OZROSAURUS『OZBUM ~A:UN~』インタビュー


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横浜を拠点に活動する、ラッパーのMACCHOとDJ SN-Zからなるヒップホップ・ユニット、OZROSAURUS(オジロザウルス)。’96年に活動をスタートして以来、その力強いメッセージと圧倒的なライブ・パフォーマンスで、ジャパニーズ・ヒップホップシーンに大きな影響を与えてきた彼らが、通算5作目、SN-Z正式加入後初となるオリジナル・アルバム『OZBUM ~A:UN~』をリリースしました。アルバムのトータル・プロ デューサーに、数々のクラシックを共に生み出してきたDJ PMX(DS455)を迎え制作した、前作『Hysterical』以来約5年ぶりとなる注目作です。

ここでは、本作『OZBUM ~A:UN~』の内容とその背景について語った、OZROSAURUSのインタビューをご紹介しましょう。


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OZROSAURUS『OZBUM ~A:UN~』インタビュー

“ハマの大怪獣”の異名を持つOZROSAURUSは、横浜“045”エリアを拠点とするヒップホップ・ユニットである。このユニットは、14歳の頃にマイクを握って以来、キレのあるラップを武器に国産ヒップホップ・シーンの第一線までのしあがったラッパーのMACCHOと、本場NYへの武者修行で会得した抜群の手腕で長きに渡ってライヴDJとしてOZROSAURUSを支えてきたDJ SN-Zの二人によって現在は構成されている。傑作との呼び声高い2001年リリースのファースト・フル・アルバム『Rollin’ 045』でその存在を全国に知らしめたOZROSAURUSは、ここまで計4枚のフル・アルバムを発表しており、そのすべてで国産ヒップホップ界屈指のプロデューサー、DJ PMX(彼もまた横浜の重鎮である)が楽曲を提供してきた。そんなDJ PMXが大幅に関与するということで、ファンの期待を大きく膨らませていた通算5枚目の新作『OZBUM ~A:UN~』は、前作から約5年の時を経て遂に待望のリリースを迎えた。

__前作『Hysterical』から今回のアルバムまでの5年間をふり返って、いかがでしたか?

MACCHO「ひたすらライヴをやってたし、まるで止まってるという感覚は無かったですね。でも現場にずっと行き続けてるなかで“何かが足りない”っていう感覚はあったし、やっぱり制作していると精神状態もすごくいい」

__客演などでもMACCHO君のクレジットは頻繁にお見かけしましたが、オリジナル・アルバムを作るということに関して、これだけ時間をかけたことにはどんな理由が?

MACCHO「ぶっちゃけ理由は無いです(笑)。周りも巻き込んで制作を始めようっていう風になったけど結局やらなかった、っていうのが2回くらいあったから、必然的に時間も空いたんですよ。やっぱり自分の中に溢れてくる感情が無い時は、そこまで作品を残したいっていう気持ちにもならなかった。“じゃあ俺、リリック書いてくるわ!”とか言いながら旅に出て、何も書かずに遊んで帰ってきたこともあったし(笑)。でも例えば三島由紀夫文学館に行ってみて、“こんなにたくさんの作品を残す人もいるんだな。すごいな”って思ったり……そういうインスピレーションはいろいろ受けてましたけどね」

__そういった中で、制作開始に至るスイッチが入ったのは、どういったきっかけで?

MACCHO「きっかけは“真剣にここで一枚残したい”って思ったから。あとは全部タイミングですね。何度もやるタイミングはあったけど、本当の意味でのタイミングはここだっていうことを自分は知ってたんですよ。昔から常にそうだけど、“根拠の無い自信”が自分の中に無い時はなかなか第一歩が踏み出せなくて。ぶっちゃけ“根拠の無い自信”って、やっぱり歳とともに自分でも納得しなくなっていくと思うんですよ。でも、去年の10月くらいにはその無駄な自信があったから、これはいまだなと思って(笑)」

