Villagers『 {Awayland} 』インタビュー


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アイルランド出身のシンガー・ソングライター、コナー・J・オブライアン(Conor O’Brien)が率いるバンド、Villagers(ヴィレジャーズ)。2010年にリリースしたデビュー・アルバム『Becoming a Jackal』がUKインディー&アイルランド・チャートで1位を記録し、英マーキュリー・プライズにノミネート、さらに英アイヴァー・ノヴェロ賞を受賞するなど、一躍脚光を浴びた若手実力派アーティストです。

そんなVillagersが、ニュー・アルバム『 {Awayland} 』(アウェイランド)を3/6にリリースしました。海外ではDominoから既にリリースされ、本国アイルランドのチャートでは初登場1位を記録。各音楽メディアでも高い評価を獲得している注目作です。コナーが10代の頃から好きだったというディープなエレクトロニック・サウンドの要素を導入し、さらなる音楽的発展を試みた本作。その内容は、前作を継承したアコースティックな音世界と、シンセ~エレクトロニック系の美しいサウンド・テクスチャーが、Villagers独自のセンスで結合した、エレガントで叙情性に満ちたものとなっています。

ここでは、本作『 {Awayland} 』の内容について、先日<Hostess Club Weekender>で来日したVillagersのコナー・J・オブライアンに話を聞きました。


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Villagers『 {Awayland} 』インタビュー

__デビュー・アルバム『Becoming a Jackal』(’10)は、大きな反響、高い評価を得たアルバムとなりました。今振り返ってみて、あなた自身は前作をどのように評価していますか?

「誇りに思っているよ。ただ今聴くと、ミスしたところばかりに気づくんだけどね(笑)。新しいものをつくると、前のものは違った聴き方ができるようになるものさ」

__今作『 {Awayland} 』は、成功作となった前作のスタイルをそのまま踏襲するのではなく、音楽的冒険を試みた意欲作になっていますね。今作を制作するにあたって、まずはどんなことにチャレンジしようと思ったんですか?

「少しプレッシャーは感じていたかな。で、しばらく曲を書けない時期があったから、シンセやエレクトロニック機材を使ってビートやエレメントつくったりと、とにかく自分をできるだけ忙しくすることで、その壁を乗り越えようとしたね」

__もともとエレクトロニックなサウンドには、関心を持っていたんですか?

「そうだね。10代の頃は、ポーティスヘッド、トリッキー、マッシヴ・アタックなどのトリップホップをよく聴いていたし、レディオヘッドのように音楽的に進化を続けるバンドが好きだったんだ。前のバンドにいた時は、シンセを取り入れた音楽をやっていたよ。でも、その後ソロになった頃は、ニール・ヤングやボブ・ディランといったフォーク・サウンドにハマってね。それで前作は、ああいう内容になった。でも、それはもう前作でやったことだから、今回は次に進みたかったというわけ」

__なるほど。シンセを使って作業をしていく中で、今作の具体的なコンセプトやテーマはどのようなものになっていきましたか?

「前作をつくった時は、もうタイトルもアルバム・カバーのイメージも決まっていたから、そのコンセプトに向かって音楽をつくっていったんだけど、今作では違ったね。ゼロの状態でスタートしたから、とにかくいろんなことを試してみたんだ。で、そうやっていくうちに、自分の中にユーモアのセンスが浮かんできたから、そのユーモアをアイディアとして入れていくことにしたよ。その後、YouTubeなんかで宇宙の映像をいろいろ見たら、人類的、宇宙的なイメージも湧いてきたね。だから、宇宙的でユーモアのセンスも入ったような作品になっているとは思うよ」

__子供の頃に持っていた好奇心や驚きの気持ちを取り戻す、初心に返る、というのもテーマの一つにあったそうですね。

「それもテーマの一つとしてあったね。今言った宇宙に対する興味なんかもそうなんだけど、大人になっていくについて、やっぱり考え方が狭くなったり皮肉っぽくなったりして、子供の頃に持っていたそういった好奇心を失っていくと思うんだ。でも僕はこのアルバムをつくることによって、そこから逃れて、良い意味で好奇心を持ち続けるってことを保ちたかったんだよ。今作は、そのために音楽をつくっていったような部分もあるんだ」

__サウンド面に関しては、エレクトロニックな要素を取り入れつつも、基本的ににはバンドを従えたサウンドで統一されていますね。曲づくりやレコーディングは、どのようなプロセス、方法で進めていったんでしょうか?

「当初はもっとエレクトロニックなサウンドのアルバムだったんだ。前作の時はまず言葉があって、そこから音楽が生み出されていった感じだったんだけど、今作の場合はまず音、サウンド・テクスチャーがあったからね」

__なるほど。

「その上で、エレクトロニックなサウンドとアコースティックなサウンドをミックスするというのは、やってみたいことだったよ。それはとてもやりがいのある、大変な作業だからね。で、いろいろ足し算、引き算をしていくうちに、エレクトロニックな要素はちょっと少なくなった。そういった要素はBGM的なものになった、というかね」

__では、そういった音づくりの作業自体には、かなり時間をかけたんですか?

「そうだね。もともと時間をかけるタイプだし。今回のアルバムの場合は、最初に14曲だけがあって、そこから行ったり来たりしながら作業を詰めていったから、ものすごくレイヤーの重なった曲になっていたよ。で、最終的に11曲にまとまった。バンドがアルバムをつくる時って、通常は20曲くらい用意して、そこからレコーディングで曲を選んでいくことが多いと思うんだけど、そうではなかったね」

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__アルバム・タイトル曲の「 {Awayland} 」は、どのようにして誕生した曲ですか?

