坂本美雨 現代を生きる女性に贈る、人間の内面に迫るファンタジー・ストーリー

1997年に、Ryuichi Sakamoto featuring Sister M名義で「The Other Side of Love」でデビュー、その後はソロ・シンガーとして活躍を見せている、坂本美雨。これまでに4作のフル・アルバムを発表、ROVOの勝井祐二、益子樹や、半野喜弘、ミト(クラムボン)、藤戸じゅにあ(ザ・ジェッジジョンソン)など、気鋭ミュージシャンとのコラボレーションを通じ、独自の世界観を追求してきた個性派だ。彼女は音楽活動のほか、ジュエリー・ブランドのプロデュースや、詩画集の発表、舞台への出演などでも、その芸術的感性を発揮している。

ここにご紹介する『PHANTOM girl』は、そんな坂本美雨が、約1年半ぶりに発表したニュー・アルバム。NYを拠点に活動する中国人クリエイター、デイブ・リアンのソロ・プロジェクト、ザ・シャンハイ・レストレーション・プロジェクトをプロデューサーに迎え、オリエンタルかつ繊細なポップ・エレクトロニカで、新境地を開拓した意欲作だ。現代を生きる女性に目を向けた幻想的なストーリーは、リスナーの心を揺さぶる不思議なパワーを持っている。

新作『PHANTOM girl』に描き出したイメージを探るべく、坂本美雨に対面インタビューを試みた。


ーーニュー・アルバムは、ザ・シャンハイ・レストレーション・プロジェクトのデイブ(・リアン)と一緒に制作していますね。そこに至る経緯を教えてください。

「前作『Zoy』を制作した後に、次は全くお互いを知らないプロデューサーと一緒にやらないと、アルバムをつくることができないなと感じていて。そんな時に、デイブがプロデュースしたダイ・ジョンストンのアルバムを聴いて、“彼は女の子の声を扱うのが上手いなぁ、すごく声を大事にしているな”と思ったんです。それで、MySpaceからメッセージを送ったのがきっかけですね」

ーー“全く別の人とやらないと、新作がつくれない”と感じたのは、なぜなんでしょうか?

「まず、明るいアルバムをつくりたいと思ったんです。『Zoy』をつくった後、自分の引き出しが空っぽになってしまって、アイディアやモチベーションが無くなってしまったんです。ずっと歌い続けたいと思っていたけど、“果たして、それに私は値しているのかな?”とか、いろいろと考えてしまって。でもその結果、“自分の声で、人の役に立つことや、人の気持ちを少し幸せにすることを、音楽を通じてやりたい”と改めて確信したんです。そのためには、自分にとって心地よい音をつくっているだけでは、いけないと思い、あえてそれまでの自分を全く知らない人と、今までの枠を飛び出して、新しいことにチャレンジしたいと思いました」

ーー今作は、美雨さんにとって、ターニング・ポイントとなったアルバムなんですね。タイトルの『PHANTOM girl』には、どんな意味が込められているのでしょうか?

「このアルバムは、私と同世代の女の子が送る一日を想像して、サウンド・トラック的な組み立て方でつくったものなんです。そこから歌詞を書いていくうちに、“その女の子の本性は、現実世界ではなく別の場所にあるんじゃないか?”っていうイメージが沸いてきたんです。毎日通勤電車に揺られ、まじめに仕事をしている一人一人の内面には、もっと衝動的で、時に暴力的で、時にすごく乙女で、暴れ出したり踊り出すような、本能的なものがあるんじゃないかと思って。そこから生まれた、“主人公の女の子が何かの拍子に豹変して、好きな男の子のところへワーっと飛んでいっちゃう”っていう物語を、アートディレクターの森本千絵ちゃんと話していたら、彼女が“かいじゅう”みたいなキャラクターを書いてくれたんです。それを見て、“ファントムガール”って言葉の響きがピンときたんです」

ーー“社会に揉まれている女の子が、自分を解放する”というテーマは、これまで美雨さんが取り上げてきたテーマとは違ったものですよね?