__なるほど。そんなOZROSAURUSの再始動を対外的にも印象付けたのが、DJ SN-Z君が昨年4月にリリースしたミックスCD『HARD PACK』の存在だと思います。

DJ SN-Z「かなりヒップホップ的なアプローチをしたああいう作品をメジャー・レーベルから出せたっていうのは、いまふり返ってみてもすごく良かったと思う。いい形で改めて俺らの名刺代わりにもなったと思うし、OZROSAURUSとして久しぶりの音源になった「Profile」も入れられたし」

__「Profile」は、DJ PMXが手がけた強烈な一撃でしたが、どういったアイディアからこの曲を作ろうと思ったのですか?

MACCHO「あれは俺らがEMIに移籍してから一番最初に出した曲だけど、その当時って“メジャー行くとは思わなかった”とか、いろいろなことを言われてたんですよね。だから、そういう声も全部含めて、フォーカスした曲。俺の生い立ちを知らない人たちにも改めて説明しておこうかなっていうのもあったし。いままでの曲でもそういうのはあったけど、これに関してはあのタイミングでどうしても言っておきたかったし、必要だった曲。今回のアルバムで“これは言っておかないとな”って思って作った唯一の曲かもしれない。前のアルバムのリリックで、“メジャーのナンセンスと俺の伝説/どっから出したってOZROSAURUS”って言ってるけど、あれは“メジャーがナンセンス”っていうことを強調してるんじゃなくて、“どっから出したってOZROSAURUS”っていう部分を取ってもらいたかった。インディーズだってナンセンスなことはあるし、結局は自分自身だから。俺はメジャーに行きたいとかインディーズでやりたいとか、そういうところにあんまりこだわりを持ってない。タイミングと環境を考えて、“この人たちと一緒にやりたい”って自分が思うかどうかで。人間の話だからさ。俺がEMIに来たのだって、今日が初めてだからね(笑)」

__今作は、SN-Z君が正式にOZROSAURUSに加入してから初のアルバムですね。制作にあたって、いままでと感覚の違いはありました?

MACCHO「うん、すごくあった。俺の中でとにかくまずラップのクオリティを追求したいっていう気持ちがあったけど、今回は前よりも周りの意見を聞いたかな。俺がいつもやりたいと思ってること、それからたったいまその時に目指してる形……それがなんとなくでも見えてる人たちに、“それは違いますよ”っていう方向も含めて今回はディレクションしてもらったね」

__では、改めて今回のアルバム・タイトルにどんな意味を込めたのか訊かせてください。

MACCHO「元々深い意味があって使った言葉じゃなかったけど、サード・アルバムを出した頃からお客さんからも“バム、ヤバかったよ”っていう言い方をされるようになって(笑)。それから“オジバム”っていう言葉は、自然な流れでリスナーとかファンに浸透していって。そんなことってあんまりないし、狙ってやれるようなことでもない。だからこそ、そういう言葉は大事にしたいなって。アルバムを一言で表すのもすごく大変だし、じゃあ今回はその“オジバム”っていう言葉を初めてタイトルに使ってみようかなって思ったんですよ」

__“A:UN”に関してはどういった意味を?

MACCHO「(今作を含めて過去にもOZROSAURUSのアートワークを手がける)ADUさんと電話で話してたら、ずっと“このアルバムは‘阿吽’だから。すべては‘あ’と‘うん’で片付くから”って言ってて(笑)。で、電話切った後に“俺の中でも、正直‘阿吽’なんだよな”って考えてたんですよね。言ったら、宇宙の始まりと終わりとリンクする……っていうものすごく壮大な話になるんだけど(笑)。でも作品と自分っていう人間とか、歌詞と自分の普段の言動とか、いろんなものを比較するとこのアルバムは“陰と陽”だなって思ってたし、その“陰と陽”は“阿吽”っていう言葉に置き換えられるしっていう感じですね」

