Matthew Herbert『One Pig』インタビュー

Pocket

MH_OnePig_jk.jpg

’90年代半ばから独自の音楽活動を展開し、奇抜なアイディア、革新的なコンセプトの楽曲/アルバムを次々と送り出してきた鬼才、マシュー・ハーバート。そのユニークな音楽性で不動の人気を獲得している、UKエレクトロニック・ミュージック・シーンきっての知性派アーティストです。

彼が、『ワン・ワン(One One)』『ワン・クラブ(One Club)』に続く、一人、一夜、一個など、“1”にまつわるモノや事象にこだわったシリーズ、“One”三部作の最後を飾る作品、『ワン・ピッグ(One Pig)』を7/6にリリースします。一昨年、アルバム・コンセプトがアナウンスされた際に、大きな反響を呼んだ、シリーズ最大の問題作です。そのコンセプトとは、“豚が生まれてから殺されるまでに発する音を使って音楽をつくる”という、衝撃的なもの。過去2作同様、ハーバートならではの発想でつくられたその内容は、現代社会の食文化の在り方について考えさせられる、実験的な内容となっています。

本作『ワン・ピッグ』の内容について、マシュー・ハーバートに話を聞いてみましょう。なお彼は、9/22(木)に東京リキッドルーム(ONE PIGショー)で、9/23(金)に京都メトロ(DJセット)で、そして9/24(土)に、SBTRKTと共に東京リキッドルーム HOUSE OF LIQUIDで公演をすることが決定しています。


MH_A.jpg

MATTHEW HERBERT

“One”シリーズのラストを飾る第三弾アルバムは、
豚の一生をレコーディングし音楽化した衝撃作

__『ワン・ピッグ』は、『ワン・ワン』、『ワン・クラブ』に続く、“One”シリーズ三部作の完結編となりますね。まず、この三部作をつくろうと思った理由を、改めて教えてください。

「“一つのもの”からなるレコードをつくりたかったんだけど、歌をつくろうか、クラブ・ミュージックにしようか、それとも全く別の実験的かつ政治的なものにしようか、迷って決められなかった。だから全部つくったんだ」

__では、最初から三部作にしようと思ってたわけではないのですか?

「最初から意図して三部作をつくったわけじゃないよ。ただアイディアをまとめる方法として、3つの方法を試してみたかったんだ」

__今回の『ワン・ピッグ』は、三部作の中ではどのような位置づけの作品だと言えますか?

「『ワン・ピッグ』は、そのコンセプトを発表してすぐ、一番話題のアルバムになったね。確実に、最も物議をかもしたし。いろんな意味で、嬉しいよ。僕にとって最も興味があるのは、実験的なところだし。つまり、音楽において使われたことのない音を使うっていう部分だね。そういう意味では、『ワン・ピッグ』は自分にとってチャレンジのしがいのある作品だったんだ」

__今作は、一匹の豚の誕生から死までを追ったコンセプト・アルバムとなっていますが、曲名が日付になっていますね。2009年8月から2010年2月までの7ヶ月と、2010年8月、2011年5月にそれぞれ何があったのか、簡単に教えていただけますか。

「2009年8月は、豚が生まれた日さ。そしてその成長過程を録音していって、2010年2月に、その豚は殺された。で、そこからしばらく時間が経って、2010年8月に調理され、食べられた。各曲はその過程の、それぞれの音をもとに、スタジオで制作したものなんだ」

__あなたの、“このアルバムは、ある豚が一生で発する音を使ってつくられる。その豚の誕生の瞬間、生きている間、死を迎える瞬間、そしてシェフに渡りご馳走が用意される間、その全てが録音される。そして音楽となる”というコメント通りの作品となったわけですね。

「それで、2011年5月に最後の曲を録音し終えて、レコードは完成した。詳しくは、僕のブログを見てくれれば分かると思うよ(日本公式サイトで、豚日記の日本語版が公開されています)」

__『ワン・ワン』と『ワン・クラブ』は、実験的ながらもエンターテイメント性も感じられる作品でした。しかし『ワン・ピッグ』は、そういった要素よりも、あなたの強い主張が感じられる内容になっていますね。

「豚が生まれてから殺されるまでを捉えた作品にエンターテイメント性を入れることなんて、誰にもできないんじゃないかな。それは内容から考えて適切ではないし、命の価値を冒涜することにもなるからね。でも、このアルバムをあえて聴きにくいようにつくったかと言えば、もちろんそうじゃない。聴きにくいと感じるのは、もしかしたら僕らが豚の言語を理解しないためかもしれないね」

