Tanlines『Mixed Emotions』インタビュー


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ジェシー・コーエン(Synth:元プロフェッショナル・マーダー)と、!!!、Holy Fuck、Telepathe、Talk Normal等との仕事で知られるエリック・エム(G/Vo:元ドン・キャバレロ)からなる、ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するインディー・バンド、タンラインズ(Tanlines)。’08年末にYoung Turksからリリースした『New Flowers EP』をリリースすると、そのダンサブル〜トライバルにしてポップなサウンドが評判となり、『Kitsuné Maison 7』(’09)に「Bejan」が収録されるなどして、活躍の場を広げてきた注目株です。
そんなタンラインズが、True Panther Soundsから待望のデビュー・アルバム『ミックスド・エモーションズ』(Mixed Emotions)を3/21にリリースします。制作中に自身のスタジオを手放さざるを得ないトラブルにみまわれながらも、妥協することなく作品を完成させた本作。もともとミュージシャンとしてはもちろん、プロデューサーとしてもその名を知られる彼らですが、なんと過去にグラミーを受賞している超大物エンジニア/プロデューサー、ジミー・ダグラスと共にミックスダウンを行うなど、さらなる音楽的進化を目指した内容となっています。

ここでは、本作『ミックスド・エモーションズ』の内容とタンラインズの音楽性について、メンバーのジェシーに話を聞きました。


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Tanlines『Mixed Emotions』インタビュー

__あなた達2人は、’08年にエリックのスタジオで出会ったそうですね。お互いのどんな部分に魅力や音楽的可能性を感じたんですか?

「僕らは会ってすぐ仲良くなったよ。笑いのツボが同じなんだ。それに2人とも意見がはっきりしているから、議論するのも好きだし、お互いの意見が一致して、賛成し合うのも好きだしね」

__当初2人で一緒につくってみたかった音楽というのは、どのようなものだったんですか? あなた達のつくり出すサウンドは、ダンサブルな要素や、そしてどこかトロピカルなムードを感じさせるものが多いですね。

「もともとは、とにかく沢山のドラム音や様々な種類のパーカッション、違う種類のリズムなんかを混ぜ合わせて、自分たちが影響を受けたいろんな音楽、いろんなサウンドをごった煮にしたものがつくりたかったんだ。今もやっていることはそれほど変わらないけど、エリックのボーカルが曲のメインになっているから、同じことをやっていても、ボーカル・トラックが上手く収まるような土台をつくるっていう感じかな。バンドを初めた最初の2年くらいで“音のパレット”みたいなものをつくって、今そのパレットを使って曲を“描いてる”っていう感じさ」

__では、デビュー・アルバム『ミックスド・エモーションズ』について教えてください。まず、本作を制作していくにあたっては、拠点にしていたそのエリックのスタジオを手放さなくてないけない、というトラブルがあったそうですね。今作のレコーディングのプロセスは、かなり大変なものだったんですか?

「ヨーロッパ・ツアーに出ている最中に、ブルックリンにあるその僕らのスタジオの入っている建物が売りに出されて、6週間で出なきゃいけないと知らされたんだ。ツアーが終わったら、そのスタジオでアルバムを制作するつもりだったから、話を聞いた時は、唖然として不安でいっぱいになったよ。だけど退去通知の6週間が2ヶ月に延び、2ヶ月が4ヶ月になり、最終的に荷造りして退去するまでは半年くらいあったね。で、その6ヶ月間で、いつ出なきゃいけないのかはっきりと分からないまま、アルバムのほとんどの曲を書いていったから、曲づくりの間は“家を失う”こととか、“次に何が起こるか分からない”感覚とか、“見通しがつくのを待ち侘びている”ような気分をずっと感じていた」

__いろいろと不安な状況の中で、具体的にはどのように制作の作業を進めていきましたか?

「僕らは全ての曲を一緒に書いているんだ。たいていは、僕がドラムビートやシンセのメロディーをつくるところから始めて、エリックがそれに付け足したり、ギターを弾いたりして、いい感じのループやパーツをいくつかつくっていく。それができたら、もうちょっと先に進んで、また別なループをつくる。そして次の日に、エリックがスタジオに一人で来て、前の日にできたものを聴き直して、歌詞やボーカルを足していくんだ。で、僕もそこでスタジオに戻ってきて、2人ともその時点でできたものに満足だったら、曲のアレンジを終わらせる」

__なるほど。

「もし満足いかなければ、その曲は一旦置いておいて、また別な曲にとりかかるよ。今回のアルバムの為に、このやり方で50曲以上は書いたね。良いアイディアのある曲には自然と何度も戻ってくるから、それが良い曲になるって分かるんだ。ほかには、作業に詰まった時は、エリックがその曲をアコースティック・ギターだけのバージョンで録音してみて、それが聴き返した時に良く聞こえれば、そのままその曲づくりを続けたりすることもあったよ」

__最終的にどのような作品にするのか、テーマやコンセプトといったものはありましたか?

「既にあるジャンルには収まらない、それぞれに自立した曲を書きたい、っていうことははっきりしていたね。あと、ダンス・トラックとかインストゥルメンタル曲を書こうと思ったことはなかった。一番の目的は、僕らのサウンドのパレットを使って歌をつくることさ。このアルバムでは、僕らの影響の幅や、僕らの書いている曲のバラエティーを見せたかったんだ。だから「All of Me」「Cactus」「Real life」みたいな、僕らの初期作品に近いものとか、「Green Grass」「Rain Delay」「Abby」みたいな、また違った面が出ている曲も入っている。それが僕らのアーティストとしての深みを、多少でも見せてくれていることを願ってるよ」

