80kidz 満を持して放つセカンド・アルバム、“Weekend Warrior”インタビュー

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2007年1月に結成され、いまやクラブ・シーンからポップ・リスナーまで、多くの人々から支持を獲得している、次世代エレクトロ・ユニット、80kidz。DJユニットとして活動をスタートし、自主制作で発表した二枚のミックスCDや、リミックス・ワークで注目を集めた後、2009年に発表したファースト・アルバム、『This Is My Shit』をスマッシュ・ヒットさせ、大ブレイクを果たした注目株です。

そんな80kidzが、このたび約1年半ぶりとなるセカンド・アルバム、『Weekend Warrior』をリリースしました。ギターを前面に押し出した、バンド的なエレクトロ・トラックから、アシッド・サウンド、インディー・ポップ / チルウェイヴの要素までをも飲み込み、新しいサウンドを提示した本作。ボイス・サンプル以外は歌を用いず、インスト・トラックのみで構成されている点も、話題となっています!

80kidzの新たなフェイズを示す、『Weekend Warrior』の制作背景に迫るべく、メンバーのAli&とJunにロング・インタビューを行いました。

80kidz 満を持して放つセカンド・アルバム、“Weekend Warrior”インタビュー

Aeroplane『We Can’t Fly』インタビュー

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ベルギーを拠点に活動するプロデューサー/DJ、Vito de Lucaのプロジェクト、Aeroplane。’07年にシングル「Aeroplane / Caramellas」でデビューして以来、Nu-Discoを牽引する存在、新たなバレアリック・サウンドの旗手として話題を集めてきた注目株です。リミキサーとしても人気を博し、これまでに手がけてきたリミックスは、Friendly Fires「Paris」、Grace Jones「Williams Blood」、Sebastien Tellier「Kilometer」、Robbie Williams「Bodies」などなど多数。公式リリースはされていませんが、MGMT「Electric Feel」のリミックスでも話題となりました。
そんなAeroplaneが、待望のデビュー・アルバム『We Can’t Fly』をリリースしました。Au Revoir Simoneや、ザ・ローリング・ストーンズ「Gimme Shelter」でのボーカルで知られる、伝説的な女性R&Bシンガー/女優、Merry Clayton、Uffie「Pop The Glock」のPVにも出演していた、LA在住の注目ティーンエイジ・シンガー、Sky Ferreiraらが参加した注目作です。

本作『We Can’t Fly』の内容とAeroplaneの音楽的背景について、Vito de Lucaに話を聞きました。

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Chromeo ニュー・アルバム“Business Casual”インタビュー

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A-Trakの兄としても知られるデイヴ・ワン [Dave 1](ギター&ボーカル)と、アラブ人の血を引くピー・サグ [P-Thugg](トークボックス)からなる、モントリオール出身のエレクトロ・ファンク・ユニット、Chromeo。’04年に、Tiga率いるTurbo Recordingsから、ファースト・アルバム『She’s In Control』を発表し、’80sファンク / ディスコ・ミュージックさながらのグルーヴで注目を集めた実力派です。’07年には、「Fancy Footwork」をフロア・ヒットさせ、ニュー・エレクトロ界隈で大きな話題となったほか、Vampire WeekendやFeistの楽曲リミキサーをつとめるなど、多方面から支持を獲得しています!

そんなChromeoが、このたび約3年ぶりとなるニュー・アルバム、『Business Casual』を発表しました。Chromeoらしい、ファンキーで粘り強いグルーヴ感とダンサブルなビート、’80s感満点のシンセ・サウンドに加え、 ’70年代のソフト・ロックやバラードの要素が取り入れられた本アルバム。これまで以上に歌ごころを追求した、深みのある楽曲が詰まった意欲作です。

