素が、曲づくりに入ると削ぎ落とされていくんですよね」

ーーところで、『BORN TO SING』には、カバー曲も多数収録されていますね。これらのアレンジでは、どんなところにこだわりましたか?

「ジャズのアーティストって、みんな昔のスタンダード・ナンバーをカバーしているじゃないですか。でも大体は声が違うだけで、わりとアレンジの似たものが多いんですよね。それじゃつまらないと思って。昔の曲をリスペクトする気持ちと、今のリスナーが聴いても良いなって思えるようなアレンジ、その両方を形にしようと思いました」

ーーたしかに、まるで全く新しい楽曲のように聞こえる、挑戦的なアレンジになっていますね。

「ギター・トリオで演奏していると、ドラムやベースがいないから、全体的に単調になりやすいんですよ。だから、小編成でどこまでアレンジできるかも、課題の一つでしたね。ジャンゴ・ラインハルトっていう、ロマ・ミュージックのギタリストがいるんですけど、彼の曲にあるザクザク感やスピード感が、面白いなと思って。そのスタイルを取り入れてみたり、いろんな表情を上手く演出できるアレンジを選んだ感じかな」

ーー最後に、今後の活動に対する思いを聞かせてください。

「アルバムを聴いて、ライブに来てほしいっていう気持ちが一番大きいですね。音源で表現した温かさをライブでも伝えて、お客さんとの関係性を育てていきたいと思っています」

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