KASABIAN『Velociraptor!』インタビュー


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’04年にシングル「Club Foot」でデビューするや、瞬く間にロック・シーンを席巻し、一躍人気バンドとなったカサビアン。ここ日本においても、デビュー・アルバム『カサビアン』発売前に、サマーソニック東京/大阪両会場で入場規制を巻き起こし、アルバムもゴールド・ディスクを獲得するという快進撃をみせたUKロック・アーティストです。以降、全英アルバム・チャート初登場1位を記録した『エンパイア』(’06)、全英チャート2週連続1位を記録した『ルナティック・アサイラム』(’09)を発表し、名実共に確固たる地位を築いています。

そんな彼らが、通算4作目となるニュー・アルバム『ヴェロキラプトル!』(VELOCIRAPTOR!)をリリースしました。前作同様ダン・ジ・オートメイター(ダン・ナカムラ)を共同プロデューサーに起用し、これまで以上にバラエティー豊かな楽曲群をつくり上げた本作。その内容は、アンセミックで高揚感のある「Switchblade Smiles」や「Days Are Forgotten」から、新境地を感じさせる美しい旋律が印象的な「Goodbye Kiss」まで、カサビアンらしい、斬新にしてクラシックなサイケデリック・ロックを楽しめるものとなっています。

ここでは、本作『ヴェロキラプトル!』の内容について、メンバーのトム・ミーガン(Vo)とサージ・ピッツォーノ(G)に話を聞きました。なおカサビアンは、2012/1/10 (火) 横浜ブリッツ、1/12 (木) ZEPP OSAKA、1/13 (金) ZEPP NAGOYA、1/15 (日) 新木場スタジオコースト、1/16 (月) 新木場スタジオコーストで来日公演を行う予定となっております。


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KASABIAN

進化を続けるモダン・ロック・バンドが到達した、
新境地のサイケデリック・サウンド・マジック

カサビアン流ポップ・アルバム

__前作『ルナティック・アサイラム(West Ryder Pauper Lunatic Asylum)』(’09)は、内容的にもセースル的にも大成功を収めましたが、あなた達があの作品から得たことは何でしたか?

トム・ミーガン「リスペクトだね」
サージ・ピッツォーノ「そう、リスペクトだね。あんなにイカれたアルバムをつくっても、売ることができる(笑)。近未来的なサイケデリック・アルバムをつくって、それを売ることができるんだよ。あのアルバムで、俺たちはそれを証明できたんだ。最近の多くのバンドは、そういったことを忘れていて、毎回同じような作品しかつくらないよね。守りの姿勢でやっているバンドが多い。でも、そうじゃなくても売ることができるってことを、俺たち証明したんだ」

__では、そんな前作を経て、ニュー・アルバム『ヴェロキラプトル!』の構想と準備は、どのようにスタートしましたか?

サージ「曲づくりの切り替えは、すごく早かったよ。前作とは全く違う作品を早くつくりたい、っていう気持ちだったんだ。このアルバでは、すごく直接的で、メロディアスで、壮大なモダン・ロックの傑作アルバムをつくりたい、という意気込みがあったね。だから、ツアーが終わってから、すぐ制作に取りかかったよ」

__前作は、実験的な要素も取り入れたコンセプチュアルな作品でしたが、今作では、作品コンセプトといったものは何かありましたか?

トム「僕が思うに、自分達なりの『Rubber Soul』(65’:ザ・ビートルズ)や、『After math』(’66:ザ・ローリング・ストーンズ)のようなアルバムをつくりたかったよ。もちろん自分達なりにだから、レフトフィールドでメインストリームではない、普通じゃないサウンドは健在なんだけど、ポップな作品を一発つくってやろうぜって思っていたんだ。素晴らしい歌モノの曲を次から次に並べたような、カサビアン流のポップ・アルバムをつくりたい、という気持ちだったと思う」

