Panda Bear『Tomboy』インタビュー


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ニューヨークを拠点に活動を続ける、現在のUSインディー・シーンに欠かせない人気バンド、アニマル・コレクティヴ。’00年にアルバム・デビューを果たして以来、アヴァンギャルドなポップ・サウンドを武器に、作品を出すごとに支持層を広げてきた重要アーティストです。全米チャート13位を記録したアルバム『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』(’09)における活躍は、記憶に新しいところでしょう。

そのアニマル・コレクティヴの中心メンバーとして知られる奇才、パンダ・ベア(ノア・レノックス)が、各メディアで絶賛された『パーソン・ピッチ』(’07)以来となる、久々のソロ・アルバム『トムボーイ』を4/27にリリースします。ミックスに、昨年MGMT『Congratulations』のプロデュースで話題を集めたソニック・ブーム(元スペースメン3)を招き制作した進展作です。その内容は、サンプリングを軸に制作した前作とは異なる、ギターやシンセ、リズムにスポットを当てた、ベーシックにしてエモーショナルなもの。バンダ・ベアらしいドリーミーなテイストはそのままに、よりディープな音世界を描いた作品となっています。

ここでは、そんな『トムボーイ』の内容について語った、バンダ・ベアのインタビューをご紹介しましょう。なお現在、http://www.hostess.co.jp/pandabear/ にて、フリーダウンロード楽曲のキャンペーンも実施されてますので、チェックしてみてください。


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PANDA BEAR

アニマル・コレクティヴの中心メンバーがつくりあげた、
新たなるエモーショナル・ポップ・サウンド

__あなたが最後に来日したのは、’09年にフジロックで行った、アニマル・コレクティヴのパフォーマンスででしたが、覚えていますか?

「フジロックでのライブはすごく楽しかったよ! 日本に入ったらすぐ出るというスケジュールで、合計たったの48時間しかいなかったこともあって、少し奇妙な精神状態だったけど…。時差ボケとか色々あったし。ただ、ライブの雰囲気が良かったことは覚えているよ。いつも感じるのは、日本人って、より注目して観てくれている気がする」 
 
__では、あなたの最新アルバム『トムボーイ』について教えてください。アルバムの仕上がりについては、満足していますか?

「とても満足しているよ。長く大変な道だったけど、一生懸命つくったし、誇りに思っている」
 
__今作は、前作『パーソン・ピッチ』(’07)よりも、“歌”のアルバムだと思いました。前作よりも、アルバム全編を通してボーカルが高音で、より前に出ているような印象がありますね。これは意図したものなんですか?

「そうでもないよ。その高いボーカルは、ソニック・ブーム(元スペースメン3)と一緒につくった結果だと思う」
 
__今作のミックスをソニック・ブームにお願いしたきっかけは、何だったんですか?

「『パーソン・ピッチ』を出した後に、メールで知り合ったんだ。それから、お互いに連絡し合ってたんだけど、当初のアルバム・プランが上手くいかなくなった時に、彼にミックスをお願いしてみたんだよ。そうしたら、引き受けてくれてね。このアルバムを彼とつくれたことを、とても嬉しく、幸運に思ってる」
 
__『Young Prayer』(’02)をリリースした頃のインタビューで、あなたは“ソロ作品に関しては、メロディーやリリックをなるべくシンプルにするのが好き”、“素早くサクっと仕上げるピュアな曲が、自分の中で一番好き”、といった主旨の発言をしていますが、今作もそういった心持ちで曲づくりをしていったんでしょうか? 個人的には、あなたの曲には深みがあると思うのですが。

「その点に関しては、今も変わらないよ。今回つくったほとんどの楽曲は、僕が昔のインタビューで答えているように、これまで同様サクっと仕上がったものだった。ただ今回は、かなりの時間を費やして、その曲を直していったんだ。素早く曲を仕上げるような、特別な日も設けたけどね。今回は、そういった制作リズムの緩急によって、曲を完成させることができたんだ」