そんな『Business Casual』の内容について、Chromeoのピー・サグに話を聞きました。

Chromeo ニュー・アルバム“Business Casual”インタビュー

Chromeo ニュー・アルバム“Business Casual” interview

ブラック・ミュージック・バンド、Bran Van 3000のメンバーとして活動していた経歴を持ち、A-Trakの兄としても知られるデイヴ・ワン [Dave 1](ギター&ボーカル)と、アラブ人の血を引くピー・サグ [P-Thugg](トークボックス)からなる、モントリオール出身のエレクトロ・ファンク・ユニット、Chromeo。’04年に、Tiga率いるTurbo Recordingsから、ファースト・アルバム『She’s In Control』を発表し、’80sファンク / ディスコ・ミュージックさながらのグルーヴで注目を集めた実力派だ。’07年には、「Fancy Footwork」をフロア・ヒットさせ、ニュー・エレクトロ界隈で大きな話題となったほか、Vampire WeekendやFeistの楽曲リミキサーをつとめるなど、多方面から支持を獲得している。

そんなChromeoが、このたび約3年ぶりとなるニュー・アルバム、『Business Casual』を発表した。Chromeoらしい、ファンキーで粘り強いグルーヴ感とダンサブルなビート、’80s感満点のシンセ・サウンドに加え、’70年代のソフト・ロックやバラードの要素が取り入れられた本アルバム。これまで以上に歌ごころを追求した、深みのある楽曲が詰まった意欲作だ。また、ビヨンセの妹でもあるR&Bシンガー、Solange Knowlsのボーカル参加や、フレンチ・ハウス・ユニット、CassiusのPhillipe Zdarがサポート・プロデューサーをつとめている点も注目だ。

エレクトロニック・ミュージック・シーンにおいて、独自路線を貫いている個性派、Chromeo。彼らの最新モードが詰まった新作『Business Casual』について、ピー・サグに話を聞いた。


__’07年に発表した『Fancy Footwork』のヒットを経て、Chromeoはいまやリミキサーとしてもひっぱりだこで、大きな成功を収めていますね。それについて、ご自身ではどう思いますか?

ピー・サグ「俺達が音楽に注いでいる努力を、世間が評価してくれていると感じるね。リミックスのオファーは数多く受けているし、いいトラックもたくさんあるけど、残念ながら全てのオファーを受けることはできていないんだけどね」

__また、Chromeoはこれまでに、世界各地でギグを行ってきました。様々な国でプレイして、得たものとは何でしょうか?

ピー・サグ「いろんな国に行ったから、パスポートに新しいページが必要だよ(笑)! 新しい場所に行くこと、そして世界中のファンに会えることは、何よりも嬉しいね。トルコ、日本、ブラジル、アメリカ、ヨーロッパ…場所がどこであれ、ファンへの恩返しとして、最高のショーを行う機会があるのは素晴らしいことさ」

__Chromeoのように、’80sエレクトロ・ファンクやディスコ・ミュージックを、ここまで忠実に表現しているアーティストは、今のダンス・ミュージック・シーンには他にいないと思います。ある意味、異端とも言えるスタイルですよね?

ピー・サグ「Chromeoを結成した時から、俺達は音楽的な“異端者”だった。これは自ら選択したというよりも、純粋に俺達のセンスだね。シーンのトレンドがエレクトロクラッシュだった頃、俺らは、アルバム『She’s In Control』(’04)で見せたような生のファンクをやっていたし、Boys NoizeやJusticeのような、ディストーション・サンプルや、ヘヴィーでアグレッシブなサウンドが主流だった時には、滴音のようなリバーブや、Quincy Jonesのようなプロダクションを用いた。何を影響源とするか、そしてトレンドを追うかどうかは、自分たちで自由に決めているんだ」