__そういった意気込みで制作に取り組もうと思ったのには、何か心境の変化があったんですか?

トム「いや、それしか残ってなかったからさ(笑)」
サージ「いろんなことをやってきた中で、もう、あとはコレかなってことだよ」

__なるほど(笑)。いたって明快な流れだったんですね。

サージ「ファースト・アルバムというのは、田舎の、それこそ農場みたいなところに集まって、みんなで精神世界に入り込んで、がっちりハイになりながらつくったアルバムだった。セカンド・アルバムというのは、お酒に浸りながら、酒に浸り尽くしてつくったアルバムだった。で、前作というのは、自分たちのアイディアを頭の中でものすごく膨らましてつくったアルバムだった。そしてこの4枚目のアルバムで、俺たちはここに行き着いたというわけさ」

サクサク進んだ曲づくり

__アルバム・タイトルの“ヴェロキラプトル”(Velociraptor:中生代白亜紀に生息していたとされる小型恐竜の名前。映画『ジュラシック・パーク』でも有名)は、かつてバンド名の候補だったこともある名だそうですね。なぜ今作のタイトルに使おうと思ったんですか?

トム「ハァ、またこの質問か(笑)」
サージ「単純に、言葉として響きがいい、かっこいい…としか言えないんだよね(笑)。それだけさ」

__バンド名の候補だったことがある言葉だという話を聞くと、言わば本作はセルフ・タイトル・アルバムに限りなく近い自信作とも受け取れるのですが、いかがですか?

トム「そうだな」
サージ「そうだね。すごく自信に満ちたタイトルだと思うし、ウータン・クランのようなアーティストが使いそうな、危険な匂いがタイトルでもあると思う。“何だ、これ?”って、思わず手に取って、早く中身が知りたくなっちゃう感じ。で、このアルバムには、そういった危険な要素が入っていると思っているんだ。そういった意味で、すごく良いタイトルだと思う」

__今回、曲づくり〜レコーディング自体はスムーズに進行したのでしょうか?

サージ「ああ、とてもスムーズだった。すごくサクサクといったよ。例えるなら、川に魚がいっぱいいて、釣り竿を投げ入れれば、魚がどんどん釣れちゃう感じだった。一日で一度に5〜6匹くらい釣れて、しかもニシンとか鮭とか…」
トム「ハハハハ」
サージ「いろんな種類の魚が釣れちゃう感じ。何ヶ月もの間、何も捕まらない時もあるけど、今回は面白いくらいに魚が釣れたな。で、俺たちは、それをただ焼いて食べたわけさ」

__本作は、前作同様ダン・ジ・オートメイター(ダン・ナカムラ)と共に音を仕上げていますが、音づくりではどんな点を重視しましたか?

サージ「カサビアン独特の音っていうのは、自分たちでつくり上げているものなんだけど、ダンはそのサウンドをより大きくしてくれる。サンフランシスコの彼のスタジオに行って、俺たちがつくった音楽を聴くと、自分たちの音が顔面に叩き付けられるような感じがするんだよね。ドシン、とね。ダンは、ミックスする耳がいい」

__ちなみに、サンフランシスコという土地は、あなた達に特別なインスピレーションを与えてくれる場所ですか? かつてはサイケデリック・カルチャーの中心地の一つだったわけですが。

サージ「サンフランシスコは、タコスがおいしいね。それしか理由はないかな(笑)」
トム「ダンのスタジオがあるから行く、って感じだよな」
サージ「ヘイト・アシュベリーなんかよりも、俺たちの地元レスターにある魚市場の方が、断然サイケデリックだよ(笑)」

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型を打ち破る楽曲群

__歌詞づくりにおけるインスピレーション源は何でしたか?

サージ「歌詞の面では、何曲か…曲によっては懐古的なものがあるね。自分たちも歳も重ねて、そうすると、ちょっと昔のことなんかを振り返ったりすることも増えるだろ? 最近は、4作目までアルバムをつくれるくらいバンドが長続きすること自体、珍しいことになってるしね。だから、自分たちが15年間の中でいろいろ経験してきたことを振り返ってみよう、っていう内容の歌詞も多いんだ」
トム「そうだね」

