The Vaccines『What Did You Expect From The Vaccines?』インタビュー


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‘2010年6月に結成されたばかりの、ロンドンを拠点に活動するバンド、ザ・ヴァクシーンズ。英 NME誌が今年の年初号で表紙に起用し、英BBCが“Sound of 2011”の3位に選定した彼らは、久しく登場していなかったUKギター・ロックの救世主として注目を集めている、期待の新星です。メンバーは、バンド結成以前はロンドンのフォーク・シーンで活動していたというフロントマンのジャスティン・ヤングのほか、フレディー・カァワン(G)、アーニー・ヒョーパー(B)、ピート・ロバートソン(Dr)の四名。彼らは、昨年夏に初のデモ・トラック「If You Wanna」をウェブに上げると、たちまち噂が広まり、ソールド・アウトのライブを連発。同年11月にインディーでリリースした「Wreckin’ Bar (Ra Ra Ra) / Blow It Up」を経て、今年1月には、早速UKでメジャー・デビュー・シングル「Post Break-Up Sex」をリリースするに至っています。

そんなザ・ヴァクシーンズが、遂にデビュー・アルバム『ワット・ディジュー・エクスペクト・フロム・ザ・ウァクシーンズ?』を5/11にリリースします。その音は、’50年代のロックンロール、’60年代ガレージ・ロックやガールズ・グループ、’70年代のパンク、そして’80年代のインディー・ロックのエッセンスを吸収した、ベーシックでキャッチーなもの。歌えて踊れて甘酸っぱい、全世界のインディー・ポップ・ファン注目の内容に仕上がっています。

ここでは、本作『ワット・ディジュー・エクスペクト・フロム・ザ・ヴァクシーンズ?』の内容と、バンドの音楽性について、メンバーのジャスティン・ヤングとアーニー・ヒョーパーに話を聞きました。なお、彼らは、フジロックへの出演が決定しています。


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THE VACCINES

今UKで最も注目されている、2011年を代表する新星ギター・バンド

__The Vaccinesは、昨年結成されたばかりのバンドですが、もともとあなた達がバンドを結成した経緯は何だったのでしょうか?

ジャスティン・ヤング「俺たちが実際一緒になって音楽をつくり始めたのは、2009年の夏だった。俺とフレディー(・カァワン)の共通の友達がいたんだけど、彼に説得されて、一緒に音楽をプレイするようになったんだ。彼は、自由に使える練習スペースを持っててね。フレディーと俺は、自分たちのクリエイティブな能力を集中させることができる、新しい音楽の必要性を感じていたんだと思う。俺もバンドをやりたいと思っていた頃だったし、彼も同時期に、そう感じていたんだ。で、一緒に部屋に入って、音を鳴らし始めた時、自分たちが抱えていた全ての問題に対する答えが、そこにはある、って気がしたよ。そして、間もなくしてアーニー(・ヒョーパー)とピート(・ロバートソン)がバンドに加入することになったんだ」
アーニー・ヒョーパー「俺たちはみんな、そのころ煮詰まってたんだよ。現状への退屈と幻滅から、ザ・ヴァクシーンズは生まれたわけさ。そして、ただ仲間と一緒にノイズをプレイしたいっていう、初めて楽器をプレイした頃の気持ちに戻ることができたんだ」

__“ワクチン”(vaccine)というバンド名の由来を教えてください。

ジャスティン「このバンド名には、何の意味もないよ。俺たちの音楽と同じように、ただシンプルで、身近で、直球で…って感じの言葉を選んだだけさ。バンド名を決めなきゃいけないってことで、俺が思いついたんだ。まだ誰も使ったことのない名前だってことに気づいた時は、驚いたけどね」
アーニー「このバンド名は、今まで誰も使ってなかったんだけど、実際のところは、どの時代のバンドでも使えるバンド名だよね。’50年代のロカビリー・バンド、’60年代のガレージ・バンド、’70年代のパンク・バンド、’80年代のハードコア、’90年代のグランジ…。まるで、何も描かれてないキャンバスみたいなバンド名だなって思ったよ」

__結成当初の、バンドの音楽的コンセプトは何でしたか?

ジャスティン「バンドを始めてすごく新鮮に感じたのは、気楽に、楽しみながら音楽をつくれたってことなんだ。バンドじゃない場合は、何か最初に目標とするものがあって、そこに向かってモノをつくっていくことが多いように思う。でも俺たちは、そういった野心的なことなんて関係なく、ただ純粋に音楽をつくって楽しみたかったんだ。最初はもっと実験的なサウンドも取り入れていたんだけど、ポップ・ミュージックのファンとして、クラシック・ポップ・ソングのファンとして、次第に自然にシンプルで、純粋なサウンドの方へと引きよせられていったんだ。俺たちが’50年代、’60年代のポップ・ミュージックを好むのは、それが理由さ。すごくエキサイティングだし、革新的で、若さにあふれていて、ピュアで、ナイーヴだ」
アーニー「あの頃の音楽は、ポップ・ミュージックのルールがつくられる以前につくられたポップ・ミュージックだからね。ルールがない中で、みんな思うままに曲をつくっていられたんだ」
ジャスティン「で、俺たちも、そういう音楽をつくりたいって思っているんだ。例えばロカビリーは、’50年代のパンク・ロックだと思う」

__では、デビュー・アルバム『ワット・ディジュー・エクスペクト・フロム・ザ・ウァクシーンズ?』(What Did You Expect From The Vaccines?)について教えてください。どのような内容のアルバムにしたかったのでしょうか?