__なるほど。このたび約3年ぶりに発表した、ニュー・アルバム『Business Casual』は、どんなコンセプトの作品なのでしょうか?

ピー・サグ「これは、Pink Floydの作品みたいなコンセプト・アルバムというわけではないけど、全体を通して、親しみのあるテーマを持った、グルーヴあふれる楽曲を収録しているよ。あと、このアルバムは、カセットテープのように二つの面を持っているんだ。アナログ・レコードで聴いてもらうと分かると思うけど、サイドA(前半)は、よりファンク色が強いグルーヴ、サイドB(後半)は、バラードとクラシックなソフト・ロック的要素で構成されている」

__たしかに本作のサウンドは、’80sミュージックの単なる再現に終わらず、オリジナリティーにあふれていると感じました。

ピー・サグ「俺達は、ある一定のところまでは’80sの要素を取り入れるけど、一人よがりになってしまわないよう気をつけているからな。今作には、’70年代後半のソフト・ロックや、バラードの要素を多く取り入れた。これまでと同じことを繰り返さないためにも、アンテナを張る音楽の幅を、常に広げるよう心がけているんだ。新たな音を出すために、今回は新しいシンセを使って、音色づくりにも多くの時間を費やしたよ」

__前作『Fancy Footwork』よりレベルアップしたサウンドを届けるために、新たに挑戦したことはありますか?

ピー・サグ「今回は、ソングライティングに集中したね。ピアノ・コードのみで楽曲を発展させたのは、新たな挑戦だったよ。具体的には、ピアノ・コードに重点を置きながら、歌をベーシックな部分まで分解していき、その後、Chromeo特有のサウンドを肉付けしていったんだ。いきなり曲全体のサウンドを組み立てるのではなく、まずは歌の基本的な部分から、制作に着手したのさ。この方法をとったことで、歌の本質に触れることができたね」

__その結果、ボーカルはどのようにパワーアップしましたか?

ピー・サグ「今作のボーカルは、過去のものよりも深みが増して、より音楽的になったと思うよ。もちろん、Chromeoらしい、楽しいダンスの要素も維持するよう意識したさ。進化をしつつも、自分達のサウンドを失わないよう、バランスを保ちながら曲づくりしていったよ」

__リード・シングル「Don’t Turn The Lights On」には、どんなメッセージを込めましたか?

ピー・サグ「この曲を逆再生すると、Allister Crowley(※編注: ’80年代後半〜’90年代に注目を集めた、カルト系のイギリス人魔術師)が、一節歌い始める…って、それはジョークだけど(笑)。「Don’t Turn The Lights On」は、アルバムの中でも、最もシリアスなことを歌っている曲の一つさ」

__そうなんですね。この曲では、“目”をモチーフにしたユニークなミュージック・ビデオも印象的でした。

ピー・サグ「あまりにシリアスになりすぎないように、ビデオには、奇抜なビジュアルや面白い展開を盛り込んだのさ。遊び心を少しだけ入れて、この曲のメッセージを、リスナーが文字通りに受け止めすぎないようにしたかったんだ」

__その一方、もう一つのシングル曲「Night By Night」は、Chromeoが以前から大事にしている、セクシーさが前面に押し出された楽曲ですね。この曲のビデオでは、デイヴ・ワン(Chromeo)がキレのいいダンスを披露していたので、驚きました。

ピー・サグ「「Night By Night」は、スピード感のある、大都市的な要素をイメージした曲なんだ。それを表現する方法はいくつもあったけど、とにかく歌に込めたエネルギーを放出したかった。そこで俺達は、ビデオに’80sの伝統的なダンスを取り入れてみたんだ。これは、ビデオの監督をつとめたJeremie Rozanのアイディアなんだけど、とても気に入っているよ。特に、冒頭に映っている、デイヴのポケットに入った歯ブラシのシーンとかね(笑)」

__ところで、「When The Night Falls」には、R&BシンガーのSolange Knowlsがボーカル参加していますね。彼女とコラボレートした感想はいかがでしたか?

ピー・サグ「彼女はもともと、デイヴ・ワンの弟でもある、A-Trakと知り合いだったから、Chromeoの音楽も聴いていてくれたんだ。だから、このコラボレーションはとてもスムーズで、心地のいいものだったよ。彼女は、とても素晴らしい歌声を披露してくれたね!」

