’04年8月に結成された、葉月(Vo)、玲央(G)、悠介(G)、明徳(B)、晁直(Dr)の五名からなるロック・バンド、lynch.。同年12月に名古屋クラブクアトロで行ったシークレット・ライブで活動を本格化させて以来、そのユニークな音楽性と、スリリングなパフォーマンスを武器に、着実にファン層を拡大してきた実力派です。これまでに、自身のレーベルから4作のアルバムを発表。昨年は、ラスト・インディーズ・シングル『JUDGEMENT』をリリースし、過去最大規模の全国ツアーを敢行。ツアー・ファイナルの渋谷O-EASTを含む各会場をソールド・アウトさせています。
そんな彼らが、メジャー・デビューとなる通算5作目のアルバム『I BELIEVE IN ME』を6/1にリリースします。葉月が、“lynch.作品の中で一番激しい”と語る意欲作です。そのサウンドは、彼ら特有のハード&メロディアスなロックを、さらにスケールアップさせたもの。タイトル曲を筆頭に、疾走するドラム、迸るツイン・ギター、エモーショナルなメロディーのコントラストに圧倒される内容を誇っています。
本作『I BELIEVE IN ME』の内容とlynch.の音楽性について、メンバー五名に話を聞きました。
lynch.
過激にして美しい音世界を追求する、
ハードで、スリリングで、オリジナルなロック・バンド
__まずは、’04年にlynch.を結成した経緯について教えてください。当初は、玲央(G)さん、葉月(Vo)さん、晁直(Dr)さんの三名でスタートしたそうですね。
玲央「僕が、前にいたバンドを辞めた時に、新しいバンドをつくろうということで、みんなに声をかけていったんですよ。で、まずは葉月に声をかけました。僕は、葉月が以前やっていたバンドの曲を知ってて、歌はもちろん、作曲のセンスにも魅力を感じていたんで、一緒にやるのであれば、葉月に曲を書いてもらいたかったんです。晁直にしても、個性的なドラムを叩いていたので、一緒にやったらどんなことができるんだろうと思って、声をかけました」
__ちなみに、当時はどのようなサウンドのバンドをやりたいと考えていたんでしょうか?
玲央「その時は…というか、今までずっとそうなんですけど、こういう音楽をやろう、みたいなものはなかったですね。むしろ、コイツと一緒にバンドをやりたい、という気持ちの方が先です。で、実際に一緒にやったら何ができるのかという結果が、今のサウンドなんですよ」
__lynch.を結成する前に在籍していたバンドは、どんなサウンドだったんですか?
玲央「僕がいたバンドのサウンドは、lynch.とは全然違ってましたね。葉月はどうなんだろう?」
葉月「僕がいたバンドの音が、一番lynch.と近いのかもしれない。そのバンドでは、僕が曲をつくっていた時期もありましたから。でも、前のバンドでは、あんまり自分で曲をつくらせてもらえなかったんで、自分の曲をもっとやりたいということで、lynch.に入ることにしたんです」
__で、lynch.をスタートさせて、’06年に悠介(G)さんが、そして昨年の’10年に明徳(B)さんがバンドに加入して、現在に至っているわけですね。
玲央「’06年の2月に、正式なベーシストを探そうということで、一度活動を休止したんですよ。で、メンバーを探している時に、ギタリストだけどベースも弾けるということで、悠介を紹介してもらったんですけど、一緒にスタジオに入ったら、ベーシストとしてはあんまりしっくりこなかったんですよね。でも、僕は悠介がギターを弾いている姿を知っていたんで、いっそのことツイン・ギターにしちゃったらどうだろうって、そこで思ったんですよ。音的な広がりも含めて、面白いことになるんじゃないかなって感じたんです。それで、改めてギタリストとして声をかけて、一緒に合わせてみたら、案の定しっくりきましたね」
__明徳さんが入ることになったきっかけは、何だったのでしょうか?
玲央「やはりメンバー集めの前提として、“コイツとやりたい、コイツじゃなきゃダメだ”というのがあったんで、ずっとサポート・ベーシストを加えた形で活動を続けてきて、明徳も当初はサポート・ベーシストとしてお願いしたんですよ。で、一緒にツアーをまわったんですけど、その時に“コイツだったら…”ってお互いに思えたんです。それで、正式なベーシストとして入ってもらうことになりました」
__lynch.は、これまでにアルバムを4作発表してきましたが、このタイミングでメジャー・リリースに至った経緯は、何だったのでしょうか?
玲央「僕らは、自分達でレーベル/プロダクションを立ち上げて、この6年間インディーズでずっと作品をリリースしてきましたし、ライブのブッキングや、グッズの制作も全部自分達でやってきたんですけど、単純に活動範囲が広がって、物理的に無理なことも出てきていたっていうのはありましたね。なんで、バンドの核となる部分は全く変えずに、その輪を大きくしていこうって考えたんですよ。そんな時に、今作『I Believe In Me』の制作ディレクターと知り合って、お話をいただいたんで、今回メジャーからリリースすることになりました。メンバー集めと一緒で、“この人達だったら一緒にやっていける”って思えたんです」