__本作のタイトルを、”Mixed Emotion”にした理由は何ですか?

「”Mixed Emotion”っていうのは、僕が“ウィンキー・サッド”(ウィンクしている悲しい顔)って呼んでいる顔文字についての表現なんだ。僕らのマスコットでね。悲しいけど、同時にそれをジョークにできてしまうようなもののことさ。ちょっと大人な感情で、全てのモノは同時に様々な意味を持っている、っていうことを認識できるようなことでもある。それは僕らの美学になっていて、それを表現する言葉が欲しかったんだ。で、付けたのがこのタイトルさ」

__リード曲の「Brothers」は、どのようにして誕生した曲ですか?

「「Brothers」は、僕らがこのアルバムの曲ほとんどを書いた、その前のスタジオの名前なんだ。この曲をどうやって書いたのかは、全部はよく覚えてないな。曲のほとんどを書いてから、エリックが歌を入れたんだ。その時点でできていたものは、4つ打ちのビートに古いレイヴ・シンセが乗った曲で、テレビの雑音とか、波の音みたいに聞こえる音なんかも入っていたね。だから「Brothers」は、様々な古い要素とか、ダンス・ミュージックの符号が入った曲さ。エリックがボーカルを入れて、また全然違った方向に持っていったけどね。メランコリックなカントリー・ミュージックみたいなボーカルで、正しくこの曲に必要なボーカルだって思ったのを覚えているよ。僕らの初期作品の雰囲気も感じさせつつ、同時に3年前の僕らなら書かなかったであろう曲でもあるから、これをリード・トラックにしたいって思ったんだ。僕らの今現在をよく表している曲だと思うよ」

__ちなみに、画面を触るとカメラが360度回転する技術を取り入れた「Brothers」のPV撮影は、どのようなものだったんですか? 面白いビデオですね。

「とても良いプロジェクトだったよ。完成した映像にも、とても満足している。僕らの所属レーベルであるTrue Pantherのスタッフ、ディーンが、そのカメラを使うことを勧めてくれたんだけど、監督をしてくれたWeird Daysとそのカメラをどう使うか相談して、リラックスした、さりげない雰囲気のものにするっていう、コンセプトが出てきた。そこが、とても重要だったね。何かクレイジーなことはしたくなかったんだ。かなりオーソドックスなビデオを撮って、その中にいくつもの小さなサプライズを仕込んでおいた。僕らは翌日まで映像を観られなかったから、けっこうやりにくかったけど、いい出来になっていると思うよ」

__そうですね。ところで、本作の仕上げ、ミックスダウンは、超大物エンジニア/プロデューサーとして知られるジミー・ダグラスのスタジオで行ったそうですね。その経緯と理由についても教えてください。

「ジミーは伝説的なエンジニアだから、僕らも以前から知っていたよ。1年くらいは曲を書きながら自分達でミキシングしていたんだけど、ファイナル・ミックスを誰か別な人にやってもらおうって考えた時に、ジミーが僕らみたいなプロジェクトを探しているかも、という僅かな可能性に賭けて、彼にミックスを送ることを思いついたんだ。そして、実際にその通りになった。ジミーが返事をくれて、送った音源を気に入ってくれたことと、スタジオで10日間一緒にミックスをしてみないかってことを言ってくれたんだ。僕らは他の誰にもミックスを任せたことがなかったから、結構思い切った決断だったけど、ジミーの経歴は素晴らしいものだし、上手くいくって信じていたよ」

__結果には、満足していますか?

「ミックスした後の曲は、どれも間違いなく彼のマジックが加えられたものになったね。自分たちでミックスしたサウンドの多くはそのままなんだけど、ジミーと一緒にやると、まるで陶器を窯に入れて焼くみたいな感覚なんだ。焼きあがったものを取り出してみると、“ああ、これで実際に使える完成品になった!”って思うんだよね。時には難しい部分もあったけど、間違いなく僕にとって最高の経験だった」

__では最後に、タンラインズの今後の活動目標を教えてください。

「とにかくいろいろなところに行って、音楽をして、できればたくさんの人に気に入ってもらえると嬉しいよ!」

interview iLoud
photo Shawn Brackbill


【リリース情報】

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Tanlines

Mixed Emotions

(JPN) True Panther Sounds/Hostess / BGJ-11290

(オリジナル品番:TRUE0662J)

3月21日発売
HMVでチェック

tracklist
01. Brothers

02. All Of Me

03. Green Grass

04. Abby

05. Yes Way

06. Laughing

07. Not The Same

08. Lost Somewhere

09. Real Life

10. Rain Delay

11. Cactus

12. Nonesuch

13. S.A.W. *

14. Don’t Save *

15. All Figured Out *

*日本盤ボーナストラック

【オフィシャルサイト】
www.hostess.co.jp/matador/tanlines
http://www.truepanther.com/#/artists/tanlines

【VIDEO】

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