__Solange(Knowls)のクリアーなボーカルは、Shannonのような’80年代のフリースタイル・シンガーを彷彿とさせますね。

ピー・サグ「どちらかというと俺達は、MadonnaやChaka Khan、Evelyn Champagne Kingといったディーヴァのことを思いながら、「When The Night Falls」を書いたんだけどね。この曲は、アルバムにファンクの要素を加えるために、制作期間の終盤にレコーディングしたものなんだ」

__その他に、本アルバムにおける重要曲はどれでしょうか?

ピー・サグ「最も気に入っている曲の一つは、「J’ai Claque La Porte」だね。普段俺達がやるようなことから、完璧に逸脱した内容になっているのと、フレンチ・バラードをChromeo流に表現できたのが、その理由さ。Chromeoは二人ともフランス語が母国語だから、そういう意味でもこの曲がアルバムに入っているのは、素敵なことだと思うよ」

__話は変わりますが、『Business Casual』のアルバム・アートワークは、Robert Palmer(※’70〜’90年代に活躍を見せた、UKの大御所ブルー・アイド・ソウル・シンガー)の『Pressure Drop』からインスパイアされたものだそうですね。

ピー・サグ「あぁ。こういった昔のクラシック作品によく登場する、“洗練された色気”を再現するのが好きで、今作では足をキーボード・スタンドのような形で、融合させてみたんだ。『Pressure Drop』のアートワークそのものというよりは、あのジャケットが代表するようなスタイルが重要なのさ。説明するのが難しいけど、すごく良いヴァイブスを持っているよね」

__最後に、Chromeoの活動ビジョンを教えてください。

ピー・サグ「俺達は、今後も良質な音をつくり、バンドを継続的な存在にしたいと思っているよ。ファンのみんなが、Chromeoの音楽を聴きたいと思う限りね!」

interview & text EMIKO URUSHIBATA
translation AKIMOTO KOBAYASHI

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80kidz 満を持して放つセカンド・アルバム、“Weekend Warrior” interview

2007年1月に結成され、いまやクラブ・シーンからポップ・リスナーまで、多くの人々から支持を獲得している、次世代エレクトロ・ユニット、80kidz。DJユニットとして活動をスタートし、自主制作で発表した二枚のミックスCDや、リミックス・ワークで注目を集めた彼らは、2008年に12インチ・シングル『Disdrive EP』、初のCD作品『Life Begins At Eighty』をリリース、両作品が評判となり、クリエイターとしても頭角を現している。2009年には、ファースト・アルバム『This Is My Shit』をスマッシュ・ヒットさせ大ブレイク、その人気を確実なものとした。また、海外アーティストとも親交が厚く、これまでに、The Shoes、tHe pEneLOpe[s]、Black Kidsなどの楽曲リミックスを担当。autoKratz、Lovefoxxx(CSS)とは、コラボレート曲も発表している。最近では、DJギグに加え、バンド編成でのライブも行っており、をはじめ、台北、メキシコ、フランス、イギリスなど、世界各地のオーディエンスを熱狂させている点も見逃せない。

ここにご紹介する『Weekend Warrior』は、そんな80kidzが放つ、約1年半ぶりとなるニュー・アルバム。ギターを前面に押し出した、バンド的なエレクトロ・トラックから、アシッド・サウンド、インディー・ポップ / チルウェイヴの要素までをも飲み込み、エレクトロの固定概念に縛られない、新しいサウンドを提示した意欲作だ。ボイス・サンプル以外は歌を用いず、インスト・トラックのみで構成されている点も、話題となっている。

