Azari & III、アルバム『Azari & III』インタビュー


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Alixander lllとDinamo Azari、そしてボーカリストのFritz HelderとStarving Yet Fullの4名からなる、カナダはトロント出身のダンス・ミュージック・アクト、アザリ&サード(Azari & III)。彼らは、シングル「Hungry For The Power」(’09/’11)、「Reckless With Your Love」(’09)、「Into The Night」(’10)、「Indigo EP」(’10)や、数々のリミックスワークを通じて、’80年代のオリジナル・シカゴ~NYハウスやエレクトロ・ディスコのエッセンスを独自に発展させたサウンドを打ち出し、ここ2年で一気にブレイクを果たした注目アーティストです。フレンドリー・ファイアーズとのコラボ曲、「Stay Here」(’10)も話題を呼びましたね。

そんなAzari & IIIが、この夏にリリースしたファースト・アルバム『Azari & III』を引提げて、9月末に<GAN-BAN NIGHT SPECIAL – BREAK ON THROUGH VOL.21>で来日を果たしました。というわけで、ここでは来日した彼らに、自身の音楽性とアルバム『Azari & III』の内容について話を聞いてみました。なお写真は、GAN-BAN NIGHT出演時のもの(by Masanori Naruse)ですよ。


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AZARI & Ⅲ

来日記念、アルバム『Azari & III』インタビュー

__まずは、あなた達がAzari & IIIを結成した経緯について教えてください。

Alixander III「僕らは、トロントでもクールな人たちが集まっているパークデールにみんな住んでいて、共通する友達の紹介で出会ったんだ。で、その友達はスタジオをもっていて、そこで曲をつくっていて、出会ってすぐに恋をした感じだよ。音楽やファッションのセンスもみんな似ていたから、それがきっかけで曲をつくり始めたら、ボーカルの二人、Fritz HelderとStarving Yet Fullも共感してくれて、自然と参加するようになった感じだった。はじめはインストの曲ばかりつくっていたけど、ボーカルの曲もつくれるようになって、どんどん進んでいったね」

__Azari & IIIとして活動する以前は、それぞれどのような活動をしていたんですか?

Dinamo Azari「ファッション関係の人がいたり、ダンサーがいたりと、みんなそれぞれ芸術活動をしていた感じだったね。だからAzari & IIIを結成してからも、“服はこうしようよ”とか、“音楽もこうしようよ”とか、いろいろ意見を言い合えたよ」

__あなた達は、2009年に「Reckless With Your Love」と「Hungry For The Power」をリリースして注目を集めますが、当初はどのようなサウンドの音楽をやってみようと考えていたんですか?

Starving Yet Full「まず、「Reckless With Your Love」は、恋心やハートについての曲さ。タイトルの通り、芸術家として夜遅くまで遊んだり、ちょっと間違ったことをしちゃったりと、ラフな生き方を軸にした曲になっているよ」
Alixander III「「Hyngry For The Power」は、初めて一緒にやった曲で、話し合ってからすんなりとできたね。社会的な視点で話しあって、都市伝説な話とか、社会とはどういう仕組みなのかとか、その実態を探っっている内容になっていると思う」
Fritz Helder「いきなり土地や株が暴落して、知らない人々の影響で社会や国が格差げされたり変化するなんて、不思議な世界じゃないか、ってことに関心を持っていたんだ」
Dinamo Azari「ウォール街が、“どこどこの会社がつぶれるから投資している人はやめたほうがいい”とか言うと、デマカセだとしてもそれで社会は変わってしまう。そして、自分達はそういう世の中に生きている、ということを表現したつもりだよ。最近は、そういうことに関しても興味があるんだよね」

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__社会派ですね。では、アルバム『Azari & III』について教えてください。まず、どのような内容のアルバムにしたかったのでしょうか。