__インディーズとしての活動スタンスにこだわっていた時代というのも、あったんですか?
玲央「いや、そういうのはないんですよ。知り合って、一緒にやっていきたいと思った人間が集まっているだけですから。今回は、その人がレコードメイカーの人間だったってだけなんです。だから、今回知り合った制作ディレクターが、もし別のインディーズ・レーベルを運営している人だったら、その人と一緒にインディーズとして活動を続けていたかもしれません。インディーズやメジャーといった肩書きみたいなものは、どうでも良かったんです」
__なるほど。
玲央「より多くの人に聴いてもらえる環境や、それを手伝ってくれる人達を必要としていただけなんです。僕らは、バンドとして自己満足のレベルで終わる気なんてないんで、いままでは、その気持ちを実現すべく少数精鋭でやってきたんですけど、これからは、気持ちの純度は変えずに、より多くの人に届かせることをやっていけると思ってます」
__分かりました。では、メジャー・デビューとなる最新作、『I BELIEVE IN ME』について教えてください。まず、作品のテーマや音楽的なコンセプトは、どのようなものでしたか?
葉月「このアルバムは、lynch.作品の中で一番激しい内容になったと思いますね。一般的な感覚では、いわゆるメジャー・デビュー=より大衆的に受け入れやすい音楽…というイメージがあるかと思うんですけど、そうはなりませんよ、ということを伝えたかったし、そこの部分ではナメられたくなかったですから。それに、メジャー・リリースということで、逆にロックに興味がなかった人達の耳にも届けられると思ったんで、そういった人達を引き込める、何か引っかかりのある異質な作品にしたかったんです」
__他のメンバーの皆さんは、各自どういったサウンドにチャレンジしようと考えていましたか?
晁直「基本的な部分は、これまでと変わってないと思うんですけど、今作はプリプロの段階で、音がすごくクリアで良くなることが分かっていたんで、ちょっとだけ音を濁らせて、生々しさを残そうって思いましたね。そこの部分では、苦労しました」
玲央「僕が意識したのは、余計な音を入れないようにしよう、ということでしたね。僕らは、ギターの割り振りに関して、セクションごとにどちらかが主役ならいい、っていう風に考えているんですよ。僕らはツイン・ギターですけど、1+1=2じゃなくて1.5くらいの方が、歌の邪魔をしないでちょうどいい、って思っているんです。で、今回は、その辺のバランスをすごく整理できたなって思ってます」
悠介「僕は、曲にどういう色を付けていけばいいのか、ということを考えながら、いつもフレーズを弾いていくんですけど、今回はそれにプラスして、lynch.を初めて聴くリスナーの心に響くフレーズをどれだけ出せるか、自分のフレーズがどこまで通用するのか、という挑戦…というか欲をあえて出しながら、弾きました」
明徳「僕は、プレイした後に音をつくっていくリアンプという作業が、とても面白かったですね。ベースに限ったことじゃないんですけど、すごく激しいサウンドなのに、生っぽさがいい感じで出ていて、そこが気に入っています」
__では、そんな今作のタイトルを、“I BELIEVE IN ME”とした理由は何でしたか?
葉月「今作に入っている歌詞の内容は、様々なんですけど、それらの根底には、全て“I BELIEVE IN ME”という言葉があると思ったんです。あと、バンド結成当初からの活動スタンスにしても、これまで自分達で納得したことしかやってこなかったんで、そんなバンドを表現する言葉としても、“I BELIEVE IN ME”は非常にいいんじゃないかなって思いましたね」
__タイトル曲の「I BELIEVE IN ME」は、どのようにして誕生した曲ですか?
葉月「このアルバムの曲は、アルバムをつくる話が出てからつくり始めたものばかりなんですけど、最初にできた曲が「UNTIL I DIE」と「I BELIEVE IN ME」の元になった曲だったんですよ。このアルバムの世界観を考えた時に最初に出てきたものだったから、結局リード曲になるべきものだったんでしょうね。で、この曲は、とりあえず“速い”っていう印象を持たせたくてつくったものでした。ビートも2ビートで、メタリックな感じを盛り込みたかった。その方が派手かなって思ったんで」
__そのメタリックなテイストというのは、アルバム全体についても言えることですか?
葉月「そうですね。あんまり重い印象は、持たせたくなかったです。“激しくて重い”ではなく、“激しくて速い”にしたかったんですよ。ヘヴィー・ロックって、どうしても“重い”印象があるんで、“速い”方向にいきたかった」
