Paul Banks『Banks』インタビュー


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2002年に人気ロック・バンド、インターポール(Interpol)のフロントマンとしてデビューし、これまでに4枚のアルバムを発表しているミュージシャン、ポール・バンクス(Paul Banks)。2009年に『Julian Plenti is… Skyscraper』をリリースして以降は、ソロ・アーティストとしても活躍。今年6月には、完全限定生産の『Julian Plenti Lives… EP』を完売させ、変わらぬ人気を維持している才人です。

そんな彼が、セカンド・ソロ・アルバム『Banks』(バンクス)をリリースしました。インターポール・ファンにはお馴染みの、ザ・ナショナルやヨンシーとの仕事でも知られるピーター・ケイティスをプロデューサーに迎え、ニューヨークとコネチカットでレコーディングされた本作。その内容は、先行ダウンロード曲「The Base」を筆頭に、エモーショナルで表情豊かな音世界が広がるものとなっています。

ここでは、本作『Banks』の内容について、ポール・バンクスにメール・インタビューで話を聞きました。


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Paul Banks『Banks』インタビュー

__今作『Banks』は、あなたにとって2009年の『Julian Plenti is… Skyscraper』以来となるソロ・アルバム作品となりますね。今作の曲づくりは、どのようにしてスタートしましたか?

「この作品は、『Julian Plenti is… Skyscraper』を録り終わった直後から作業を始めていたよ。ほとんどは、ここ2年間で仕上げたものなんだ。でも、僕はいつでも作曲している、かなり昔からね。初めての作品をレコーディングしたのは、1997年だったかな。完成するまで果てしなく時間がかかったけどね。一作目を作ったことで、アルバムを完成させること自体に自信がついて、前向きな気持ちで作業できるようになったよ」

__今年の6月に発表した『Julian Plenti Lives… EP』は、今作『Banks』の制作と同時に企画、進行していた作品なんですか?

「同時だね。というよりは、直後に続けて作業した感じかな。カバーをやって楽しみたかったから、EPはずっと出したかったんだ。で、フル・アルバムに足りるくらいのオリジナル曲があったから、楽しみ(カバー)の方はEPに収録した。今回のアルバムの最後の曲「Summertime Is Coming」は、実は僕がジュリアン・プレンティとして活動してた頃に書いた曲でね。タイトルに彼の名を使っているから、収録したかったんだ。大学時代にジュリアン・プレンティ(Julian Plenti)として活動してた頃の作品は、ジュリアン・プレンティの名前を借りるようにしようと思って」

__では、今作をジュリアン・プレンティ名義にしなかった理由は何ですか?

「インターポールを軸に活動していた頃は、ジュリアン・プレンティの名で作品を出したり、ライブをやったりしてたんだ。僕の初めてのアルバムは、古い曲を出し切るための手段だった。で、その若かりし頃のヴィジョンを常に忘れないよう、従うようにはしてるよ。ジュリアン・プレンティと自分の間にあるのは『Julian Plenti is… Skyscraper』で、でもジュリアン・プレンティはまだ生きていて…。僕は、初期の作品をみんな聴いてもらうためにシェアすることにしたんだ」

__なるほど。

「だからもう、ジュリアン・プレンティに敬意を払う必要はない。彼は僕の過去のキャラクターで、その時は「On The Esplanade」みたいな曲をもっと人々に聴いてほしかったんだ。あのアルバムに入っている「Fun That We Have」や「Fly as You Might」は、僕が十代の頃に書いた曲さ。でも、今はもう歳を取ったし、今手がけている作品は全て新鮮だね。何事もシンプルにしたかったから、今回は本名を使うことにしたんだよ」

__今作は、どんな方向性や内容のアルバムにしようと考えていましたか? あなたが思い描いていた作品の青写真や、テーマ/コンセプトについて教えてください。

「僕が関わった作品で一貫したテーマのものなんて、存在しないと思う。一曲一曲が特別な存在なんだ。どこから音楽が湧き出てくるのかは確かじゃないんだけど、大抵は自然に思いつく。そうしたら自ら反応して、好きかどうかも自ら判断して、最終的に自ら決断を下すんだよ。作家は、話の行方など想定せずに執筆しているものだけど、音楽も同じさ。ただ始まったものに従うだけなんだ」

__今作のレコーディングは、ピーター・ケイティスをプロデューサーに迎えて、ニューヨークとコネチカットで行ったそうですね。まず、今作でのピーター・ケイティスとの作業はいかがでしたか?

「ピーターと作業するのは、いつでも楽しいね。彼はすごくいいヤツだよ。すごく頭も良いし、常に嬉しい気持ちにさせてくれる。僕たちはすごく良い関係だと思う。彼は、僕が何をしたいのか、すぐに察知してくれるんだ。で、僕がデモを持って行って、それを彼のパソコンに取り込んで再構築していくんだけど、“このパートではドラムをミュートして、ボーカルをソロにしてみよう”なんて感じの、良いアドバイスをいつもくれるよ。ほとんど賛成しているね。彼も僕のスタイルを気に入ってくれていて、さらにステップ・アップさせてくれるんだ。あとは、僕はアルバムをつくる時、完全に新しくやり直すよりも、やり終えた場所から続けていった方が良いって信じていてね。だから、僕の2枚続いたアルバムを、一人のプロデューサーに任せたかったんだ」

__今作の制作作業で、特に印象に残っているエピソードは何ですか?

「えーっとね、電車で片道80分もかけてスタジオに通ったことかな。すごく退屈だったけど、車内で良い音楽をたくさん聴いたよ。ほとんどは、ドレイクとクール・キースだったかな。あと印象深かったイベントといえば、ロブ・ムースとヨード・ニールがストリングスを演奏しに来てくれた時だね。すごく才能のある音楽家だよ。実は、僕が多くの曲のストリングスを書いたんだけど、彼らの演奏は美しくて、即興を始めた時には驚かされたね。特に「The Base」と「I’ll Sue You」。ロブが、追加で素晴らしいストリングスのアレンジをやってくれたんだ。あと「Paid For That」と「Another Chance」では、ヨードが美しい演奏をしてくれたよ。僕が伝えたこともきちんとやってくれたし、勝手にやってくれたのも最高だった。彼らのアイディアは、ほとんどキープしてあるよ。二人とも本当に才能のあるヤツらさ」

__音楽的には、今作はオーガニックで表情豊かなメロディー、アンサンブル、サウンド・テクスチャーが詰まった作品となりましたね。あなたが今作で最も重視したこと、表現してみたかったことは何だったのでしょうか?

「シンガー・ソングライター的な作品からは、離れたかったんだよね。バンドのようなサウンドを目指していた。だから、ベース・ラインやドラムにはすごく時間をかけたよ。本当にシンガー・ソングライター風はイヤだったんだ」

interview iLOUD


【リリース情報】

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Paul Banks
Banks
(JPN) Matador/Hostess / BGJ-10157 (OLE9792J)
10月24日発売
HMVでチェック

tracklist
1. The Base
2. Over My Shoulder
3. Arise, Awake
4. Young Again
5. Lisbon
6. I’ll Sue You
7. Paid For That
8. Another Chance
9. No Mistakes
10. Summertime Is Coming
11. Perimeter Deactivated(映画『バトルランナー』のテーマ)*
12. I’m A Fool To Want You(フランク・シナトラのカヴァー)*
* 日本盤ボーナストラック

【オフィシャルサイト】
http://hostess.co.jp/matador/paulbanks/
http://bankspaulbanks.com/

【全曲試聴】
http://hostess.co.jp/matador/paulbanks/news/2012/10/002108.html

【フリー・ダウンロード】

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