「そうですね。今までは、イマジネーションの方向が内側を向いていたんですけど、今作では、もう一歩先を行きたくなったんです。具体的に、都会に住んでいる女の子をイメージして曲をつくったのは初めてでしたけど、その中には自分も含まれています。やっぱり、しんどいですよね、女の子が都会で生きていくのは。将来も不安だし、結婚もしたいし。そういう気持ちは、私もみんなと変わらないんです。私の中では音楽も、ただ楽しんでやっているだけじゃないって思っていて。このアルバムで、大変な時代に生きている同世代の女の子が送る毎日の中で、少しでも役に立ちたいという気持ちがあるんです。マインドだけでも、音楽の力で解き放つことができれば」

ーーなるほど。トラックは、デイブをプロデューサーに迎えたことで、非常にエレクトリックなものとなっていますね。これも、新たな挑戦だったのではないでしょうか。

「そうですね。彼と一緒にやるにあたり、全部打ち込みでトラックをつくることは、最初からイメージしていました。それに加え、自分のボーカルを一つの楽器として、いろんな使い方を試してみたいってことも、デイブに話したんです。完全な打ち込みトラックと自分の声が重なると、とても新鮮で、発見がいっぱいありましたね」

ーー具体的には、どんな発見がありましたか?

「例えば、叫び声とか、“あっ”とか、“うっ”っていう声を素材として録音しておいて、それを切ってリズムとして使ったり、メロディーを歌うんじゃなく、“ドレミファソラシド”の声を音階ごとに別々に録っておいて切り貼りしたりとか、声で遊んでみました。そういうアイディアは自分だけでは出てこないので、新たな発見でしたね」

ーーアルバムでは、エレクトロニックなサウンドと同時に、人間の声が秘めた不思議なパワーや、有機的な感情も表現していますよね。

「このアルバムでは、エレクトロニックなものと、体そのものである歌を、ちゃんと共存させたいという気持ちがあったんです。歌えば歌うほど、“歌は呼吸そのもので、その人の体そのものなんだな”って実感するようになって。肉体の持つ力というものは、何事にも代え難いと思いましたね」

ーーまた、アルバムの途中に差し込まれているインタールードも、作品の世界観を表す上でとても重要だと感じました。

「アルバム全体をサウンド・ストーリーのように組み立てたので、途中に挟みたいものをデイブと二人で映像的に考えて、声で形にしたんです。あと、「Our Home」や「A Girl’s Waltz」みたいな歌詞のない曲も、インストっていうつもりではつくっていなくて、あれも歌ですね。シガー・ロスの曲とかでも、そこにあるのは歌詞というよりは“シガー・ロス語”じゃないですか。そういう、言葉として意味はなくても伝わるものにしたかったんです。声って呼吸そのものなので、人間の呼吸が持っている力や、“歌詞よりも膨らませられる何か”に、チャレンジしてみた楽曲ですね」

ーーたしかに、歌詞で入ってくる情報が削ぎ落とされている分、聴いた時にすごく立体的な映像やイメージが頭に浮かぶし、イマジネーションの幅も大きくなるなと思いました。ところで、本作でリスナーに一番感じ取ってほしいのは、どんなことですか?

「イマジネーションです。それから、衝動とか、本能とかを感じる瞬間。自分の肉体がちゃんとあって、社会もあって、その上で生まれるイマジネーションやファンタジーって、ある意味現実社会よりもリアルだと思うんです。人間の中身であるイマジネーションという宇宙が無かったら、その人は生きられないと思っているんです。アルバムのミュージック・ビデオに登場するファントムが、その想像力の結晶であり、象徴でもあるので、ぜひそれも見てほしいです」

ーー『PHANTOM girl』をステップに、今後描いているビジョンはありますか?