__ストレートなタイトルということもありますし、前作の18曲に対して今回は12曲、収録時間で言うと40分を切っていて、それはある意味で自信の表れなのかなとも思いました。

MACCHO「そこもすごくポイントですね。前の体制でやってた頃から、10曲前後のアルバムで勝負してみるっていうのは考えていて。いままではあんまりそういうイメージも無かったけど、時間が経ってみて、そういう形でもアルバムを成り立たせることができるならやってみたいなって思ったんですよね」

__ラッパーとして、厳選した曲数でアルバムを成立させるっていうのは難しいんですか?

MACCHO「どうなんでしょうね。ただ、いままではやってなかったし、やれてなかったし、やろうともしてなかった。単純に出てくるものを全部詰め込むのがアルバムだって思ってたけど、今回は作ってる曲に自分で“最高じゃん!”って思えなければ、その場で作るのをやめちゃってた。これは良くなりそうだな
って思えるものだけをちゃんと形にして。だから、何曲も録ってそこから厳選したっていう感じではなくて。録った曲はこのアルバムに入ってる曲がすべてですね」

__なるほど。リリックを書いている時点で、曲をふるいにかけていったというか。

MACCHO「うん。まあヴァースを8小節くらい書いた段階で、もうこれはキテるキテないっていうので判断してた。“いや、でももしかしたら良くなるかもしれないよ”っていうような言葉は、俺にとっては全然気休めにもならない感じで。一行残らず変態になりたかったんですよね」

__ラップがイケてるかイケてないかということに関しては、完全にMACCHO君が判断する感じだったんですね?

MACCHO「もちろん俺が目指してるところをみんなに分かってもらった上で、そこにちゃんと着地してるかっていうのは常にみんなの意見を聞いてたかな。気付くとフロウにすごい抑揚を付けまくってて、“みんな喜んでるんだろうな”とか思ったら“ンンッ(咳払い)。最初の方が良かったよ”みたいな。俺はすげ
ぇ感情的にラップしてたけど、“もうちょっと冷静になった方がいいよ”みたいな。そういう残念なこともありましたけどね(笑)。でも、それを言われてプレイバックして聴いてみると、“うん、確かに!”みたいなさ(笑)。別に自分が音楽に長けてるとは思ってないし、全部が感覚なんで。だから“ああ、やっぱり人が客観的に言ってる通りだな”って思ったところもありましたね。SN-Zは俺のラップのクセから何から、いい時と悪い時も含めて細かい部分まで全部分かってくれてるからそこは大きかったし、みんなが親身になって一緒に考えてくれるのってやっぱり感動する。その嬉しさも作品に反映できたと思う。すごく新しい感覚だったかな」

__本当に信頼できるチームで制作ができたということですね。

MACCHO「そうそう」

__今作は圧倒的にメッセージを伝えるということにシフトしていたように感じました。前作を改めて聴き直してみると、そういった部分では4枚目より3枚目に近い感じなのかなって。そこに関してはいかがですか?

MACCHO「うん。でも、まあ単純に結果的にっていう感じだね。自分は全部の過去作品に対して敬意を持ってるけど、やっぱりサードとファーストは良いって言ってくれる人が多いイメージがあるし、みんなにすごく優しいアルバムだったのかなって思う。だからそれをやりたいのかっていうとそういうことではないけど、何であれは良いって言ってもらえるのかなっていうことを考えた時に、自分の感情というよりは人間味の部分だったり芯の部分だったりを歌ってる曲が多いと思ったんですよね。だからベースはそこに置いて、例えば怒りのパワーで書く曲とか、悲しい気持ちで書く曲とか、当たり前の大事なことを書いた曲とか……そういう歌はやっぱり受け入れてもらえるし、俺にも似合ってるのかなって。自分に似合ってることをやるのがやっぱりしっくり来るし、やっぱりいいライヴもやりたいですからね。曲が似合ってないとライヴの時も一瞬の“間”で狂っちゃうし、すべてが似合ってるからこそライヴはぴったり来るんで」

