South Central『Society Of The Spectacle』インタビュー


southcentral_jk.jpg

’06年に、ロブとキースが英ブライトンで結成したエレクトロ・ダンス・アクト、サウス・セントラル。数枚のオリジナル・シングルと、クラクソンズ、メトロノミー、ヴァン・シー、サンシャイン・アンダーグラウンドといったバンドのリミックス群、そしてワイルドなDJ/バンド編成のライブ・パフォーマンスで、着実に評価を高めてきた実力者です。’08年には、オリジナル楽曲をまとめたアルバム『The Owl Of Minerva』をリリースし、サマーソニックで来日を、翌’09年には、ザ・プロディジーがヘッドライナーを務めた<ウォリアーズ・ダンス・フェスト>で再来日を果たしているので、ご記憶の方も多いでしょう。

そんな彼らが、3月9日に待望のオリジナル・アルバム『ソサエティー・オブ・ザ・スペクタクル』をリリースします。制作に2年の歳月をかけ、バンド・メンバーと共に自分達のサウンドをとことん追求したという本作。その内容は、彼ららしいハード&ヘビーなロッキン・エレクトロはもちろん、シューゲイザー・バンドに影響を受けたという、ノイジーにしてエモーショナルな楽曲や、ダブ・ステップの要素を取り入れたトラックまでを収録した、アッパーにして知的な音世界を堪能できるものとなっています。ゲイリー・ニューマンや、ペンデュラムのベーシスト、ギャレス・マクギルレンをフィーチャーした楽曲を収録している点も、見逃せません。

最新シングル「The Day I Die」を筆頭に、アリーナ級のダンス・サウンドが詰まった『ソサエティー・オブ・ザ・スペクタクル』。本作の内容について、サウス・セントラルのロブとキースに話を聞きました。なお、本作の日本盤には、「The Day I Die」のザ・プロディジーとザ・ケミスツによるリミックスなど、計4曲のボーナス・トラックが収録される予定となっています。

(追記:3/3)
サウス・セントラル『ソサエティー・オブ・ザ・スペクタクル』のリリースを記念して、サウス・セントラルのTシャツ(Mサイズ)/缶バッジ/ステッカーのセットを2名様に、缶バッジ&ステッカーのセットを3名様にプレゼントいたします。詳細は“続き”をご覧ください。


southcentral_A.jpg

SOUTH CENTRAL

エレクトロ、シューゲイザー、ダブ・ステップを横断する、
ブライトン発の強力ダンス・アクト

アルバムのテーマは、スペクタクルの社会

__オリジナル・デビュー・アルバム『ソサエティー・オブ・ザ・スペクタクル』の完成、おめでとうございます。制作にはかなりの時間をかけた、と聞いていますが、リリース段階までこぎつけた現在の心境はいかがですか?

キース「すごくワクワクしてるよ。制作に2年もかかったからね。僕らは二人とも、すごく完璧主義なんだ。正しいサウンド、正しいギター、そして、そこにハマるキーボード…みたいなことを追求していったら、ものすごく時間がかかってしまった。実際のところは、50曲くらいレコーディングしたんだ。でも、その中からすごく気に入った曲だけを、このアルバムにまとめたよ」

__では、そんなアルバムの内容について教えてください。アルバム・タイトルの“ソサエティー・オブ・ザ・スペクタクル”は、シチュアシオニスト運動(編注:状況主義者/状況主義運動。パリの五月革命に影響を与えた、政治・芸術運動)の中心メンバーとして有名だったフランスの作家、ギー・ドゥボールの『スペクタクルの社会』(書籍:1967年/映画:1973年)から引用したものだそうですね。アルバムは、どのようなテーマの作品にしたかったんですか?