__では、本作を通じて特に伝えたかったことは、何ですか?

サージ「俺たちは、メッセージや説教みたいなものには興味ないんだ。作品が完成して、いったん自分の手を離れて人に渡ってしまったら、あとは聴いた人の解釈や印象に全てを任せている。聴いて楽しんでもらえれば、それでいいと思っているんだ。だから歌も、その人のものになる。自分達の立場から、こうじゃなきゃいけないっていうのは、特にないよ」

__本作の制作を通じで、印象に残っているエピソードは何ですか?

トム「中世の話で盛り上がったりしたよ。『THE TUDORS』っていう15〜16世紀くらいの王族や騎士の物語を描いたテレビ・ドラマが流行っていて、それを観ながら、誰かが持ってきたマッシュルームを食べてハイになっていたことがあったんだ。で、自分達が中世にいたらどうなんだろう?って話になってさ。“サージは、普通に王子だろう”とか、“俺はジェスター(宮廷道化師)じゃないか?”とかね」
サージ「マネージャーは、巻物を読み上げる人だね。“髪の毛がカールしているから、そのものだよ”とか」
トム「で、そんな話をしながら、ウェットスーツを着て5時間くらい歩き回ったりしてた(笑)。…こんなエピソードでいいか?」

__いいですよ(笑)。先行リリースした「Switchblade Smiles」は、どのようにして誕生した曲ですか?

サージ「最初にシンセのフレーズを思いついたんだけど、いわゆる燃え上がる、それこそモッシュできそうな曲だね。イメージとしては、正に未来系ロックンロールって感じかな。もしレッド・ツェッペリンが今の時代活動していたら、こういう音楽をつくってたんじゃないかと思う。エレクトロニックの要素、フィリップ・グラスみたいな要素、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいな要素がある曲さ。出してみたら、驚くくらいウケがよくて、すごく手応えを感じているよ」

__最新シングル「Days Are Forgotten」は、どのようにして誕生した曲ですか?

トム「これ以上ないってくらいの、最高のシングルだと思う。今の時代、この曲に対抗できる他のこうした曲ってないと思うね。ベースラインがどんどん引っ張っていって、徐々に音を積み上げて、盛り上げていって、最後にサビで爆発するっていう曲さ。自分達らしさが凝縮した曲だと思う」

__本作には「Goodbye Kiss」のように美しい曲調の曲も入っていますが、あなた達自身は、このアルバムを象徴する曲は何になると考えていますか?

トム「「Acid Turkish Bath (Shelter From The Storm)」だね。この曲は、美しくて、インテリジェントだよ」
サージ「僕も同じかな。他に例を見ない曲だと思うし、正にアルバム全体をそういう雰囲気にしている曲だと思う。俺たちは型に入れることができない存在だ、ということを象徴している曲だね。みんなが自分たちを入れ込もうとしていた箱を分解して、解体して、そのバーツを世界の四隅に置いてきたから、もう二度とその箱を元に戻せないっていうくらいのバンドになった…ということを示しているものだと思う」

カサビアンのロックとは?

__あなた達は、絶えず新しいサウンドをクリエイトしながらも、常にロックの本質的な部分を感じさせてくれる、数少ないバンドだと感じています。あなた達にとってロックとは何でしょうか?

サージ「俺たちがロック・バンドなのは、ギターを使っているかなじゃないかな」

__それは、どういうことですか?

サージ「俺たちがロック・バンドでいられるのは、全てギター・サウンドのおかげさ(笑)。ギターがあるからロックなんだ、ってことに尽きると思う。俺たちは、今存在するあらゆる音楽からインスピレーションをもらって、それらの要素を取り入れて音楽をやっているけど、結局、最終的にどの曲にもギターが入ってるから、俺たちはロック・バンドなんだ。例えば、ザ・ケミカル・ブラザーズとか、その他いろんなエレクトロニック・ミュージックからインスピレーションをもらったとしてもね」

__なるほど。

サージ「で、今のロック・バンドは、みんな後ろ、過去を見ていて、前を見ているバンドがいない。でも俺たちは、今どんな音が鳴っているかっていうことに耳をしっかり傾けて、今生きている人達に向けてロックをつくっているんだ。俺たちは決して、’60年代の音をそのまま再生しようとなんて考えてないからね」