Starving Yet Full「テーマの一つには…自然とそういう風になったんだけど、“世の終わりに踊り続ける”っていうのがあったかもしれないな」
Alixander III「男の娼婦の世界、かもな。朝まで遊んで、日の出を見ることもないしね」
Dinamo Azari「自然と自分達のヴァイブスというものが反映されてるんじゃないかな」
Alixander III「内面的でダーク感じのイメージも出ているアルバムと思う。自分達で表現しているものだけじゃなくて、世界や世の中がそうだからさ。今、ちょっと世の中がおかしいじゃん? どんどん渦に飲み込まれていっている感じがするんだ」

__音楽的には、’80年代のオリジナル・シカゴ・ハウス~ニューヨーク・ハウスや、エレクトロニック・ディスコが持っていたフィーリングを新たに解釈したような、ユニークなサウンドを追求していますね。今作の曲づくりやサウンドメイキングで重視したことは何でしたか?

Dinamo Azari「曲づくりのために参考にしたものは、ないよ。パラダイス・ガラージにあったような時代のエネルギーをもう一度再現したい、って思いながら追究していった部分はあったけどね。僕達自身の見た目もそうだと思うけど、そのままそれが反映されている部分はあると思う。一緒に集まって演奏していると自分達の気持ちが刺激されて、そういった記憶を呼び起こしてくれるんだ。僕達は、もちろん違う部分もあるんだけどね」

__ところで、ボーカルの二人は、ロバート・オーウェンスやジェイミー・プリンシプルといった、伝説的なハウス・ボーカリストに影響を受けたりしているんでしょうか?

Fritz Helder「彼らの音楽は、ちょっと知っているくらいだよ」
Starving Yet Full「Dinamoとかを通じて、ほんの少し知ってるくらいなんだ」
Fritz Helder「シガゴ・ハウスなんかとの共通点を感じてくれるのは、その時代にはドラッグやってみんな朝まで踊りまくるということがあって、僕らの音楽にも、そういった夜の世界の側面が出ているからなんじゃないかな」
Alixander III「あの時代にも、楽しい曲ばかりではなくて、しんみりとした曲があったしね。僕達も、夜の音楽ってことで、そういった側面を反映させているからね」

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__ちなみに、あなた達のオールタイム・フェイバリット・ソングは何でしょう? 少しご紹介いただけますか。

Starving Yet Full「Massive Attack「Three」、Erlend Oye「Every Party Has A Winner And A Loser」、Jamie Lidell「I Can Love Again」かな」
Fritz Helder「僕は、The Kooks「Junk Of The Heart」、Peter Gabriel「Big Time」」
Alixander III「Chris & Cosey「Love Cuts」と、Mariah Carey「We Belong Together」だな」
Dinamo Azari「僕は、CFCF「Cometrue」とNew Order「Elegia」にするよ」

__時代もジャンルも、幅広いですね。話を戻しますが、あなた達の場合、曲づくり自体はどのようなプロセスで進めていくことが多いのでしょうか。また、機材にはかなりこだわっているんでしょうか?

Alixander III「機材のへこだわりは、特にないかな。’90年代の機材だってデジタルかアナログかといったことでは分けられないし、TR-808はアナログだけど、TR-909は半分デジタルだし。もちろん昔の機材も好きだけど、どの機材にしても、まずは使い込むってことが大事だと思う。Buchla 200e っていう、最近のダブステップ・アーティストとかデッドマウスなんかが使っている、3万ドルもする機材があって、それだと昔のサウンドが出せたりするんだけど、使いにくいんだ。使いこなせるまでは迷路みたいな感じ」
Dinamo Azari「でも、曲づくり自体が、いろんなものを取り入れて迷路をくぐり抜けていくような感じだから、結局は一緒かな。僕達の場合、スタジオに集まったら毎回同じようにリズムから始めるとか、そういった定番のプロセスが全くないんだ。毎回毎回、曲をつくっていく過程が違う。いつも迷路のようで、探りながらの曲づくりさ。言わば、全部プレイタイムだね。遊びながら曲をつくっているようなものだよ」