キース「僕らはいつも、何かを始める前にコンセプトを考えるんだ。で、このアルバムでは、ギー・ドゥボールの『スペクタクルの社会』って本が、テーマの元になった。本の内容は、メディアがぼくらのモノの見方や考え方を左右している、っていうものだね。そのアイディアが、アルバム全体を通して流れているんだ。それがアルバムのメイン・テーマさ」

__哲学や社会思想に詳しいんですか?

キース「うん、二人とも読書がすごく好きで、哲学書もたくさん読むんだ。ちなみに、『スペクタクルの社会』とは時代背景が違うけど、例えばジョージ・ルーカスの『THX 1138』(’71)とか『マトリックス』(’99/監督:ウォシャウスキー兄弟)にも、このアルバムに共通する世界観が入っていると思うよ。日々の生活の中で、人間の思考がコントロールされていく…みたいなね」

__なるほど。そういった世界観やコンセプトは、あなた達のつくり出す音楽にどのような影響を与えているんでしょうか?

キース「アルバムの1曲目「Nu Control」には、メディアにコントロールされている僕ら自身に警告するようなメッセージが込められているし、最新シングル「The Day I Die」にも、そういうメッセージが入っているんだ。YouTubeに「The Day I Die」のビデオをアップしたばかりなんだけど、結構ショッキングな内容になってると思うから、チェックしてみてよ」
ロブ「「The Day I Die」は、人生最後の日に、自分の住んでいた世界から逃げ出して別世界に行く、って内容なんだ。全てからの逃避さ。アルバムのラスト・ソングにすればよかった…って僕は思ってるんだけど(笑)、最終的には、アルバムの前半に収録したよ」

サウンドにこだわり抜いた曲づくり

__アルバムの曲づくり、音づくりについても教えてください。今作は、いわゆるダンサブルでロッキンなエレクトロ・トラックはもちろん、シューゲイザー的、エレクトロニカ的なトラックまでを収録した、バラエティーに富んだ内容になっていますね。

ロブ「2年間かけて、いろんな音楽を聴き込んできたからね。様々な物事からも刺激を受けたし、そういう意味で、いろんな要素にあふれたアルバムになったんじゃないかな。しかも、いろんな音楽の要素を、上手く混ぜ合わせることができたって思ってる。可能な限り良い形で、作品にまとめることができたね」

__今作の音づくりで特に意識したこと、追求してみたかったことは何でしたか?

ロブ「さっきキースがちょっと言っていたけど、僕らは、どんなサウンドを使うかってことに、ものすごくこだわった。“ここはこういうギターの音じゃなきゃ絶対ダメなんだ”って具合にね。さっきシューゲイザーって言葉が出てきたけど、インターポールっぽい感じのギターを入れたりもしたよ。あとは、ドラムとベースを、可能な限り大きなサウンドで録りたかったね。キーボードに関しては、’70年代や’80年代の古いアナログ機材をつかって音づくりをしたよ。で、そういった作業を積み重ねていくうちに、結果としていろんなサウンドの詰まった、良いアルバムができ上がったというわけさ(笑)」

__いわゆるDJトラックよりも、ソングライティングを重視した楽曲が多いようにも感じましたが、曲づくり自体は、どのようなプロセスで行っていったんですか?

ロブ「いろんなやり方があったけど、コーラスやフックになる部分を先に考えて、そこから広げていく形が多かった。ヴァースに乗せる歌詞だけが、先にできていたりしたからね。まぁ、フックが一番大事だから、そこから着手することが多かったってことかな。ちなみに、一人で曲を書き始めたとしても、最終的には誰かがそこに手を加えていくから、最初から最後まで一人で曲をつくるってことはなかったよ」

__あなた達は、巧みなライブ・パフォーパンスでも人気がありますが、曲づくりの際、ライブ・プレイできることを前提にしたアレンジというのは意識しましたか?

ロブ「最近つくった曲は、バンドで演奏することも考慮したものになっているよ。これまではDJツアーをすることが多かったけど、今年はバンドとして、ライブ・ツアーをたくさんやっていきたいと思っているしね。だから今作には、スタジオでバンドと一緒に書いた曲も入っているんだ。二人で基本的なトラックをつくってから、バンドに“こうプレイしてくれ”って説明して、やってもらった曲もあったし、サウス・セントラルというバンドとして、初期段階から一緒につくりあげていった曲もあった。PCを使ったアレンジ部分まで、全部ね。楽しかった」