「音楽とダンスなどを取り入れた、舞台作品にも力を入れていきたいです。歌と同じように、舞台空間で発揮される人間の力も信じているので、肉体表現という世界の中で、音楽をもっと突き詰めていきたいですね」

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GorillazのライブをMTVで視聴

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4/30に、ロンドンのRoundhouseからライブ・ハイライトをストリーミング放送したGorillaz。その映像を、現在UKのMTVでオンデマンド視聴できます。視聴できるのは、「Welcome to the World of the Plastic Beach」「Broken」「Empire Ants」「White Flag」「Superfast Jellyfish」「To Binge」「Cloud of Unknowing」の7曲。ゲスト陣のパフォーマンスも含めて、Gorillazの最新型ライブが楽しめるので、ぜひチェックしてみてください。曲は、MTVページの中段にあるリストから選べます。

METAMORPHOSE 2010、出演アーティスト第3弾を発表(2010年9月)

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2010年9月4日に、静岡県伊豆・自転車の国サイクルスポーツセンターにて開催される<METAMORPHOSE 2010>。今年で10周年を迎えるこちらの野外フェスの、出演アーティスト第3弾が発表されました。今回発表されたのは、以下の8組です。

Manuel Gottsching, the man behind E2-E4 and head of legendary bands Ash Ra Tempel & Ashra in concert at Metamorphose performing his famous composition INVENTIONS FOR ELECTRIC GUITAR with 3 guitar friends.
65daysofstatic
七尾旅人
RYOTA NOZAKI (JAZZTRONIK)
EYE
Calm
KIHIRA NAOKI
DJ Q’HEY

2006年のE2-E4世界初演ライブ、そして一昨年のAshraでのライブも大きな評判を呼んだManuel Göttschingが、GONGやSYSTEM7での活動で知られるSteve Hillageをはじめとする3人のギタリストを招き、Ash Ra Tempelが1975年に発表した『Inventions For Electric Guitar』を再現することが決定しました。そのほか、現在発売中のLOUD186号でもプッシュしているインスト・ポストロック・バンド65daysofstaticや、ジャンルを越えて支持を集めている七尾旅人、2年ぶりの出演となるRYOTA NOZAKI (JAZZTRONIK)、CALM、EYE、DJ Q’HEY、KIHIRA NAOKIといった常連組まで、10周年にふさわしい、豪華な顔ぶれとなっています。前売りチケット発売は、7/1より一般発売開始。そのほか、イベントの詳細は続きからチェックしてみてください。

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Coheed and Cambria「Here We Are Juggernaut」

Coheed and Cambriaが、「Here We Are Juggernaut」のPVを公開しました。「Here We Are Juggernaut」は、Coheed and Cambriaが4/7に日本発売した5thアルバム『Year Of The Black Rainbow』からのファースト・シングルです。彼らは、サマソニでの来日も決まっているので、この機会にチェックしてみてはいかがでしょうか。

2010年5/9-5/15の注目リリース

今週リリースのうち、アルバムのELLEN ALLIENまでは、現在発売中のLOUD185号にて、アルバムのarvin homa ayaと、シングルのPragueは5月31日発売のLOUD186号にてピックアップしております。そちらもよろしければチェックしてみてください。

ALBUMS

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ザ・ジェッジジョンソン/ SOLID BREAKS UPPER
’90年代後半より活動する3ピース・ダンスロック・バンドによる、1年3ヶ月ぶりのニュー・アルバム。自身のバックグラウンドでもある、テクノ、エレクトロといったダンス・ミュージックの要素を突き詰め、繊細なメロディーと人間味あふれる感情を浮き彫りにした意欲作。
5/12リリース(ROCK/ ELECTRIC)★★★★★★★★☆☆

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LCD SOUNDSYSTEM/ This Is Happening
ジェームス・マーフィー(DFA)率いる、2000年代型ディスコ・パンクの先鞭をつけた人気プロジェクトの3rdアルバム。ディスコで、パンクで、ノーウェイブな音楽性をさらに極め、リスナーの耳をグルーヴィーに刺激する、ディープかつスタイリッシュな音世界を展開。
5/12リリース(ROCK/ DISCO)★★★★★★★★☆☆

