にわかに注目を集めているベースライン・ハウスって何?


 フィジェット・ハウスに続き、UKのアンダーグラウンド・ハウス・シーンから新たな刺客が現れました。その名は、“ベースライン・ハウス(BASSLINE HOUSE)”。ネーミングの通り、ベースラインに特徴のあるハウス・ミュージックです。果たしてどんなサウンドなのか? まずは、シーンを牽引している一人、DJ Qのプレイする、BBC RADIO 1XTRAのプログラムをお聴きください。

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 そうなんです。こ、これは、正にスピード・ガラージではありませんか。フィジェット・ハウスにも若干スピード・ガラージ的要素がありますが、ベースライン・ハウスは、もう完全にスピード・ガラージ直系。このBBCのページに載っている他のDJ陣、CAMEO、DJ TARGET、FOOTLOOSEらの紹介文も、“UKG(UK GARAGE)DJs”となっているので、彼らがスピード・ガラージの延長線上に位置する新世代DJであることは間違いないでしょう。

 スピード・ガラージは、ちょうど今から12〜10年くらい前に流行したハウス・サウンドで、その音楽的特徴は、シャッフルを効かせたアップテンポのハウス・ビート、ドラムンベース〜レゲエ系のベースライン、トースティング系のMC、ガラージ〜R&B系のソウルフルなヴォーカル、など。タフ・ジャム、187ロックダウン、スタントン・ウォリアーズ、ドリーム・チームといったプロデューサー/DJチームが活躍し、UKハウス・シーンを席巻したのでした。当時のヒット・チューンは、DOUBLE 99「Ripgroove」(’97/実はティム・デラックス作)や、INDO「R U Sleeping」(’96)など。また、シカゴ出身のプロデューサー、ロイ・デイヴィス・JRが手がけたガラージ・チューン「Gabrielle」(’96)や、アーマンド・ヴァン・ヘルデンが手がけたTORI AMOS「Professional Widow (Armand’s Star Trunk Funkin’ Mix)」(’96)、C.J. BOLLAND「Sugar Is Sweeter (Armand’s Drum N’ Bass Mix)」(’97)といったリミックス作品も、スピード・ガラージに連なるヒット作として有名です。

 ちなみに、スピード・ガラージ・サウンドが誕生したのは、アメリカ産ガラージ・ハウスをハイピッチでプレイし始めたことが発端とされています(だから、“スピード”なんですね)。またサウンド面では、デトロイト出身のプロデューサー、MKがリミックスしたNIGHTCRAWLERS「Push The Feeling On (MK’s Nocturnal Dub)」(’92)、ニュージャージー出身のプロデューサー、トッド・エドワーズが’90年代中盤にあみ出した、短いカットアップ・サンプルを多用した一連のプロダクション/リミックス。さらに、UKガラージのゴッドファーザーと言われるグラント・ネルソンの作品群がルーツだと言われています。
 蛇足ですが、最近トッド・エドワーズは、サーキン「Next Of Kin」、ジャスティス「DVNO」など、ニュー・エレクトロ系アーティストのリミックスを手がけています。スピード・ガラージとは関係なく、昔からフランスで人気の高かったプロデューサーでしたが、再評価されているんでしょうかね? それとも、このベースライン・ハウスの流れでリンクしたのでしょうか? 興味深い現象です。

 さて、その後スピード・ガラージは、’99〜’01年には、クレイグ・デイヴィッドをフィーチャーした「Rewind」のヒットで知られるアートフル・ドジャーや、TALKIN LOUDレーベルが送りだしたMJコールらのスターを生んだ“2ステップ(2 STEP)”へと姿を変え、さらにヒップホップ〜R&B〜ダンスホールとリンクした“グライム(Grime)”へと変遷していく中で、すっかり絶滅危惧種に…。と思っていたら、アンダーグラウンドのシーンでは、バッチリ受け継がれていたんですね。そもそもこうしたジャンルは、ジャングル/ドラムンベースの時代からUKのパイレーツ・ラジオ〜ブラック・ミュージック層を中心に、独自の文化圏を構成してきたシーンの音楽ですから、底力があるということでしょう。UK GARAGE IS STILL ALIVE、ですね。

 では、ベースライン・ハウスの新しさは何か? ネット検索で見つけた実際のパーティー模様を動画で見てみる限り、スピード・ガラージよりも格段にワイルドでタフな点かと思われます。分かりやすく表現すると、よりゲットー感満点で、客層も若く(で、大半がブラック系。少しだけニュー・レイヴァーの白人系少女も混ざっている感じ)、かなり怖め..。不良のサウンドしてますね〜。なんでも、シーンの始まりはシェフイールドのパーティー“niche”にあったそうで、このパーティーは警察の介入で閉鎖されています。。。

 ロンドンのグライムに対して、リーズ、バーミンガムといったUK中部以北を拠点にしているのも特徴ですね。グライムやダブステップが“男向け”の音楽なのに対し、女性を取り込んでいるのも注目です。ちなみにベースライン・ハウス最大のヒットはT2の「Heartbroken」で、メジャーレコード会社のUniversalからリリースされ、UKチャートで2位を記録しています。

 最後に、ベースライン・ハウスの代表アーティスト/レーベルをご紹介しましょう。ご興味のある方は各サイトを覗いてみてください。

アーティスト
AGENT X:http://www.myspace.com/agentxuk
DANNY WYNN:http://www.myspace.com/dannywynn
DELINQUENT:http://www.myspace.com/delinquentuk
FX LOGIK:http://www.myspace.com/fxlogikmusic
PAUL SIRRELL:http://www.myspace.com/paulsirrell
YOUNGMAN:http://www.myspace.com/youngmanbasslinehouse
WIDEBOYS:http://www.myspace.com/wideboys

レーベル
Ecko Records:http://www.eckorecords.co.uk/
Boogaloo Records:http://www.myspace.com/boogaloorecordsuk
Jump Records:http://www.myspace.com/jumprecords07
Rewind Records:http://www.rewindrecords.co.uk/
Yep Yep Records:http://www.myspace.com/yepyeprecord

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