southcentral_A.jpg

ハード&ディープな楽曲群

__各収録曲についても、少し教えてください。まず、昨年10月に、ヴィタリックが主宰するCitizenレーベルからリリースした「Demons」は、どのようにして誕生した楽曲ですか?

ロブ「「Demons」の歌詞は、自分たちのいる世界の中で懸命に働いても、実際は、その世界の外で何が起こっているのかなんて全く分からない、って内容だね。僕たちは、自分たちのいる世界の中に閉じ込められていて、その世界だけが本物だと思っているけど、その世界の外にある広い世界こそが本物なんだ、ってことさ。アルバム全体のテーマにつながっている内容の曲だね。ほとんどの人は、自分の周りにある小さな世界のことしか知らない。大きな世界の中にある、ほんの一部のことを、世界の全てだって思ってるんだ」

__その通りですね。では、ゲイリー・ニューマンをフィーチャーした「Crawl」は、どのようにして誕生した楽曲ですか? あなた達は、かねてよりゲイリー・ニューマンの作品が好きだったそうですが。

キース「この曲ができたのは…すごく古い。’06年の後半頃だったと思う。曲づくりをしていた時は、まさかゲイリー・ニューマンがボーカルをやってくれるなんて、思ってなかったよ。でも、ダメモトでオファーしてみたら、すぐに喜んで参加してくれてね。彼は僕らのヒーローだから、すごくうれしかった。共通の知り合いがいて、彼がゲイリーにテープを渡してくれたんだけど、“彼にテープを送ってくるヤツは、少なくても週に25人くらいいる”って聞いてたから、本当に飛び跳ねて喜んだよ(笑)」

__あなた達は、以前から名曲のリメイク~アップデートを得意としていて、本作にも、ジョイ・ディヴィジョンを彷彿とさせる「The Moth (feat. Oliver Ackermann)」や、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン「Lose My Breath」のフレーズを取り入れた「The One」といった楽曲を収録していますね。

キース「「The Moth」は面白かった。オリヴァー・エイカーマン(編注:NYをベースに活動するノイズ・ロック・バンド、ア・プレイス・トゥ・バリー・ ストレンジャーズの中心人物。ハンドメイドのエフェクト・ペダル・メーカー、DEATH BY AUDIOの創設者としても有名)と一緒にやったんだけど、ギターのメロディーが浮かんできたところから始まったんだ。で、そのデモをオリヴァーに送ったら、彼も別のギター・ラインをいくつか考えて、送ってくれてね。途中でリズムを変えたり、いろんなメロディーやボーカル・ラインを試したりしながらつくった曲だった。ヴァージニア・ウルフ(編注:『ダロウェイ夫人』などの作品で知られる、イギリスの女性小説家)が、インスピレーションになったよ。彼女の住んでいた家が、以前僕の住んでた場所の近くにあったから、彼女の家を実際に見に行って、ボーカルのイメージを固めたりしたんだ。「The One」の方は、シューゲイズ・バンドをたくさん聴いていた時に思いついた曲さ」

__なるほど。

キース「僕らは、自分たちの周りにある物事から、ヒントを得ることが多いんだ。それを僕たちなりに消化して、ちょっとひねって、自分たちの曲の中に生かしていくわけさ。例えば「Paris In The 20th Century」は、ジュール・ヴェルヌ(編注:『八十日間世界一周』などの作品で知られる、フランスのSF小説家)の小説にヒントを得て、そこにダブ・ステップの要素を取り込みたいと思ってつくった曲だよ。今、ダブ・ステップは、UKでメチャクチャ流行ってるからね(笑)。ジュール・ヴェルヌの『二十世紀のパリ』は、彼の最高傑作ってわけじゃないけど、この曲を発展させるヒント、イマジネーションを与えてくれたよ」

ライブ・バンドとして、さらに成長したい

__あなた達は、ザ・プロディジー、ペンデュラムといった強力なライブ・アクトとツアーを回る一方で、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやアイアン・メイデンのライブで、DJをしたりもしていますよね。今後はどのようなスタンスでライブ、DJ、制作活動を展開させていきたいと考えていますか?