アーニー「俺たちのライブを彷彿とさせるレコードにしたい、って思っていたよ。できる限りライブっぽい形で、アルバムをつくりたかったんだ。すごく上手くいったと思ってるよ」
ジャスティン「何かモノをつくろうとする時、あんまり計算しないってことは重要だと思う。まぁ、基本的な部分では、フレッシュで直球のロックンロール・アルバムをつくりたい、とは考えていたけどね。でも、親しみやすいものにしたいとは思ったけど、ありきたりなものにはしたくなかった」

__“キミはザ・ヴァクシーンズに何を期待した?”というアルバム・タイトルには、どんな意味合いが込められているんですか?

ジャスティン「このタイトルには、すごくクラシックな響きがあると思っている。’60年代には、よく“ミート・ザ・○○”とか、“モア・フロム・ザ・○○”みたいなタイトルのアルバムがあったよね? このタイトルにも、そういう雰囲気があると思うんだ。もともとは歌詞の一部から取ったものなんだけど、自己防衛的な意味合いも含まれているよ。俺たちは絶対に、他人の期待通りに生きることはない。誰だってそんなことできないよ」

__本作の曲づくりとレコーディングは、いかがでしたか?

ジャスティン「曲を書く作業は、いつだってすごく強烈な経験だ。セラピーみたいなものでもある。そういう意味では、今回の曲づくりは楽しくて、ポジティブな経験だったね。だいたいは、俺がアコースティック・ギターかピアノで、曲の骨組みになる部分を書いた。で、それをメンバーのところに持って行って、みんなで練り上げていったんだ」
アーニー「スタジオに入る数ヶ月前から、曲の細部までじっくり練り上げていたから、スタジオに入った時には、もう自分たちが何をしたいのか、正確に把握してたよ。というわけで、実際のレコーディングは、すごく楽で簡単に進んだね」

__曲づくりとサウンドメイキング面で、特に重視したことは何でしたか?

ジャスティン「俺にとって一番重要なのは、“曲そのもの”だから、どんなにみんなの演奏が上手くても、できるだけシンプルになるように心がけたよ。そのおかげで、曲もスムーズに流れるようになったし、レコードに独特の個性を生み出すことができたと思う。できるだけ曲をストレートに聴いてもらうために、凝り過ぎないように注意したんだ」
アーニー「考え過ぎたり、弾き過ぎたりして、曲をダラダラと引き延ばさないように気をつけたわけさ。ただただ6分くらい演奏していた方が、楽だったりもするからね。曲に必要な要素だけを入れるっていうのは、実はすごく技術のいる作業なんだ」

__では、例えばシングル曲の「Wreckin’ Bar (Ra Ra Ra)」と「Post Break-Up Sex」は、それぞれどのようにして誕生した楽曲ですか?

ジャスティン「どちらも、若さっていうことと、その年代の誰もが感じるだろう感情について歌った曲なんだ。ベッドの上に座って「Post Break-Up Sex」を書いていた時のことは、覚えてるよ。こういう気持ちを、みんな分かってくれると思う。こういう気持ちって、曲を通して表現するのが一番簡単みたいだね。「Wreckin’ Bar」の方には、あんまりストーリーがないね。チアリーダーとか、ザ・ビーチ・ボーイズの「Be True to Your School」みたいなイメージさ。ただ、若くて楽しい曲だ」

__ところであなた達は、久しく登場していなかったUKギター・ロックの救世主として注目を浴びていますが、現在の心境はいかがですか?

アーニー「ロック・シーンに救いなんていらないよ。すごく視野が狭いなって感じてる」
ジャスティン「すごくバカげてると思うね。自分たちはいいバンドだと思っているし、そうなるように努力もしてきたけど、べつにタイミングとかシーンの状況を見計らって活動してきたわけじゃない。俺たちが救えるのは、自分たちぐらいさ」

__最後に、ザ・ヴァクシーンズの次なる活動目標を教えてください。

ジャスティン「もっとクリエイティブな面で進化していきたいね。自分たちができる限りの、最高のライブ・バンドになりたい。そして良いレコードを出し続けたい。毎回、前作よりも良いレコードをつくっていきたいね!」

photo Roger Sargant
translation Nanami Nakatani
interview & text Fuminori Taniue


【アルバム情報】

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THE VACCINES
What Did You Expect From The Vaccines?
(JPN) SONY / SICP-3080
5月11日発売
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tracklisting
01_Wreckin’ Bar (Ra Ra Ra)
02_If You Wanna
03_A Lack Of Understanding
04_Blow It Up
05_Westsuit
06_Norgaard
07_Post Break-Up Sex
08_Under Your Thumb
09_All In White
10_Wolf Pack
11_Family Friend
12_Good Guys Don’t Wear White (Live) [Bonus Track for Japan]
13_It’s All Good [Bonus Track for Japan]
14_Out Of The Way [Bonus Track for Japan]
15_We’re Happening [Bonus Track for Japan]

【オフィシャルサイト】
http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/BV/thevaccines/
http://www.thevaccines.co.uk/

【Video】

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