__最新シングルの「Manic」は、どのようにして誕生した曲ですか?

Alixander III「この曲は、5分くらいでできた曲だよ。ダーティーなベースとドラムを軸に、タイトルの通り“manic”(=躁状態)な感じに仕上げたんだ。実はボーカルの二人は、最初この曲が好きじゃなくて、スタジオでレコーディングする時も“どういう風に歌えばいいの!?”って半分ひねくれていてね。で、2週間くらい経って、ビートが少し変わった時点で今の形になった感じかな。もともと自分達はもちろん、家族やまわりの友達もちょっとマニックな部分があるから、こういう曲をつくるのも必要だったって感じかな」

__今作の制作作業で、一番印象に残っている出来事は何ですか?

Starving Yet Full「一番印象深かったのは、まだ太陽が出ているうちにスタジオに入って、作業が終わって朝5時くらいに外に出てみると、気温がマイナス30度になっていて、雪もかなり積もっていたことかな。世界が変わっちゃったのかと思ったよ。で、スタジオから1時間半くらい離れたところまで帰らなきゃいけないんだけど…みたいな」
Dinamo Azari「あとは、トッド・ラングレンが使っていたというエミュレーターを譲り受けたんだけど、それが遂に壊れちゃったことかな」

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__それで、あなた達はライブ・パフォーマンスでも注目を集めていますね。ライブでは、どんなことを表現していきたいと考えているんですか?

Fritz Helder「僕らのライブには、(1)4人編成で、ターンテーブル4台とミキサー1台でDJするパターン、(2)ライブPAで、もともとのボーカルやバックトラックをいじりながらライブ演奏するパターン、(3)生ドラム、生のシンセ、生のボーカルで、本当意味でのライブショーをやるパターン、があるんだ。最初からつくり込まずに、お客さんに合わせてやってるよ」
Dinamo Azari「毎回骨組みしかなくて、あとはボーカルの二人が、ワイヤレスマイクを使って飛びまわったり、いなくなったり、お客さんを楽しませるために彼らとどう上手く調和していくのか、ライブをしながら考えていくんだ。だから、僕らのライブには、二度と同じものがない。毎回違うからね。日本でやる今回も、お客さんを見ながらやっていくよ。日本の次は、オーストラリアのフェスに出演するんだけど、その時はThe KillersとかThe Wombatsとか、バンドがたくさん出演しているから、フェスのお客さん向けたライブをやることになるだろうしね」
Alixander III「例えばUKだったら、ラジオで僕達の曲が1日に5回くらいかかってるから、みんな一緒に歌ってくれるし、最新シングルの「Manic」だったら、もともと知らない曲でも覚えやすいコーラスだから、歌わせる自信がある。ボーカルの二人は盛り上げ役だから、そういうのもちゃんと分かってるんだ。とにかく来てくれればみんなを楽しませるよ!」

__分かりました。では最後に、Azari & IIIの次なる活動目標を教えてください。

Alixander III「ツアー、ツアー、ツアーだよ!」
Fritz Helder「これからヨーロッパ・ツアー、オーストラリア・ツアーがあるんだ」
Dinamo Azari「服のブランドも立ち上げようかと思ってるよ。でもまぁ、そんなすぐにはお披露目できないと思うけど」
Fritz Helder「パリコレに出たりしたいね(笑)」

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photos by Masanori Naruse


【リリース情報】

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AZARI & Ⅲ
Azari & Ⅲ
(JPN) KSR / KCCD-440
発売中
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tracklist
1. INTO THE NIGHT
2. RECKLESS (WITH YOUR LOVE)
3. TUNNEL VISION
4. INDIGO
5. LOST IN TIME
6. INFINITI
7. CHANGE OF HEART
8. MANHOOKER
9. UNDECIDEO
10. HUNGRY FOR THE POWER
11. MANIC
12. MANIC (DJ SNEAK MANIATICO REMIX) *Bonus Track
13. INTO THE NIGHT (NICHOLAS JAAR REMIX) *Bonus Track

【オフィシャルサイト】
http://www.ksr-corp.com/label/artists.php?artist_id=214
http://azariandiii.com/

【VIDEO】

Azari & III – Manic (Directors Cut) from Love Commercial Production Co. on Vimeo.

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