Fat Freddy’s Drop『Blackbird』インタビュー


FFD_jk.jpg

1999年に結成された、ニュージーランドを拠点に活動する7人組ジャム系バンド、Fat Freddy’s Drop(ファット・フレディーズ・ドロップ:FFD)。2005年にリリースした「Hope」が、ジャイルス・ピーターソンにピックアップされるなどして世界的に注目を集めるようになった彼らは、これまでに『Based on a True Story』(’05)と『‪Dr Boondigga and the Big BW‬』(’09)、二作のスタジオ・アルバムを発表。レゲエ、ダブ、ソウル、ファンク、ジャズ、クラブ・ミュージックの要素を取り込んだ、カラフルかつディープなオーガニック・サウンドでファン層を広げ、『Based on…』は、本国ニュージーランドのみでも13万枚のセールスを記録している実力派です。

そんなFat Freddy’s Dropが、前作から約4年ぶりとなるサード・アルバムで、初の日本リリースとなる『Blackbird』(ブラックバード)をリリースしました。自分達のスタジオで、約18ヶ月かけてジャム・セッションやソングライティング、編集作業をし完成させたという本作。その内容は、サンプラーから生み出されたダンサブルなビートと、各メンバー(編成は以下をご覧ください)の奏でるリラックスした、そして時にフリーキーでシンフォニックなサウンドが一体化した、独特のエモーションとヴァイブスを有したものとなっています。

ここでは、本作『Blackbird』の内容とFat Freddy’s Dropの音楽性について語った、バンド・メンバー、スコット・タワーズ(チョッパー・リーズ)のインタビューをご紹介しましょう。なお、日本時間の6/27(木)5:00AMには、ロンドンで行われる彼らのレコ発ライブが、YouTubeで生中継される予定となっています。


FFD_A1.jpg

Fat Freddy’s Drop『Blackbird』インタビュー

__およそ4年ぶりの新作『Blackbird』の完成おめでとうございます!手応えと、今の気持ちはどんなものですか?

「(完成して)ほっとしているのと、すごく誇りに思っているのと、どう受け止められるかちょっと緊張しているのが、混ざっている感じだね。でも、ここまでの旅はすごく充実していたし、レコーディングもすごく楽しかった。アートワークなども揃った完成したパッケージを見るのも、楽しみでしょうがないよ」

__アルバムのリリースに5年近くの時間をあけるのは、決して短くありません。この間、ツアー以外はほとんどアルバムの制作作業をしていたのでしょうか? それとも、それぞれ違う活動もされていたのですか?

「はは、確かに短期間にアルバムをつくり続けることで有名ではないよね(笑)。でも、前作をリリースしてから何年かはツアーで忙しかったし、その後はこのアルバムの作曲などで、あっという間に時間が過ぎていった。その間に結婚したメンバーもいるし、家族が増えた人もいるし、たくさん釣り旅行にも行ったし、ゴルフもたくさんしたよ」

__本作の制作は、実際にはいつ頃始まったのでしょうか?

「タイトル曲の「Blackbird」とかは、もう7年前からつくり始めていた曲だったよ! でも、それ以外の楽曲の具体的な形づくりは、ここ18ヶ月の間にほとんどやってきたね」

__アルバムのテーマや方向性は、制作前から事前に話し合って決めていた感じですか? それとも自然に任せて完成していった感じですか?

「メンバーのDJフィッチーがよく言うんだ。“曲が自然と欲しがっている要素を教えてくれるよ”、って。何か決め込んでやるというよりは、その場で産まれたヴァイブスをそのまま反映していきたかったね。だからFFDらしく、それは結構曲によって変化している」

__作曲の行程は、どんなものだったのでしょうか。一部屋にメンバーが集まってジャムるスタイルですか? それとも誰かが骨組みを考えてくる感じでしょうか? また、以前の作品と比べて、何か違いはありましたか?

「何週間か、ただジャムるだけの期間を設けて、そこで出たアイディアの中から良いものを拾ってさらに作業していった、という感じだね。これは、僕らの典型的なやり方だよ。今までとの一番の違いは、そのジャム・セッションを自分たちの新しいスタジオ、“ベイズ”でやったことだ。だから、全部マルチ・トラックで録音していったんだ。初期セッションのテイクで、実際にアルバムに残った要素もたくさんあるよ」

__アルバムを通して存在する共通項、もしくはテーマは何だったと思いますか?

「古くて壊れかけてるような、KAWAIのエレクトリック・ステージ・ピアノかな(笑)。メンバーのクラバ(トランペット)が、全曲にしつこく入れたがってね。あとは、いつものことだけど、フィッチーのエンジニア技術は本当に素晴らしいね、今回も」

__アルバム・タイトルの“Blackbird”は、何を指しているんでしょう。何故このアルバム・タイトルにしましたか?

「アルバムの中で一番最初に完成した曲で、一曲目に入ってる曲で、そしてライブもこの曲から始めているから、このアルバム・タイトルにしたよ。「Blackbird」は、僕らにとって特にライブでは大切な曲になっていて、自分たちの音楽哲学を凝縮したような曲なんだ」

__本作の主なインスピレーションは、どんなところから来ているのでしょうか?

「歌詞の面で言うと、今までも全部そうだけど、ボーカルのジョー・デューキーの経験から来ているね。実は、FFDで一番好きな要素はここで、彼がとてもパーソナルなテーマで歌っていても、聴いている方はまるで自分のことだと思えるくらい、共鳴できるところがある。音楽的には、そうだね…やっぱり、みんなで同じ部屋で演奏するという、その場所にあった雰囲気、ヴァイブスが一番の影響かな。すごく心地好かったし、演奏自体もすごく上手くいったと思う」

FFD_A2.jpg

__FFDは、初期の頃からレゲエ/ダブなバンドと称されてきましたが、そこから変化し、特に本作では、あらゆるジャンルを超越した質感、スタイルを融合させていますね。これは、やはりメンバーそれぞれが、かなり多彩な音楽的趣味を持っているからなんでしょうか?

