Mop of Head『RETRONIX』特集


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2006年に結成された、東京のハイブリッド・ダンス・バンド、Mop of Head。現在のメンバーは、Geroge(Machine/Keys)、Hitomi Kuramochi(B)、Takuma Kikuchi(G)、Saku(Dr)の四名。ダンス・バンドでありながら、同期系機材やループ素材を一切使用しないライブ・パフォーマンスで注目を集めている新鋭です。今年4月に、’09年8月にライブハウス会場で販売し、瞬く間に完売したというEP『Mop of Head EP』を枚数限定で復刻すると、同作収録のアンセミックな人気曲「superhuman」が再び話題を呼び、都内を中心にさらなるファン層を獲得。☆Taku Takahashiやジャイルス・ピーターソンなど、ジャンルを飛び越えたアーティストからも注目されるに至っています。

そんな彼らが、待望のファースト・アルバム『RETRONIX』をリリースします。自身も運営に携わるレーベル、CONNECTIONから発表した、彼らの音楽観が詰まった注目作です。ここでは、そんな『RETRONIX』の内容と、Mop of Headの音楽性をご紹介しましょう。


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Mop of Head

ヒューマンで3Dなグルーヴを奏でる、注目のハイブリッド・ダンス・バンド

現在23歳というGeroge(Machine/Keys)が、中学生の時に抱いた夢を具現化したバンド、Mop of Head。中学の時に、現在のメンバーであるSaku(Dr)の前任ドラマーを、高校の時にギターのTakuma Kikuchiを、そして大学の時にベースのHitomi Kuramochiを誘い、’06年に正式に結成したインストゥルメンタル・ダンス・バンドだ。

Gerogeは、もともと3歳でクラシックピアノを始め、幼い頃から独学で作曲を始め、大学ではジャズピアノを専攻していた、言わば音楽的素養は十分のミュージシャンなのだが、MOP OF HEADを結成した理由は、実はそういった音楽環境とは全く異なる音楽体験をしたからだという。というのも、彼は小学生の時に、兄の影響でたまたま耳にした2K(The KLF)の「Fuck The Millennium」(’97)に衝撃を受け、それ以来クラブ・ミュージックに夢中となり、兄が聴いていたマッドチェスター・バンドや、ザ・ケミカル・ブラザーズなどのビッグビートを聴くようになったというのだ。

では、どうしてクラブ・ミュージックに影響を受けながらも、エレクトロニック・ミュージックのクリエイターにはならず、バンドを結成することにこだわったのか? これには、さらに深い事実がある。彼は2Kを体験する以前に、既にザ・ビートルズ、ボブ・ディラン、レッド・ツェッペリンといったヴィンテージ・ロックに目覚め、その頃からバンドの方がかっこいいと思っていたのだ。なんという早熟な耳。そして高校の時分には、“一人で音楽をつくっていくことはいつでもできるから、最初からそこをやる必要はない”、と考えていたという。そして、“バンドをやるなら、トラックだけで勝負できるバンドにしたい”と思っていたそうだ。

そして前述の通り、学校の同級生に順番に声をかけ、晴れて結成に至ったMOP OF HEAD。Gerogeが各メンバーに声をかけた理由は、彼らの演奏能力を見込んで…ではなく、音楽を好きな人と一緒にやりたいという純粋なもので、よってメンバーのバックボーンは、彼曰く“バラバラ”だそうだ。Hitomi Kuramochiは、もともとはAIR JAM世代のハードな音楽が好みで、Takuma Kikuchiは、Gerogeの勧めでギターを始めたが、今では一番のクラブ・ミュージック好き。そして、昨年新たに加入したSakuは、もともとMop of Headのライブを観に来ていたお客の一人で、前任のドラマーが脱退する際に“俺が叩きたい”と申し出た、一緒になるべくしてなった存在だ。

そんな、彼らがつくり出す音楽は、正に2000年代インディー・バンドらしい、ダンサブルなグルーヴとエモーショナルなメロディーを有した、ハイブリッドなもの。しかし、ライブで同期系機材やループ素材を一切使用しないというGerogeのこだわり、つまり彼が夢見てきた理想の音楽を実行することで、彼らは他のエレクトロ・バンドとは一線を画す、ユニークなサウンドをつくり出すことに成功している。この点については、彼自身の言葉を聞いてみよう。

「人間がやれるところは人間がやる、というのが、新しい時代の音楽かなって思うんです。今のバンドがよくやっているシーケンスの使い方とかを見ていると、“手で弾けばいいのに”って思うものが結構あったりするんですよ。だから、そこは貫き通したいですね。僕は、人間味のあるダンス・ミュージックの方が好きなんです」

彼らは、こうした信念のもと、都内のライブハウスを中心にライブ活動を始めると、その時代の空気を体現した音楽性で着実に活躍の場を広げ、今年4月には、’09年8月にライブハウス会場で販売した幻のEP『Mop of Head EP』を枚数限定で復刻。同作に収録された彼らの代表曲、「superhuman」が再び注目され、さらなる人気を獲得している。

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そして、この追い風を受けて遂にリリースされるのが、ここにご紹介するファースト・アルバム『RETRONIX』だ。一発録音で、たった3日間のレコーディングで完成させたという本作。その内容は、悩む時間がなかった分、スピーディーで刺激的だったという現場のシチュエーションを反映した、ワイルドでテンションの高いサウンドが詰まったものとなっている。Gerogeは、本作をどんなアルバムにしたかったのだろう? 再び彼の言葉を引用させていただこう。