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ELLEN ALLIEN/ Dust
設立10周年を迎えるテクノ・レーベル、Bpitch Controlのオーナーであり、ワールドワイドに活躍する女性DJ / プロデューサーの5thソロ・アルバム。自身のボーカルは生楽器を取り入れた、ミニマルなトーンのポップ / エレクトロニカや、フロア・ライクなテクノを収録。
5/12リリース(TECHNO/ POP)★★★★★★★☆☆☆

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arvin homa aya/ no.5
Jazztronikや須永辰緒らの作品にフィーチャーされ注目を浴びている、若手女性シンガーの最新作。STUDIO APARTMENTの阿部登を共同プロデューサーに迎え、エモーショナルなハウスに乗せて、伸びやかな歌声を披露。DAISHI DANCEによるリミックスを収録。
5/12リリース(HOUSE)★★★★★★★☆☆☆

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JAMIE LIDELL/ Compass
テクノ時代を経て、現在はシンガーとして活動するWarp所属のアーティスト。最新作では、プロデューサーにBeckとGrizzly Bearのクリス・テイラーを招き、変幻自在で無駄のないサウンドに乗せて、ファンキーかつセクシーな歌声を披露。
5/12リリース(SOUL)★★★★★★★★☆☆

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DIZZEE RASCAL/ Tongue N’ Cheek
ヒップホップやグライムをベースとしたスタイルで人気を博し、近年はエレクトロ・ハウスにも接近しているMC / クリエイター。4thアルバムでは、バウンシーなビートとブリーピーなエレクトロ、ストリート感満点のラップが融合したハイブリッドな作品。
5/12リリース(HIP HOP / ELECTRO)★★★★★★★★☆☆

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KE$HA/ Animal
“ポスト・レディー・ガガ”と目され、全米で注目を浴びる、新星ポップ・シンガーのデビュー・アルバム。キャッチーなエレクトロ・ポップ&オートチューン・ボーカルを中心に、ラップからバラードまで幅広い楽曲を展開。全米チャートでは1位を記録。
5/12リリース(POP)★★★★★★☆☆☆☆

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HOLY FUCK/ Latin
M.I.A.の北米ツアーでオープニング・アクトを務め注目を浴びた、カナダの4ピース・インスト・ロック・バンドによる3rdアルバム。Battlesを思わせるマス・ロックから、ダンサブルなナンバー、高速エレクトロなど、実験的なサウンドを展開。
5/11リリース(ROCK/ EXPERIMENTAL)★★★★★★☆☆☆☆

SINGLES

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Prague/ Distort
’09年にメジャー・デビューを果たした3ピース・ロック・バンドの3rdシングル。生バンドらしいアンサンブルにこだわった、ダンサブルな表題曲に加え、カップリングには、Mummy-D、DJ TASAKA、DEXPISTOLSによるリミックスを収録。
5/12リリース(ROCK)★★★★★★★☆☆☆

iLOUDにBUZZコーナー開設!

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LOUD本誌で、’94年の創刊当時から続いているBUZZコーナーが、ついにiLOUDにも登場しました!
http://buzz.iloud.jp/

BUZZコーナーは、トップDJが実際にプレイしているディスク、気になる曲を毎月レビューしている人気レギュラー・コーナー。クラブ現場でかかっているキラー・チューンが手軽にチェックできることから、DJ/クラブ・ミュージック・ファンの皆様に親しまれてきました。

現在、本誌では毎月1ページという分量でお届けしております関係で、レビュアーは10名ほどに限られていますが、iLOUDには誌面の制約がありませんので、今後レビュアーも増強していく予定です。そのレビュー・リクエストでは、現在開催中の“DJ50/50”投票結果をもとにいたしますので、皆様“DJ50/50”にご投票のほど、よろしくお願いいたします。

なお、iLOUDのBUZZコーナーには、6月から、よりリアルタイムなレビューを掲載していく予定です。また、レビュアーの方々に、ブログとして利用していただく計画もございますので、お楽しみに!