「面白いよね、勝手に“〜なバンド”って呼ばれるのは(笑)。実際、メンバーに最近は何を聴いてるのかって聞くと、たぶんレゲエやダブはかなりリストの下の方になると思うよ。昔からメンバー全員が幅広く音楽を聴くバンドだし、それが自分たちの音楽に反映されているというのは、ごくごく自然なことだと思う」

__ご自身で感じる、以前の2枚のスタジオ・アルバムからの変化や成長は、どこにありますか?

「ソングライティングは、時が経てば、どんどん成長し、進化すると思う。今回の楽曲は、今までで一番緻密に、そして深くつくり上げられたものばかりだと思う。全体のサウンド・デザインにはシンフォニックな要素すらあると思うし、それは僕らにとって凄く新鮮な感じだったね」

__FFDの楽曲のほとんどは、(いわゆるポップ・ソングの)3分前後の枠には入りきらず、かなり壮大に展開していくものばかりですね。こうして曲を長くするのには、どのような魅力を感じているのでしょうか?

「曲を長くして、壮大にジャムって展開していくのは、このバンドが始まったときの形でもあるんだ。最初は、フィッチーのDJセットに合わせて即興でジャムしてたからね。だから、バンドのDNAに欠かせない要素さ。で、魅力の一つは、素材を何回も色々と変化させたり、再構築したりできることかな。だから、特にライブでは僕らにとってもお客さんにとっても常に新鮮で、予想不可能で、面白いんだよ」

__FFDの音楽は、生ドラムを使用しないことなど、デジタル機材も駆使したユニークなものとなっていますが、それを感じさせない生々しさや、人間味のある温もりがありますね。こうした質感を出すのには、どういった部分に意識を置いているんでしょうか?

「そもそも使うサンプルのほとんどは、生演奏で録ったものなんだ。ジャム・セッションで得た4小節のループを使うことが多いかな。他のサンプルは、メンバーそれぞれが本業とは違う楽器を演奏したものも多い。ホペパが、普段のトロンボーンじゃなく、ベースを弾いたりとかね。これでユニークな環境を保てるんだ」

__あなた達の故郷、ニュージーランドは、独特の環境になっているのではないでしょうか? そこに拠点を置く魅力や、FFDの音楽に与えている影響などについても教えてください。

「最初ヨーロッパでブレイクした時、実は拠点を数ヶ月ヨーロッパに置いたんだ。でも、家族や子供、家のことを考えると、それを続けるのは困難でね。今こうして故郷でみんなと一緒にいながら、世界に向けての発信もツアーもできるようになったというのは、本当に嬉しく思う。ニュージーランドのように他から離れた場所にいると、音楽的には、いろんな部分からインスピレーションをもらえるという自由があるんだ。誰も何も言わないかね」

__ところで、日本で正式に国内盤が出るのが本作が初めてですが、日本にはプライベートなどで来たことはありますか?

「個人的には、ヨーロッパからの帰りに、一回だけ飛行機待ちで10時間滞在したことがあるよ。成田から東京まで電車に乗ったんだけど、それだけでもすごい経験だった。日本は、本当にずっと演奏しに行ってみたい場所の一つなんだ。頑張って近々実現させたいね!」

__日本にも、このアルバムを、そして来日を楽しみにしているファンがたくさんいるはずですので、ぜひメッセージをお願いします。

「いつも応援ありがとう! AROHA NUI!(マオリ語で “たくさんの愛を込めて”)」


FAT FREDDY’S DROP:メンバー
ダラス・タマイラ(ジョー・デューキー):ヴォーカル
クリス・ファイウム(DJフィッチー):mpc/サンプラー/エフェクト
テヒマーナ・カー(ジェットラグ・ジョンソン):ギター
イアン・ゴードン(ドビー・ブレイズ):キーボード
トビー・ライング(トニー・チャン):トランペット
ジョー・リンゼー(ホペパ):トロンボーン
スコット・タワーズ(チョッパー・リーズ):サックス

Dallas Tamaira a.k.a. Joe Dukie: vocals
Chris Faiumu a.k.a. DJ Fitchie: mpc, samplers & effects
Tehimana Kerr a.k.a. Jetlag Johnson: guitar
Iain Gordon a.k.a. Dobie Blaze: keyboards
Toby Laing a.k.a. Tony Chang: trumpet
Joe Lindsay a.k.a. Hopepa: trombone
Scott Towers a.k.a. Chopper Reedz: saxophone

【リリース情報】

FFD_jk.jpg

FAT FREDDY’S DROP
Blackbird
(JPN) P-VINE / PCD-18747
6月19日 日本先行発売
HMVでチェック

tracklist
1. BLACKBIRD
2. RUSSIA
3. CLEAN THE HOUSE
4. SILVER AND GOLD
5. BONES
6. SOLDIER
7. NEVER MOVING
8. MOTHER MOTHER
9. BOHANNON

【VIDEO】
ロンドンで開催されるレコ発ライヴが、YouTubeで生中継されます。
日本時間:6月27日(木)5:00AM / GMT時間:6月26日(水)20:00

【オフィシャルサイト】
http://p-vine.jp/artists/fat-freddys-drop
http://www.fatfreddysdrop.com/

interviewカテゴリーの記事