80kidzの新たなフェイズを示すアルバム、『Weekend Warrior』。その制作背景に迫るべく、メンバーのAli&とJunに話を聞いた。


__前作『THIS IS MY SHIT』のリリースで、80kidzは大きな躍進を遂げましたが、ご本人としてはどんな手応えを感じていましたか?

Ali&「それまでは、まだクラブ・ミュージック・シーンだけでの認知度だった。でも『THIS IS MY SHIT』のリリース以降は、様々なジャンルのリスナーに、自分たちの音楽を手に取ってもらえたから、ロックが好きな人も、僕らのギグ / DJに足を運んでくれるようになったと思います。でも、まだ手応え的なものは感じていないですね」

Jun「自分でも信じられないほど、いろいろな経験をさせてもらいましたが、どんなこともステップを経てのことだったので、それほど驚くようなことはなかったですね。僕が音楽をやる、もしくは音楽ができる、なんて思っていなかった周りの人も、徐々に評価してくれるようになったのは嬉しかったです」

__そこから現在までの約1年半で、80kidzとしての音楽性やマインド、方向性に何か変化はありましたか?

Ali&「基本の部分は変わらないんだけど、ひたすら歪んでるサウンドには飽きてきましたね。その楽曲に歪む必要性があれば歪ませる、必要性が無ければ歪ませないようになりました。あとは、リスナーをそこまで意識しなくなった。逆に自分達の本質を、意識しだしたかな。音楽性に関しては、僕個人としてはテクノ再考と、静けさの中に潜む攻撃性とか、そんな感じ」

Jun「時代性として、エレクトロというジャンルが、アーティストそれぞれの原点に回帰する方向で進化 / 細分化している中で、僕らも純粋にそうなっただけかな」

__そんな変化を経て発表されたニュー・アルバム、『Weekend Warrior』は、どんな音楽的コンセプトで制作したのでしょうか?

Ali&「自分達の起源でもあるシンセ・リードを押して、ボーカル曲を入れないことが重要でした。わかりやすいメロディーなんだけど、アンサンブルに関しては結構練りましたね。あとは、エレクトロクラッシュとか、エレクトロ初期の音づくりかな。6月にリリースしたEP『Spoiled Boy』も、初期のエレクトロクラッシュとマンチェスターがコンセプトだったし。それと、『Weekend Warrior』では、TB-303とかTR-808の音を多用しています。あとは、OVER2010感。2010年から先を見据えて制作しました」

Jun「まあ、もともとコンセプトを元にはつくっていなくて、制作過程で“これはアリ、ナシ”というのを選択していくことで方向性が決まり、コンセプトが見えてくる感じでしたね」

__本作には、ギターを前面に押し出したバンド的なエレクトロ・サウンドから、アシッド・トラック、インディー・ポップ / チルウェイヴの要素がうかがえるものなど、これまでの80kidzサウンドから、さらに進化した楽曲が詰まっている印象を受けました。

Ali&「僕は、アシッドとかテック・ハウスはもともと結構好きだったんだけど、上手く80kidzの音に落とし込めるタイミングないかなーって思っていたんです。ちょうど世界の流れ的にも、アシッドやテック・ハウスで面白い曲が結構出てきたんで、今回取り入れてみました」

Jun「ビート感に興味があって、いろいろと試しています。試していく中での流れとして、多少ユルい曲もアルバムには収録していますね」

__ここ数年、クラブ・ミュージックからポップスまで様々なフィールドで、“エレクトロ”というスタイルを掲げるアーティストが、一気に増えた感があります。そんな中80kidzは、初期からエレクトロにフォーカスしており、巷では、その代表格と言われることも多々あったかと思いますが、今作ではそこから脱却し、次なるサウンドを追求したいという意識もありましたか?