「なんとなく弾いていたフレーズがあって、それをライブのサウンドチェックの時にも弾いたら、みんなが“それすごくいいから、曲にした方がいいよ”って言われてね。で、自分でも結構気に入っていたから、そこからいろいろやっていくうちに、この曲になったよ。歌詞が思いつかなかったから、インストのままにしたね。でも歌詞がなくても、このアルバムの世界観をよく表現していると思う。だから、アルバムのタイトル・トラックにしたんだ」

__“awayland”という言葉には、どんな意味合いを託しているんですか?

「“homeland”の反対の意味なんだけど、自分にとって外の世界、新しい世界、初めての世界であることとか、何事に対してもオープンであることとか、生まれたての子が誰も知らない音楽を聴いている感じとか、そんなイメージだね。でも“awayland”ってなると、果てしなくどこまでも続いていくイメージになっちゃうから、変化や成長というのは自分の内で起こっているスピリチュアルなものだ、ということを表現するために、単語を { } で囲うことにしたよ」

__シングル曲の「Nothing Arrived」は、どのようにして誕生した曲ですか?

「「Nothing Arrived」は、僕も特に気に入っている曲なんだ。この曲は、唯一朝起きた瞬間にもう思いついていた曲で、その時、すでに歌詞やコーラスも頭の中にあったんだ。だから、忘れないうちにすぐギターを手に取って、曲を書いたね。ヴァースの部分だけは、後で目が覚めている時に付け加えたけど(笑)」

__そうなんですか。とてもいい曲ですね。

「ありがとう。この曲にあるフィーリングっていうのは、孤独や死など、みんなが経験する辛い時期というものを肯定的に捉えて、そこから希望を見つけ乗り越えていく、そういう時期があるからこそ人は強くなっていく…というものなんだ」

__ところで、今作の中で仕上げるのに一番苦労した曲というのは、何でしたか?

「うーん。「Passing a Message」は、ミキシングが大変だったね。曲づくり自体はそんなに大変な方じゃなかったんだけど、“こういうドラム・サウンドにしたい”っていうこだわりがあったんだ。で、いざミキシングしてみたら、思い描いていたサウンドと全然違うものになってしまって、上手くいくと思っていたのにどうしよう?ってことになった。だからいろいろ考えて、2倍の時間を費やしてしまったよ。最終的には、良いサウンドに仕上がったと思っているよ」

__ちなみに、今回の曲づくりやレコーディングで特に印象に残っているエピソードは、何かありますか?

「そうだなぁ。友達のアーティストがつくった、パーツを指定してつくるベイビードールみたいな人形を、マスコットとしてスタジオに行く時いつも持っていってたんだ。そうしたら、ストリングスのプレイヤー達がスタジオに来た時、演奏中にその赤ちゃんを見つけて、かなり驚いてね(笑)。そんなものがスタジオに置いてあるなんて、知らないからさ。だから、彼らの休憩中に場所を移しておいたら、また演奏中に見つけてすごいビックリしてて.,..あれはちょっと面白かったよ(笑)」

__最後に、あなたの次なる活動目標、ヴィジョンについて教えてください。

「僕はさっきも言った通り、制作にすごく時間のかかるタイプだから、もう次のアルバムのことをメンバーと相談したりしているんだ。いろいろアイディアを持ち寄っているところだから、これから成長、発展させていきたいと思っているよ」

interview iLOUD


【リリース情報】

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Villagers
{Awayland}
(JPN) Domino/Hostess / HSE-19146 (WIGCD294J)
3月6日 発売
※ボーナストラック5曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付
HMVでチェック

tracklist
01. My Lighthouse
02. Earthly Pleasure
03. The Waves
04. Judgement Call
05. Nothing Arrived
06. The Bell
07. {Awayland}
08. Passing a Message
09. Grateful Song
10. In a Newfound Land You Are Free
11. Rhythm Composer
12. Memoir*
13. Shards*
14. The Waves: LIVE SESSION*
15. Nothing Arrived: LIVE SESSION*
16. Becoming A Jackal (from The Workmans Club LP)*
*ボーナストラック

【オフィシャルサイト】
http://www.wearevillagers.com/
http://hostess.co.jp/

【全曲試聴】
コチラで実施中:http://hostess.co.jp/news/2013/03/002368.html

【VIDEO】

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