キース「ザ・プロディジーなんかとやったツアーからは、僕らなりに影響を受けたよ。インスピレーションを受けるのは、音楽からだけじゃない。どんなふうにオーディエンスと向かいあって、エネルギーを伝えていくか、みたいなことからもあるからね。で、ツアーの後スタジオに入って、7~8曲つくってみて、一番いいと思った曲を残したけど、そんなふうにして、自分たちが受けた影響を積み上げていけたらいいと思ってる。で、重要なのは、アルバム、ライブ、DJの全部に、その影響を反映させていきたいってことかな、全部に(笑)」

__ジャンルの枠に囚われず、あらゆる分野でライブ/DJを展開して、その影響を自分達の音楽にフィードバックさせていきたい、ということですね。ところで、あなた達は、’08年にはサマーソニックで、’09年には<ウォリアーズ・ダンス・フェスト>で来日を果たしていますが、覚えてますか?

キース「うん、日本のオーディエンスは、すばらしかったよ。すごく音楽を真剣に聴いてくれていたし、音楽好きなんだなっていうのが、よく伝わってきた。サマーソニックのステージは、東京も大阪も楽しかったけど、大阪の方が特に盛り上がって、印象に残ってるよ。暑い中で、みんなジャンプしながらシャウトしてくれた。ザ・プロディジーのフェスも楽しかったな。日本には、またぜひ行きたいって思ってるよ。できれば今年の夏、また行きたいね!」
ロブ「日本でプレイするのは、すごく楽しいから、本当に近いうちに行きたいね。楽しみにしてるよ」

__では、サウス・セントラルの次なる活動目標を教えてください。

キース「もちろん、まずはこのアルバムをリリースすること(笑)。みんなに僕らの音楽を聴いてもらって、判断してもらいたい。あとは、バンドとして成長して、いいプレイができるようになることかな。実は、いまライブ・リハーサルの真っ最中でさ、正にバンドをまとめてるところなんだ! 本当にツアーが楽しみだよ。DJも楽しいけど、ライブで自分たちの曲だけをプレイするっていうのには、DJと別の喜びがあるからね」

tanslation Nanami Nakatani
interview & text LOUD Magazine

southcentral_A.jpg


【アルバム情報】

southcentral_jk.jpg

SOUTH CENTRAL
Society Of The Spectacle
(JPN) P-VINE / PCD-20071
3月9日発売
HMVで買う 
Towerで買う

tracklisting
01. Nu Control
02. The Day I Die
03. Bionic
04. Demons
05. S.O.S
06. No Way Back
07. Fourth Way
08. Paris In The 20th Century
09. Anima
10. Crawl
11. Society Of The Spectacle
12. The Moth
13. Astro City *
14. Nietzsche vs Nurture *
15. The Day I Die (The Qemists Remix) *
16. The Day I Die (The Prodigy Remix) *

*Bonus Tracks for Japan
(トラックリストは曲順が変わる場合がございます)

【オフィシャルサイト】
http://bls-act.co.jp/south_central/ ※「The Day I Die」のOfficial Video、アルバムのTeaser Mixが視聴できます。
http://southcentralmusic.co.uk/


【プレゼント】

southcentral_pres1.jpgsouthcentral_pres2.jpg

サウス・セントラル『ソサエティー・オブ・ザ・スペクタクル』のリリースを記念して、サウス・セントラルのTシャツ(Mサイズ)/缶バッジ/ステッカーのセットを2名様に、缶バッジ&ステッカーのセットを3名様にプレゼントいたします。

プレゼントをご希望の方は、コチラのメールフォームからご応募ください。
本文に「サウス・セントラル・プレゼント」とご記入ください。
Tシャツ・セット/バッジ&ステッカー・セットのどちらに当選したかは、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
当選された方には、4月1日(金)以降にメールでご連絡を差し上げますので、
ご応募される際は、お名前と、連絡の取れやすいメールアドレスをご記入ください。
携帯メールでドメイン指定受信設定をされている方は、
info@xtra.jpからのメールを受け取れるように設定をお願いします。
当選者の発表は、メールの返信をもってかえさせていただきます。


(※ 応募しめきり: 2011年4月1日 24:00)

interviewカテゴリーの記事