最新のシュランツ / ハード・テクノを楽しめるパーティー<Adrenaline>のチケットをプレゼント!

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“Hard Techno New Waves”をコンセプトとした、現在国内で唯一のシュランツ系ハード・テクノ・パーティー、<Adrenaline (アドレナリン)>が、2010年5月21日に渋谷・amate-raxiで開催されることになりました。今回のAdrenalineには、ドイツの名門レーベルABSTRACTのボスであるKaozと、今年4月に行われたドイツの大型屋内レイヴ<MAYDAY>に出演したジャーマン・テクノ・シーン要注目人物、Eweがゲスト出演。さらに、シュランツ・セットを引っさげて、RYUKYUDISKOのTETSUSHI HIROYAMAの参戦も急遽決定。ヒートアップ間違いなしのラインナップとなっています。

そんなAdrenalineのチケットを、抽選で4名様にプレゼントします! 開催概要とプレゼントの応募方法は、続きをご覧ください。

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GAN-BAN NIGHT SPECIALにPopofら新鋭アクトが出演(2010年6月)

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<GAN-BAN NIGHT SPECIAL>が2010年6月18日に東京WOMB、6月19日に大阪ONZIEMで開催決定。テクノ・シーンで注目を浴びるPopof、Noob、Julian Jeweilが出演することになりました。「Elektric Circus」や「Alcoolic」といったクラブ・ヒット・トラックで脚光を浴び、昨年は<WIRE09>への出演も果たしているフランスのプロデューサー、Popopf。Richie HawtinやRicardo Villalobosから、Erol AlkanやBoys Noizeまで幅広いDJがプレイし、Tiga、Mystery Jets、Chemical Brothersらがリミックスを依頼するなど、各方面で注目を集めている存在です。今回のGAN-BAN NIGHT SPECIALには、そんな彼が立ち上げた新レーベル、Form Musicをフィーチャーし、Brodinskiとの共作シングル「Peanuts Club」を昨年リリースしたNoob、Richie HawtinのPlus 8やSven VathのCocoonからもシングルをリリースしているJulian Jeweilも出演します。東京公演には、スペシャル・ゲストに石野卓球も出演するので、見逃せない一夜となりそうです。イベントの詳細は、続きからチェックしてみてください。

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The Drums「Forever and Ever Amen」

Jonathan Pierce(ボーカル)、Jacob Graham(ギター)、Adam Kessler(ギター)、Connor Hanwick(ドラム)からなる、ブルックリン拠点の4ピース・インディー・ロック・バンド、The Drumsが「Forever & Ever Amen」のPVを公開しました。「Forever and Ever Amen」は、The Drumsのデビュー・アルバム『The Drums』(6/9日本発売)からのニュー・シングルで、5/31のリリースが予定されています。6/14には単独来日公演もあるThe Drums、その評判は日に日に高まっております。

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MEG『SECRET ADVENTURE』インタビュー

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モデル、ファッション・デザイナーとしても活躍し、時代の最先端を切り取るセンスでブレイク中のシンガー、MEG。数々のクラブ・ミュージック・クリエイターとコラボレートしつつ、J-POPフィールドでも注目を浴びている、次世代型ポップ・ミュージック・アーティストの代表格です。現在は、エレクトロ・ポップ・ムーヴメントを象徴する存在としても広く知られています。

そんなMEGが、2010年初となるニュー・シングル、『SECRET ADVENTURE』をリリースしました。2009年5月に発表したアルバム『BEAUTIFUL』以来、久々に中田ヤスタカ(capsule)が楽曲プロデュースを担当した本シングル。その制作風景について、MEG本人にインタビューを行いました。


――音源のリリースは、ミニ・アルバム『JOURNEY』以来、約半年ぶりですよね。

「そんなに久しぶりという感覚ではなかったですけど、でも『JOURNEY』から半年経っていますもんね。今回の曲は、ニュー・アルバム用の曲を制作していく中でできたものなんですよ」

――アルバムの曲づくりも、並行して進めていたんですね。中田さんと、久々に一緒に制作した感触はいかがでしたか?