MH_A2.jpg

__今作には、あなたの激しい感情も表現されていると感じます。このアルバムは、エモーショナルな作品なのでしょうか?

「今作がエモーショナルだという意味では、あなたの言っていることは正しいかもしれない。このアルバムは、自分の中に多くの政治的、文化的、音楽的、道徳的疑問を生み出したからね。どこまでが許されるのか、という議論を作曲で引き起こすのは、稀なことだよ。普段、僕が音楽を書く時、“生と死”とは無関係なんだけど、このアルバムは違っていた。多少感情的になってしまったのは、否定できないね」

__あなたは、これまでに様々な音をサンプリングをしてきましたが、動物の声というのは初めてだったのではないですか?

「このアルバムを注意深く聴くと、最初の6曲はかなり抽象的で、普通の曲としてイメージしにくいものになっていると思う。作曲も一番難しかった。これはつまり、自分がコントロールできなかったからで、動物を軸につくらなければならなかったんだ。背景に別の音が多く存在していて、あまり切り離しができなかったりしてね」

__なるほど。

「そして、豚が死んでからの曲は、もっと普通なものなっている。これは、死んだ動物の方がコントロールしやすいからさ。もちろんコントロールができる方が、できないよりはいいんだけど、実際は、豚が生きていた間の不規則な音で音楽をつくるというチャレンジを、かなり楽しめたよ」

__アルバム最後の曲「May 2011」は、何を歌っているのでしょうか?

「これは、豚への哀悼を込めて、プロジェクトの最後に書いた曲なんだ。豚が生まれた小屋に戻って、豚との思い出に歌を歌ったんだ」

__で、『ワン・ピッグ』のセットで、9月に来日公演を行いますね。どのようなショーになるのか教えてくさい。

「『ワン・ピッグ』のライブ・ショーは、5人編成のフル・バンド・ライブになるよ。このショーのためだけにデザインされたユニークな電子楽器を演奏したり、豚の皮や骨を楽器として使ったりするんだ。さらに、ステージにはシェフも登場して、ステージ上で料理をつくるパフォーマンスも行う予定だよ。とはいえ、まだどこでも演奏していないから、どんなステージになるのか自分自身も分かっていない部分があるけどね。新たなチャレンジを楽しむつもりだ」

__楽しみにしています。では最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

「今回のショーを日本で行うことができて、光栄だよ。いつもサポートしてくれてありがとう。9月に会えるのを楽しみにしているよ」


【リリース情報】

MH_OnePig_jk.jpg

MATTHEW HERBERT
One Pig
(JPN) ACCIDENTAL/HOSTESS / HSE-30273/AC40CDJ
9月7日発売
HMVでチェック

tracklisting
1 August 2009
2 September
3 October
4 November
5 December
6 January
7 February
8 August 2010
9 May 2011

※ 同時発売で、名作『Bodily Functions』の10周年記念盤(CD2枚組)もリリース。
BodilyFunctions.jpgg

HERBERT
Bodily Functions Special 10th Anniversary Edition
(JPN) ACCIDENTAL/HOSTESS / HSE30274
9月7日発売
HMVでチェック

【オフィシャルサイト】
http://www.hostess.co.jp/matthewherbert/
http://www.matthewherbert.com/

【来日情報】
9/22(木)リキッドルーム(東京)
LIQUIDROOM 7th ANNIVERSARY and Hostess Club presents
Matthew Herbert’s ONE PIG
http://www.liquidroom.net/schedule/20110922/6731/

9/23(金)メトロ(京都)
Angle × Matthew Herbert
ONE PIG / Bodily Functions (Special Edition) W release party
http://www.metro.ne.jp/schedule/2011/09/23/index.html

9/24(土)リキッドルーム(東京)
HOUSE OF LIQUID powered by Hostess Club
Featuring DJ: Matthew Herbert, MOODMAN / LIVE: SBTRKT
http://www.liquidroom.net/schedule/20110924/7041/

Posted in interview.