__分かりました。では今後の活動目標を教えてください。

サージ「今は、とにかくアルバムの曲をライブでやるのが楽しみだね」
トム「そうだな。楽しみで仕方ないよ!」


【リリース情報】

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KASABIAN
VELOCIRAPTOR!
(JPN) SONY / SICP 3272-3(初回生産限定デラックス盤:CD+DVD)
※21曲114分に及ぶライブDVD(ライヴ・フロム・ザ・02・ダブリン 27/11/09)付
HMVでチェック

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KASABIAN
VELOCIRAPTOR!
(JPN) SONY / SICP 327(通常盤:1CD)
tower.jpでチェック

tracklist
(CD)
01 Let’s Roll Just Like We Used To /レッツ・ロール・ジャスト・ライク・ウィ・ユーストゥ
02 Days Are Forgotten /デイズ・アー・フォーガットゥン
03 Goodbye Kiss /グッバイ・キス
04 La Fee Verte /ラ・フェ・ヴェルテ
05 Velociraptor! /ヴェロキラプトル!
06 Acid Turkish Bath (Shelter From The Storm) /アシッド・ターキッシュ・バス (シェルター・フロム・ザ・ストーム)
07 I Hear Voices /アイ・ヒア・ヴォイシズ
08 Re-wired /リワイヤード
09 Man Of Simple Pleasures /マン・オブ・シンプル・プレジャーズ
10 Switchblade Smiles /スウィッチブレイド・スマイルズ
11 Neon Noon /ネオン・ヌーン
12 Pistols At Dawn /ピストルズ・アット・ドーン [日本盤ボーナス・トラック]
13 Julie And The Moth Man /ジュリー・アンド・ザ・モス・マン [日本盤ボーナス・トラック]
14 Black Whistler /ブラック・ホイッスラー (MONO) [日本盤ボーナス・トラック]

(初回限定盤DVD)
Julie and the Moth Man / Underdog / Where Did All The Love Go? / Swarfiga / Shoot The Runner / Cutt Off / Processed Beats / West Ryder Silver Bullet / Thick As Theves / Take Aim / Empire / Last Trip (In Flight) / I.D. / Ladies and Gentlemen (Roll The Dice) / Fire / Fast Fuse / The Doberman / Club Foot / Vlad The Impaler / Stuntman / L.S.F. (Lost Souls Forever) / Switchblade Smiles (ビデオ) [日本盤ボーナス・ビデオ]

【VIDEO】

【LIVE INFO】

KASABIAN 来日公演

横浜
2012年1月10日 (火) 横浜ブリッツ
OPEN 18:00/ START 19:00
TICKET:¥6,800 (1F:スタンディング・2F:指定/税込) 別途 1ドリンク
一般プレイガイド発売日:10月8日(土)
クリエイティブマン 03-3462-6969 主催:J-WAVE

大阪
2012年1月12日 (木) ZEPP OSAKA
OPEN 18:00/ START 19:00
TICKET:¥6,800 (1F:スタンディング・2F:指定/税込) 別途 1ドリンク
一般プレイガイド発売日:調整中
キョードーインフォメーション 06-7732-8888

名古屋
2012年1月13日 (金) ZEPP NAGOYA
OPEN 18:00/ START 19:00
TICKET:¥6,800 (1F:スタンディング・2F:指定/税込) 別途 1ドリンク
一般プレイガイド発売日:10月15 日(土)
サンデーフォークプロモーション 052-320-9100

東京
2012年1月15日 (日) 新木場スタジオコースト
OPEN 17:00/ START 18:00
TICKET¥6,800 (オールスタンディング/税込) 別途 1ドリンク
一般プレイガイド発売日:10月8日(土)
クリエイティブマン 03-3462-6969

東京
2012年1月16日 (月) 新木場スタジオコースト
OPEN 18:00/ START 19:00
TICKET:¥6,800 (オールスタンディング/税込) 別途 1ドリンク
一般プレイガイド発売日:10月8日(土)
クリエイティブマン 03-3462-6969

http://www.creativeman.co.jp/

【オフィシャルサイト】
http://www.kasabian.co.uk/jp/home/
http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/BV/kasabian/

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