「私としては、前のアルバム『BEAUTIFUL』ですごく良いものができたから、そこからもう一枚アルバムを一緒につくるとなると、“うわぁ、どうなるんだろう? わからん”っていう心配がありましたね(笑)。いやぁ…実際制作に入ってからも、テンポがつかめるまでは苦しかったです。『BEAUTIFUL』で、自分の中でひと区切りって気持ちがあったんです。だから、次のアルバムではスタイルを変えるのか、そのままいくのかも固まってなくて。来た球はちゃんと投げ返そうと思ってはいたんですけど、上がってきたデモに対して、あんまりコレ! という歌詞が浮かんでこなくて。やーばーい、って結構悩みましたね」

――歌詞だけじゃなく、楽曲のテーマも考えるのが難しかったですか?

「難しかったかも。前は、曲を聴いたら“こういうシチュエーション、こういうキャラでいこう”ってすぐ浮かんだんですけど、今回はそうじゃなかったですね。今回は、中田くんのデモが全部弾き語りで上がってきたんですよ。そういうつくり方だと、他に入っている音からインスピレーションを受けることも少なくて、メロディー重視になってる分、どんな言葉を乗せても、歌詞が浮き出てきちゃって。いい意味でメロディアスなんですけど、浮いちゃう歌詞がこれでいいのかって悩んでいたら、結構時間がかかっちゃいました」

――このたびシングルで発表した、『SECRET ADVENTURE』も、制作には苦労したんですか?

「このシングルは、その中でもわりとすぐできた曲なんですよ。アルバム制作の中盤に録った曲なんですけど、良いものができたから、シングルにしたいなと思ったんです。中田くんも、“これはすごく良い曲だと思うから、先にやって”って、めずらしく意思表示を(笑)。レコーディングした当日に、シングルにする曲を決めなきゃいけなくて、結構ギリギリだったんですよ。録る前にもうジャケのラフができてる、みたいな(笑)」

――そうだったんですね(笑)。弾き語りでデモが上がってきたということは、中田さん自身も、今回はソングライティング重視で制作していたんでしょうか?

「つくり方を見ていると、そんな感じでしたね。『BEAUTIFUL』の時も挑戦しつつでしたけど、今回はもっとソングライティングの要素が強くなっていると思います」

――表題曲「SECRET ADVENTURE」は、メロディーと歌詞の譜割りや、単語の当てはめ方が不思議だなと感じました。

「これも、デモが弾き語りで上がってきたんですけど、それに忠実なリズムの言葉を乗せないと、“これ、違う”って言われちゃうんで(笑)。それもあって、言葉が上手くリズムに乗っていると思います」

――単語のチョイスや、言葉遊びも面白いですよね。

「そうですね。どんな歌詞を乗せても、意味が前に出てきちゃうような曲調だったから、あえて、意味がストレートにはわからないような単語を並べました」

――今までの楽曲のような、一連のストーリーを描いたものとは異なるアプローチですよね。

「うん、そうかも」

――この曲でモチーフになっているのは、揺れ動いている、わりと優柔不断なキャラクターですよね(笑)?

「そうですねぇ…とにかく、ノリが伝わればいいなと思ったんです(笑)。歌詞に引きずられず、パパッとノリ良く、3分半で終わるような曲にしようかなと。ホント言葉遊びで、“今何て言ったんだろう?”ぐらいの感じにしたかったんです」

――歌詞の一人称が“僕”になっていましたが、そこには特別が意味があるんですか?