__あなたは、今回アルバムに先がけて、7インチ・シングルのシリーズを出しましたが、その理由について教えてください。

「うーん。それには事情があって、『パーソン・ピッチ』をリリースした時も、ゆっくりとシングル、12インチのリリースから始めていったんだ。アニマル・コレクティブのツアーの合間に、曲づくりをしていたからね。で、これには一曲一曲の作曲・編集に集中できる、っていうメリットがあるんだよ。このアルバムでも短い曲をやろうと思っていたから、前回と同じスタイルでリリースしていこうと思ったんだ。一曲一曲を印象的にさせたいしね」
 
__今回のシングルの一つ、「You Can Count On Me」のスリーブには、父親の肩の上に少年が乗っているイラストが描かれていますね。これは、あなたの家族との関係性を表現したものなんでしょうか?

「『トムボーイ』に関するアートワークの全ては、友達のスコット・モウがつくってくれたんだ。で、そのシングルのジャケットは、僕と僕の息子をイメージしているとは思うんだけど、実は直接本人に聞いてないんだよね」

__「You Can Count On Me」は、どういうきっかけでできた曲なんですか?

「この曲は、“父親であること”がテーマなんだ。感覚的には、『パーソン・ピッチ』に入っていた「I’m Not」に対する答えのような曲だね。「I’m Not」は子供ができる前の曲で、「You Can Count On Me」は子供ができた後の曲って感じ。子供に対する“約束”の意味を持った曲をつくりたかったんだ。それと同時に、この曲を聴いた人を勇気づける曲でもあって欲しいなって思ってるよ」
 
__今作の最後に収録されている「Benfica」は、ポルトガルの首都、リスボンにある地区名ですよね。あなたは、もうかれこれ7年ほどポルトガルに住んでいますが、リスボンでの暮らしはいかがですか?

「リスボンには大きなサッカー・チームが二つあって、そのチームの一つ、“SLベンフィカ”からこの曲名を付けたんだ。実は、僕は昔から大のスポーツ・ファンで、こっちに引っ越してからSLベンフィカにハマってしまってね。ワールド・カップにも夢中になったよ。そして、リスボンは最高だ。自分の知ってるどの場所よりも、自分自身を軽く感じられるところで、幸せなんだ」 
 
__分かりました。ところで、あなたがパンダ・ベアの名前で活動しているのは、初期の頃リリースしたカセット・テープに、パンダの絵を書いたことがきっかけだったそうですね。今でも、やっぱりパンダが一番好きな動物ですか?

「そうだよ! 間違いなくね! あのコントラストが好きなんだ。そして、彼らは平和に見えるし」

__また、アニマル・コレクティヴの仲間、エイヴィ・テアが去年リリースしたアルバム『ダウン・ゼア』は、いかがでしたか?

「本当に本当に大好きだよ。個人的に去年のベスト・アルバムだし、これまでにエイヴィーがつくった中でも、ベストだよ」
 
__分かりました。インタビューありがとうございました。

「こちらこそ、ありがとう。最後に一言、日本のみんなに、震災による被害に対してお見舞いを申し上げます。僕は、あなたとあなたの家族が健康で安全であることを願ってる」
 

interview Hideko Hagino
translation Yosuke Takano
text edit Loud Magazine
photo Brian DeRun


【アルバム情報】

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PANDA BEAR
Tomboy
(JPN) PAW TRACKS/HOSTESS / PAW36CDJ
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tracklisting
01_You Can Count On Me
02_Tomboy
03_Slow Motion
04_Surfer’s Hymn
05_Last Night At The Jetty
06_Drone
07_Alsatian Darn
08_Scheherazade
09_Friendship Bracelet
10_Afterburner
11_Benfica
12_Surfer’s Hymn (Actress Remix)

【オフィシャルサイト】
http://www.hostess.co.jp/pandabear/(フリー・ダウンロード実施中)
http://www.facebook.com/PandaBearMusic
http://www.myspace.com/pandabear
http://www.paw-tracks.com/

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