
’99年にカナダのトロントで結成されたロック・バンド、ブロークン・ソーシャル・シーン。Arts & Craftsレーベルを代表する彼らは、それぞれが別バンドやソロ・ミュージシャンとしても活動を行っている、大所帯のグループだ。現在のメンバーは、ケヴィン・ドリュー、ブレンダン・カニング、ジャスティン・ペロフ、チャールズ・スペアリン、ファイストなど、約23名。『You Forgot It In People』(’02)や『Broken Social Scene』(’05)といった人気作を送り出し、確固たる地位を確立している。
そんな彼らが、待望のニュー・アルバム『フォギブネス・ロック・レコード』をリリースした。なんと、シカゴ音響派の中心人物、ジョン・マッケンタイア(トータス etc)をプロデューサー兼メンバーに迎え制作した、注目作だ。気になるそのサウンドは、彼らならではの多様な音楽性と、マッケンタイアの緻密なプロダクションが融合した、マジカルでドリーミーなもの。新たな音世界が展開していく、充実した内容となっている。
本作の内容について、バンドの主要メンバー、アンドリュー・ホワイトマン(アポッスル・オブ・ハッスル)に話を聞いた。なお、本作の日本盤には、ボーナストラックとして『Lo-Fi For The Dividing Nights』(10曲、約22分の最新EP)が、なんと丸ごと収録されている。
ーー早速ですが、ニュー・アルバム『フォギブネス・ロック・レコード』について教えてください。前作から約5年ぶりとなる作品ですが、制作はいつ頃スタートしたんですか?
「1年くらい前だったかな。制作には、9ヶ月くらいかかったと思う。今回は、時間を見つけてはシカゴに行って、ジョニー(ジョン・マッケンタイア)と作業をしたんだ。で、トロントでオーバーダブを重ねて、またシカゴに戻って、ジョニーのところでミックスダウンをした。今回ジョニーは、本当に深いところまで作品に関わってくれたね。彼は、ヨーロッパ・ツアーの一部にも参加してくれる予定だよ」
ーー今回、ジョン・マッケンタイアに参加してもらった経緯は何だったんですか?
「たしか、ケヴィン(・ドリュー)が彼にコンタクトを取ったんだ。もともとは、ジョニーにリミックスをしてもらうつもりで、ケヴィンが話を持ちかけたんだけど、そうしたら “リミックスには興味がないけど、ブロークン・ソーシャル・シーンとしてつくる作品のレコーディングになら、参加してもいいよ”って言ってくれたらしい。それがきっかけだね(笑)」
ーーそうだったんですか(笑)。で、本作には、これまで同様というか、これまで以上に多数のミュージシャン、アーティストが参加していますね。追加メンバーやゲストまで含めると、計33名にもなりますよ。曲づくりは、どのように行っていったんですか?
「実際のプロセスは、まずチャーリー(チャールズ・スペアリン)の家でジャムをして、とりあえずレコーディング素材をためることからスタートした。いくつかはすぐに曲としてまとまっていったけど、基本的に僕らはゴチャゴチャしていて、まとまりのないグループだから(笑)、ただただジャムをしていただけだったよ。で、その後ジョニーのところに行くようになって、素材の中から良いと思える曲をレコーディングして、形にしていったんだ」
ーーなるほど。
「でも、シカゴにあるジョニーのスペース(ソーマ・スタジオ)って、大きいわけじゃない。それなのに、僕らは大勢いて、誰もがいろんなことをやりたがっていた。クローゼットくらいしかないスペースに、人がひしめき合っていて(笑)、仕方なく、仮でもう一つ別のスタジオをつくったよ。で、3人がメインのスタジオで録音している間、暇にしている連中は、その別のスタジオで別の曲をつくっているような感じだった。最終的には、42曲もでき上がっていたね。このアルバムは、そこから14曲ピックアップしたものなんだ」
ーーなるほど。
「でも、シカゴにあるジョニーのスペース(ソーマ・スタジオ)って、大きいわけじゃない。それなのに、僕らは大勢いて、誰もがいろんなことをやりたがっていた。クローゼットくらいしかないスペースに、人がひしめき合っていて(笑)、仕方なく、仮でもう一つ別のスタジオをつくったよ。で、3人がメインのスタジオで録音している間、暇にしている連中は、その別のスタジオで別の曲をつくっているような感じだった。最終的には、42曲もでき上がっていたね。このアルバムは、そこから14曲ピックアップしたものなんだ」
ーーでは、そんな本作のタイトルを、 “フォギブネス・ロック・レコード”(Forgive-ness Rock Record)とした理由は何でしたか?
「“言葉とその音による魔法”を表現したかったんだ。日本語に、コトダマ(言霊)って言葉があるよね? それを思い浮かべて思い浮かべてくれればいいよ。“forgiveness”(許し)って言葉をみんなが口にするようになれば、もっと良い世界になるんじゃないかな(笑)。まぁ、ファンやリスナーの人達自身で、その意味を考えて、感じ取ってほしいしね」
ーー分かりました。音楽的には、より多彩な音のレイヤーを配しながらも、シンプルで抑揚のきいたサウンドを追求しているように感じました。
「そこには、ジョン・マッケンタイアの功績があるだろうね。彼は、サウンドをすごく正確に捉えるんだ。トータスやザ・シー・アンド・ケイクなんかもそうだけど、サウンドはすごく面白いテクスチャーを持っているのに、音がとってもクリアだよね。どの音がどこにハマっていれば、その音はクリアに聴こえるのかってことを、彼はよく分かっているんだ。僕らはポジティブで、何に対してもオープンなバンドだけど、このアルバムでは、そういう僕らのオープンに何でも受け入れていく性質と、ジョニーの細かく正確に音を配置していく才能が、上手く結びついたと思う」
ーーシングル・カットされた「Forced to love/All to All」は、どのようにして誕生した楽曲ですか? 特に「All to All」の方は、ある種ダンス・ミュージック的なアプローチの曲になっていて、驚きました。
「「All to All」は、リサ(・ロブシンガー)が歌った、確かにダンス・ミュージック的な曲だね。いろいろと変更を重ねながらつくり上げていった曲だよ。もともとは、アコースティック・ギターやピアノがたくさん入っていたんだけど、最後のミックスで落とされた。そこに、ジョンがストリングスのパートを加えたんだと思う。今回のレコーディングでは、何かパートを録音した後、それを家に帰って聴き返してみたら、同じメロディーを全然違う楽器が奏でている、ってことがよくあったね(笑)」
ーーこの夏には、フジロックで久々に来日しますね。’06年に出演した時のことは、覚えていますか?
「もちろんさ! でも、あのときは、ほとんど日本にいる時間がなかったんだ。成田に着いて、現地に行って、プレイして、寝て、飛行機に乗る、みたいな感じだったね。僕は、日本や日本文化が好きで、歌舞伎も三度観たことがあるんだ。もっと日本にいたかったなぁ。次はちゃんとしたツアーで日本に行って、ゆっくりしてみたい」
ーーでは最後に、ブロークン・ソーシャル・シーンの次なる目標を教えてください。
「はっきりしてるよ。今、みんなで新曲のライブ・リハをしているんだけど、「Sentimental X’s」って曲があるんだ」
ーーファイストと、メトリックのエミリー・ヘインズと、スターズのエイミー・ミランをフィーチャーした曲ですね。
「で、チャーリーが今までにプレイした中でも、一番のベース・ラインが入っているんだけど、まだちゃんとライブで再現できてない(笑)。だから、次の目標は、「Sentimental X’s」をちゃんとライブでもプレイできるようになることだね!」
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