「今の僕らが出せる音楽の幅を、そのまま見せたかったですね。歌のあるバンドの場合は、いろんなジャンルの曲を詰め込んじゃうと、“何をやりたかったのか分からない”って言われてしまうかもしれませんが、僕らの曲には歌がないんで、音楽のバックボーンをそのまま見せられると思ったんです。だから、今回は曲の仮タイトルが、全部ジャンル名だったりしましたね。“Jam”とか、“Disco”とか、“Dubstep”とか。自分達がつくれる曲をつくっていくのではなく、ある目標に向かって、できないことにも挑戦しながら形にするという曲づくりだったんで、面白かったですよ」

そんな彼の言葉通り、本作に収録されている楽曲群は、ジャム・バンドのようなグルーヴ感を感じさせる「ONE」や「S.A」、ポスト・パンク・バンドやガレージ・ロック・バンドのようにハードでフリーキーな肌触りの「Davala」、キャッチーでポップなディスコ・ファンク「Hocus Homage」、シンフォニックなエレクトロ・サウンドが鳴り響く「Retronix Symphony」、さらに、曲中にMC5のかの有名なMCをフィーチャーした「Istanbul」など、正に幅広い。しかし、完成した楽曲自体は、決して仮タイトル通りのものになっていないというのが、いかにも彼ららしいところだ。とはいえ、Geroge自身は、本作のリード・トラック「Retronix Symphony」に、このアルバム全体に共通する一つの音楽観を反映させたかったようだ。

「“Retronix”という言葉には、新しい音楽をやりつつも、昔の音楽を引き継いでいきたい、という温故知新的な思いが込められているんです。これは、バンド自体のコンセプトでもありますね。で、個人的に僕は、たとえバンドでもオーケストラのような3Dの音楽を出していきたい、って思っているんですよ。だから“Symphony”って言葉を思いついたときは、これしかないって思いましたね」

さらに、自身も運営に携わるレーベル、CONNECTIONの、その意味を実行すべく収録した、彼らの知り合いであるKan Takahiko、DJ RAYMOND (from TheSAMOS)、momoko、そしてUKベースミュージック界をリードしてきた人気トラックメイカー、Seijiのリミックス作品にも、本作のビジョンは反映されているという。Gerogeは、Mop of Headを一つのメディアとして考えていて、今後はバンドを軸に、その音楽と文化的な“つながり”を様々な形で表現し、ネットワークしていきたいと考えているのだ。

揺るぎないユニークな音楽観と、計算できない音楽的面白さ、そして自らが発信源となって、音楽の樹形図を描けるようなバンドになりたいという思いが詰まった『RETRONIX』。本作は、Mop of Headの過去、現在、そして未来が交差した快作だ。


☆Taku Takahashi on Mop of Head

「我らがMop of Head。このバンド知らなきゃ、乗り遅れるよ」

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☆Taku Takahashi (m-flo / TCY Radio)
DJ、プロデューサー。’98年にVERBALとm-floを結成。数々のヒットチューンを武器に日本の音楽シーンにインパクトを与える。ソロとしても、数多くの国内外アーティストのプロデュースやRemixを積極的に行っている。 ’09年には自身のレーベル、TCY Recordingsを発足。ダンス・ミュージック専門のインターネットラジオ「TCY Radio」も立ち上げ、海外でも話題となっている。今年、ソロ名義のTHE SUITBOYS第1弾として、MIX CD『AFTER 5 VOL.1』を発表。

☆Taku Takahashiパーティー情報
7/10(日)OUTLOOK@eleven
7/29(金)フジロックフェスティバル(オールナイトフジ)@苗場
8/5(金)Tachytelic@AIR
8/6(土)The Big Party@大阪

http://twitter.com/takudj
http://www.suitboys.com/
http://www.myspace.com/takutakahashi
http://www.tcyrec.com/
http://www.myspace.com/tcyrec


【リリース情報】

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Mop of Head
RETRONIX
(JPN) CONNECTION / YNWA-2
7月6日発売
HMVでチェック

tracklisting
01. ONE
02. S.A
03. Istanbul
04. Retronix Symphony
05. THE WORLD
06. Hocus Homage
07. Delyte
08. Davala
09. Love Pop Dance Music
10. superhuman
11. Davala – Kan Takahiko Remix
12. ONE – DJ RAYMOND (from TheSAMOS) Remix
13. Hocus Homage – DJ momoko Remix
14. Retronix Symphony – Seiji Remix

【PARTY INFO】
CONNECTION presents “CONNECTION Vol.0
Mop of Head 1st Album 【RETRONIX】release party

2011/7/23 MARZ, Shinjuku,
24:00 open/start
w/ Love Action
Band:Mop of Head, The Brixton Academy
DJ:Takeru “John” Otoguro (TCY Radio), Kan Takahiko, Kenta Hirano (Love Action), momoko
VJ:#9

TICKET
LAWSON TICKET:L Cord 72372
e+(イープラス)

【オフィシャルサイト】
http://mopofhead.com/

【試聴】
RETRONIX “60ver” by Mop of Head

【VIDEO】

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