Ali&「あまりそこまでは考えてないけど、でも80kidzっていうプロダクトは、その時代を僕らなりの解釈で、80kidzのフィルターを通してアウトプットしているものだから、このアルバムには、次なるエッジーな要素もあるとは思う。あまりにもストイックな内容のアルバムも、つくろうと思えばできるんだけど、あえてそれはしていないかも。ティーンエージャーが僕らの音を聴いて、そこから細分化して、いろんなジャンルを聴いてもらいたいなーと。もともと、エレクトロって括り自体が曖昧なものだったから、最近は単純に、“エレクトロ!”って言いづらい部分も出てきてるからね」

Jun「エレクトロから脱却…うんぬんとかは、考えてないけど。いわゆる“エレクトロ”っていうバキバキした音は、僕らももうほとんど聴いていないから、そういう曲をつくりたいとは思わなかった」

__アップデートした音楽性を見せるというのは、とても挑戦的なことに思えます。そういった点で、試行錯誤したことは何かありますか?

Ali&「まったく無理はしていないです。自分達は雑食で音楽を聴いてきたし、今もそう。自分達のアーカイブをもとに、80kidzの音をアップデートしているのかは、わからないけど、挑戦ではなくて、むしろ必然で自然なことだったんです」

Jun「僕たちが興味を持っている範疇を、80kidzというフィルターを通して、アウトプットしただけかな。いろいろ試すことは実験みたいで楽しいし、そういう過程はあまり疲れない。逆に、無理して過去の音を模索する方が疲れますね」

__なるほど。アルバムの全体像を決定づける、きっかけとなった楽曲はどれでしょうか?

Ali&「EPでリリースした、「Spoiled Boy」と「Blow」を制作した直後に、アルバムの全体像が見えました。『Spoiled Boy EP』を出した時には、もうアルバムのデモが上がっていて、“さあ、これからどうしよう?”って感じだったんだけど、あのEPを出したことで逆に、“EPの路線とは、違うことをしよう”って、無意識に思い始めたんです。もう、好きにやっちゃえ的な」

Jun「アルバムの楽曲だと、「Agenda」や「Weak Point」は、僕がデモをつくったんですが、それを収録することが決まった時に、ちょっと気持ちがラクになりました。この2曲は80kidzっぽくないから、“Ali&君やマネージャーから、ダメが出るかな?”って思っていましたからね…。でも、そこまでスタイルの幅を広げてもいいんだなって感じました」

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Avey Tare『Down There』インタビュー

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’00年にアルバム・デビューを果たして以来、実験性を重視したポップ・サウンドを武器に、作品を出すごとに支持層を広げてきたアニマル・コレクティヴ(Animal Collective)。ニューヨークを拠点に活動を続ける、現在のUSインディー・シーンに欠かせない重要バンドです。昨年初頭にリリースしたアルバム『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン(Merriweather Post Pavilion)』は、いわゆるチャート音楽とは一線を画すユニークな音楽性を持っていたにも関わらず、全米チャート13位、全英チャート26位を記録し、名実共に世界的注目を集めるグループへと成長を遂げています。

そんなアニマル・コレクティヴの主要メンバーであるエイヴィ・テア(Avey Tare:デイヴ・ポートナー)が、彼らが運営するレーベル、PAW TRACKSから、初のソロ・アルバム『ダウン・ゼア(Down There)』を10月27日にリリースします。彼が人生体験から得た様々なイメージを音楽にしたという本作。その内容は、電子音やエフェクター音、そしてエイヴィ・テアのボーカルが、時にメロディックに、時にアブストラクトに立ち現れては消えてゆく、まるで海中や地中にいるかのようなイマジネイティブなものとなっています。

本作『ダウン・ゼア(Down There)』の内容について、エイヴィ・テアに話を聞きました。

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Sweet Licious メジャー・デビュー・アルバム『Sweet Licious』インタビュー