「そうそう、女子目線だと内容が重くなっちゃうから、今回は男の子にしてみたんです(笑)」

――カップリング曲の「GLAY」は、メロディーラインやコード感が独特で、これまでMEGさんが発表してきた曲と比べると、珍しいテイストですよね。

「そうですね。“中田くんは、今回こういう感じの曲もやるんだー”と思いました。こっちの曲も、比較的スムーズに制作できましたね」

――英語詞にしたのは、何か理由があるんですか?

「日本語にしちゃうと重たくなっちゃうし、あの仮歌に合う日本語は無い! っていう話になったんです(笑)。英語の方が乗せやすかったですね」

――「GLAY」では、表題曲とは対照的で、“白黒ハッキリつけたい”っていう感情を歌っていますよね。

「カワイイ感じよりは、低めのトーンで歌っているイメージだったので、そういうシビアなことも言っちゃうキャラにしたかったんです。“グレーなのが嫌いなんです”って、ずっと言っている感じです(笑)」

――そういうキャラは、MEGさんの性格とも重なるんでしょうか?

「でもなんか、それってトシとっただけなのかな? と思って(笑)。私たちの世代に比べると、なんとなく若い子ってあんまり意思表示を好んでしないし、その前に考えない人が多いなと思って。ゆとり世代が関係あるかは、わかんないですけど(笑)。悪気無く“考えないで保留”ってしていることに、もどかしさを感じることがありますね。“こうなりたい”って思っても、なりたいって言っているだけじゃダメじゃないですか。それに向けての“ライン”が想像できる人じゃないと、そこに行けないと思うんですよ。それを考えないから進めないのになぁ…って、端から見ててもどかしい(笑)」

――なるほど。MEGさん自身、ここ数年で考え方で変わったところって何かありますか?

「ここ数年で変わったのは、誰かを育てたいっていう気持ちが大きくなったことですかね。何でも自分が指示してやった方が早いんだけど、一旦任せてみたり。どこまでできるかを見て、それ以上のことを教えてあげて、その子が成長するのを見るっていうのが楽しくて。宇川(直宏)さんが言っていたような、“育欲”みたいなのが。そうゆことが面白くなってきてます」

――それは意外ですね!? ところで、このシングルには、「SECRET ADVENTURE」のリミックスも収録されていますが、これは中田さんのセルフ・リミックスですか?

「はい。“クラブでも飛び入り参加できるようなバージョンがほしい”ってお願いしたら、“オリジナルよりは、面白くない感じになると思うよ”って言われましたね、焼き肉屋で(笑)。タイトル曲よりは派手にしたくなかったみたいで、音数をそんなに増やしていないですね。男っぽいリミックスになったと思います。シングルにしか入っていないバージョンなんですが、こっちもぜひ聴いてほしいですね」

――あと、『SECRET ADVENTURE』では、アートワークのイメージも変わりましたが、これはどんなコンセプトなんでしょうか?

「今回は、アルバムに向けてのシングルっていう考え方だったんで、両方の撮影を1日でやったんです。『BEAUTIFUL』の箱仕様がすごく好きだったので、それをもう一回やろうっていうところから始まったんですよ」

――なるほど。このビジュアル・イメージは、楽曲スタイルとも関連しているんでしょうか?

「2009年秋のワンマン・ライブで楽器を入れたのもあって、中田くんも“次のアルバムからは、楽器を取り入れやすい曲にしよう”って話をしてくれていたんですよ。それもあって、いかにもエレクトロっぽいジャケから離れたかったというか(笑)。しっとしりたアートワークがやりたかったのと、年相応な生々しさも残しておきたいなと思ったんです。荒っぽいカッコ良さが出てればいいな」

――『SECRET ADVENTURE』は、2010年初のリリースですが、このシングルを皮切りに、今後はどんなことに挑戦したいですか?

「6月にアルバムを出してからは、10月にバースデー・パーティーを、サンリオピューロランドで2日間でやることが決まっていて。まぁ、何歳になるかはおいといて(笑)。その他には、アニメーションをやってみたいですね。趣味レベルでもいいので…。自分のビジュアルや歌じゃなくても、声であそべるようなことをやりたいです」

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