__そういう意味で、リリックを書く上で意識したこともあったんですか?

MACCHO「そうですね。言葉は普通に会話として成り立つ言葉で作りたかったから、ラップ的な表現方法は使いたくなかった。ただ、それだけかな。それが一番意識してたことですね。ヒップホップだし、ラップだし、MACCHOだし、OZROSAURUSだし。それはもう分かりきってることだから。だから例えば“045”っていう言葉も、たぶん「Profile」以外では使ってないと思う。そういうのがあったかな」

__客演をほとんど排したという意味では、4枚目の流れだとも思うんですが、そこに関してはいかがですか?

MACCHO「まあ正確に言ったら、フィーチャリングに呼んで一緒にやりたかった人がいないワケではないんですけど、結局は誰にもオファーしなかった。このアルバムまでの5年間にはフィーチャリング参加した音源だったり、みんなでやった曲だったり、そういうのがポイント毎にあったし、逆に言ったらそういうことはこの5年間でずっとやってきたじゃないですか。だから今回のアルバムではもうちょっと自分と向き合わないと始まらない、っていうことを思ったんですよね」

__なるほど。では、今回のアルバムを完成させて改めて思うことを教えてください。

MACCHO「これは般若とも話してたことなんだけど、やっぱり俺らの精神状態が一番安定するのは、ちゃんとリリックを残して曲を作ること。そしてライヴをすることによって心が満たされる。それだけでもやる価値あるよねっていう話で。初めて少なめの曲数でアルバムをやってみて、収録時間的にもお腹いっぱいにさせないところで止めるっていうことをやってみて、“ああ、こういうアプローチもできるんだな”っていう曲を次は作りたいですね。アルバムの制作が終わった時点で次の曲のことを考えるっていうのは、今までに無かった心境。まあ、自分的にはまだまだ終われないっていう感じかな」
DJ SN-Z「やっぱりヒップホップってこういうものだよなって思いましたね。要は精神論だったり思想の深いところからのメッセージだったりをダイレクトに伝えられるもの。そういう意味でもすげぇ良かったし、もっと制作したい。もちろんこれで終わりじゃないんだけど、このアルバムの制作が終わっちゃって、なんかちょっと寂しいですね」

interview 吉橋和宏


【リリース情報】

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OZROSAURUS
OZBUM 〜A:UN〜
(JPN) EMI / TOCT-28053
発売中
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tracklist
01. Intro
02. 呼吸
03. 半信半疑
04. 異次元ポケット
05. Friend
06. Skit feat. MASTA SIMON from Mighty Crown
07. Profile
08. Matrix
09. Muddy Water
10. ロマンチック
11. 阿吽
12. 証拠

【ツアー情報】
OZBUM ~A:UN~ Club Circuit2012 1st Period
4/21 (土) 奈良 Heritage vol.59 @ 奈良NEVERLAND
4/28 (土) 東京 MONSTER @ CLUB HARLEM
5/12 (土) 新潟 DEPPATSU vol3 @ CLUB SEVEN
5/19 (土) 茨城 NEIGHBORHOOD @ 土浦GOLD
5/26 (土) 青森 三沢 PARTY UP 2012
    HIPHOP Wear House 15th Anniversary vol3 @ CLUB J-DRAW
6/16 (土) 福島 郡山 HOOD SWAGGA @ 郡山 #9
6/23 (土) 岐阜 GSPO vol29 @ 岐阜CLUB ROOTS & HIGH CROSS 
 
OZBUM ~A:UN~ 九州TOUR(未成年入場可)
6/9 (土) 長崎 @ DRUM Be7
6/30 (土) 大分 @ 音楽館
8/5 (日) 福岡 @ ZEPP福岡

OZBUM ~A:UN~ TOUR2012(未成年入場可)
8/31 (金) 大阪 @ FANJ-twice
9/2 (日) 名古屋 @ OZON
9/7 (金) 神奈川 @ CLUB CITTA TOUR FINAL 

OZBUM ~A:UN~ Club Circuit2012 2nd Period
start in Fall 2012

【VIDEO】



【オフィシャルサイト】
http://ameblo.jp/ozrosaurus-blog
http://www.emimusic.jp/artist/ozrosaurus/

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