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クールで力強いボーカルを持ち味とするSakurako、柔和で温かみある歌声のKaedeからなる、新星R&Bシンガー・デュオ、Sweet Licious。2007年に活動をスタートし、クラブでのライブ・パフォーマンスを通じて、人気を獲得してきた注目株だ。正式デビュー前ながら、人気ヒップホップMCユニット、クレンチ&ブリスタのアルバム、『Peace to Lovers & Out Works』に参加したことでも、話題となっている。

ここにご紹介する『Sweet Licious』は、そんなSweet Liciousの記念すべきデビュー・アルバム。Shinnosuke(SOUL’d OUT)、DJ GEORGIA(CLIFF EDGE)、AILI、Ryuichiro Yamaki、Toshikazu Kadono、UTA(Tinyvoice,Production)といった、実力派クリエイターをトラック・メイカーに迎え、バラードからダンス・チューン、エレクトロ・タッチの楽曲まで、バラエティー豊かなサウンドにチャレンジした意欲作だ。Sakurako、Kaedeが綴った歌詞には、女の子が抱くリアルな心情や、女性が根底に持つ強さが描かれている。

Sweet Liciousのパーソナリティーと、デビュー・アルバムに込めた思いを探るべく、SakurakoとKaedeに話を聞いた。

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Schroeder-Headz インタビュー

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DE DE MOUSEのライブで、激しいパフォーマンスを披露し、佐野元春、PUFFY、CHEMISTRY、BONNIE PINKなど、著名ミュージシャンのライブやレコーディングに参加しているキーボーディスト、渡辺シュンスケ。彼が、新たなソロ・プロジェクト、Schroeder-Headz(シュローダーヘッズ)を始動。ファースト・アルバムとなる『newdays』をリリースしました。そこで、ピアノ、ベース、ドラムのトリオ編成+プログラミングで、ジャズやエレクトロニカ、ブレイクビーツ等の要素を独自に構築した、斬新な音楽性を展開している本作について、渡辺シュンスケに話を聞きました。

Schroeder-Headz インタビュー

MASTERLINK『SUPER SPEED E.P』インタビュー

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NARU(Vo/G)、KOJI(B)、YASU(Dr)の三名からなる、東京出身のエレクトロ・ロック・バンド、MASTERLINK。’02年に活動をスタートして以来、様々な音楽コンテストやオーディションに出場し、高い評価を獲得してきた実力派です。
そんな彼らが、今年6月にリリースし好評を博したメジャー・デビュー・シングル『Traveling』に続く最新作、『SUPER SPEED E.P』を10月6日にリリースします。キャッチーなメロディー、ダンサブルなビート、ドリーミーなエレクトロ・サウンドが揃った「Traveling」の音世界を、さらに深く探求したオリジナル曲、「SUPER SPEED」「Everything」「Special」と、大沢伸一とDAISHI DANCEをリミキサーに起用した「SUPER SPEED SHINICHI OSAWA REMIX」「SUPER SPEED DAISHI DANCE REMIX」の、計5曲を収録した充実作です。

デビュー作『Traveling』以上に、彼ら独自のエモーショナルなエレクトロ・ロック・サウンドが楽しめる『SUPER SPEED E.P』。本作の内容について、メンバーのNARUに話を聞きました。

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iLL『Minimal Maximum』インタビュー

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 ’06年に『Sound by iLL』で衝撃的デビューを果たして以来、様々なシーンから注目を集めてきた、中村弘二(ナカコー)の音楽プロジェクト、iLL。今年6月には、個性的なアーティストが多数参加したコラボレーション・アルバム『∀』(ターンエー)をリリースし、話題を集めたばかりですね。

 そんなiLLが、10月13日に、早くも通算5作目となるオリジナル・アルバム『Minimal Maximum』をリリースします。自身が“肉体的で冷めた感じのダンス・ミュージック”と表現する、ミニマルなテイストを独自に解釈した、イマジネイティブな音世界を堪能できる進展作となっています。

そんな『Minimal Maximum』の内容について、中村弘二氏に話を聞きました。

iLL『Minimal Maximum』インタビュー