__メタリックな感じ、メタルな感じというのは、例えば「-273.15℃」といった曲で強く打ち出しているテイストのことになるんでしょうか?
葉月「いや、この曲は…何になるんでしょうかね? いわゆるメタリックなフレーズとか、ギターのハモリ、2バス・ビートみたいなものは、全く出てこない曲なんで…」
玲央「「-273.15℃」は、どちらかというとインダストリアルな曲なんじゃない? メタリックなのは、むしろ「TIAMAT」とかでしょうね」
葉月「あと「ALL THIS I’LL GIVE YOU」とか、「I BELIEVE IN ME」のメイン・リフとか」
__ちなみに、ご自身達の中では、lynch.のサウンドをどのような言葉で表現しているんですか?
葉月「そこがですね、自分達も全然分からないんですよ。逆に、僕らが皆さんに聞きたいですね。例えば、ヴィジュアル系って言葉があって、僕らもそう言われることがあるんですけど、“ヴィジュアル系って何ですか?”ってことを問いたいですね(笑)。別にこの言葉を否定するつもりはないんですけど、でもそれって何なのかなぁ?って思ってしまうんですよ」
玲央「僕らとしては、ロック・バンドだという認識しか持ってないんですよね」
__では、葉月さんが曲づくりで一番重要視していることとは、何ですか?
葉月「最近は、曲が始まってから5秒以内にインパクトを与えることですね。だぶん、曲のどあたま部分がタルいと、もう僕らのことを知らない人達は、曲を飛ばしてしまうと思っているんで、つかみは重要だと感じています。もちろん、その後の展開もすごく重要ですけどね。でも、まずは最初が重要です。だから、曲ができずに悩んでいる時って、画面にまだ何もない状態のことが多いです。インパクトのある曲のつかみが思いつかないと、何もできないんですよ。でも、思いついたら、後は早いと思います。曲の展開等に関しては、あ、こうくるかってみんなに言わせたいとは、常々思ってますかね」
__今、lynch.を通じて音楽を表現していて、一番気持いいと感じる瞬間はどんな時ですか?
玲央「ライブ中に、みんなが歌っていたりすると、やっぱり感動を覚えますね。みんな、こんなに一字一句覚えているんだって」
晁直「僕もライブですかね。こっちが投げたものを向こうが反応してくれると、嬉しくもありますし、たまに圧倒されもしますから」
悠介「僕は、ライブで新曲をやった時に反応が良いと、気持いいなって感じます。分かってくれているなって思えるんで」
明徳「良いライブができて、みんなも盛り上がってくれるのが、一番です」
葉月「僕も、やっぱりライブかな。僕らは、あらかじめアンコールを想定したセットを組んでいないんで、特に二回目のアンコールまで出て行こうと思えた時、二回目のアンコールまでできた時は、幸せに感じます。あとは、CDができ上がった時もすごく嬉しいです。“やっとできたな”って気分になれますから。プロモ盤が上がった時点で、すでに嬉しいものですよ」
__分かりました。では最後に、lynch.の次なる目標を教えてください。
葉月「まず、ツアーをやります。あとは、このアルバムって、かなり挑戦的な内容だと思われそうなんですけど、僕としては、コレが土台になる感じでいいと思っているんですよ。だから、次の作品では、さらに挑戦をしていきたいと思っています。まだ、具体的にどうなっていくのか分からないですけどね」
interview & text Fuminori Taniue
【アルバム情報】
lynch.
I BELIEVE IN ME
(JPN) KING / KICS-91666(CD+DVD:初回限定盤)
(JPN) KING / KICS-1666(CD:通常盤)
6月1日発売
tracklisting
01. INTRODUCTION
02. UNTIL I DIE
03. I BELIEVE IN ME
04. JUDGEMENT
05. LIE
06. -273.15℃
07. THIS COMA
08. SCARLET
09. ALL THIS I’LL GIVE YOU
10. TIAMAT
11. BEFORE YOU KNOW IT
12. A GLEAM IN EYE
【オフィシャルサイト】
http://lynch.jp/
http://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=41281
【VIDEO】
【LIVE INFORMATION】
TOUR’11『THE BELIEF IN MYSELF』
6/11(土)梅田 AKASO
6/25(土)浜松 窓枠
6/26(日)横浜 SUNPHONIX HALL in YOKOHAMA ARENA
6/29(水)埼玉 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
7/02(土)高崎 club FLEEZ
7/03(日)柏 PALOOZA
7/06(水)宇都宮 HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2
7/09(土)札幌 BESSIE HALL
7/10(日)札幌 BESSIE HALL
7/13(水)青森 Quarter
7/16(土)秋田 LIVESPOT2000
7/17(日)仙台 dawin
7/22(金)福岡 DRUM Be-1
7/23(土)鹿児島 SRホール
7/25(月)松山 サロンキティ
7/27(水)高松 DIME
7/30(土)広島 ナミキジャンクション
7/31(日)岡山 IMAGE
8/06(土)京都 MUSE
8/20(土)新潟 RIVERST
8/21(日)長野 CLUB JUNK BOX
8/28(日)名古屋 ボトムライン
http://lynch.jp/live/