CROQUEMONSIEUR LDKレーベルの第一弾は、大沢伸一の変名プロジェクト!

世界レベルのDJ/プロデューサーとして知られる大沢伸一と、LOUD誌が共同主宰で立ち上げたデジタルレーベル、LDK。その第一弾として、CROQUEMONSIEURの「Wild Cat/Tiger」がリリースされました。CROQUEMONSIEURは、なんとあの大沢伸一の変名プロジェクトです。

そこで、LOUDでは、大沢伸一本人に、変名プロジェクトで活動することの意義、作品の内容について聞いてみました。


ーーLDK第一弾リリースは、大沢さんの変名プロジェクト、CROQUEMONSIEUR(クロックムッシュ)の「Wild Cat/Tiger」になりました。これはLOUDの希望でもあったのですが、大沢さんも同意してくれましたね。

「そうですね。最初のタイトルなんで、レーベル・カラーをある程度示すという意味でも、新人アーティストをいきなり出すよりはいいのかな、というのがありましたから。とはいえ、そのカラーをあんまりちゃんと示せていないような気もしていますけど(笑)」

ーーまあ、シングル一枚でレーベル・カラーを全て提示することなんて、できませんから。このCROQUEMONSIEURのシングルはエレクトロ・ベースで、「Wild Cat」の方がバキバキな感じ、「Tiger」の方がフワっとした感じになってますよね。

「そうですね。「Wild Cat」と「Tiger」で、バランスはいいかも。今、自分のiPhoneの呼び出し音は「Tiger」になっているんですよ」

ーーそうなんですか(笑)。そもそも変名プロジェクトをやってみたいという気持ちはあったんですか?

「そうですね。これまで、リミックスをする時に変名を使ったことはあったんですけど、アウトプットを増やすために、闇雲に変名を使うってことを、あまりやりたくなかったんですよ。でも、この5年くらいで、自分のダンス・ミュージックにおける方向性というものが、自分なりにでき上がったんで、だったらオルタナティブな名義があってもいいのかな、というところですかね」

ーーCROQUEMONSIEURというプロジェクト自体には、どんなコンセプトがあるんですか?

「それとは逆の発想ですね。僕が今本人名義でやっている音楽的コンセプトからは、今のところハズれてしまうもの。その受け皿がCROQUEMONSIEURって感じです。だからCROQUEMONSIEURでは、相当幅広いものができると思いますよ。何をやっても誰も怒らないと思いますし(笑)。だから、逃げ道的な感じのアウトプットかもしれません」

ーー通常の大沢さんの作風からはみ出ちゃうものにも、やってみたいものは沢山あって、それを実践していけるのがCROQUEMONSIEURだと言うことですね。何で“CROQUEMONSIEUR”という名前にしたんですか?

「もともとは、“KLEIN BLUE”という名義にしていたんですよ。イヴ・クライン(編注:’50年代末から’60年代初頭に活躍した、ヌーヴォー・レアリスム、モノクロニズムを代表するフランス出身の画家)が’57年に打ち出した、“インターナショナル・クライン・ブルー”(IKB)という、花紺のような青色にちなんだ名前なんですけどね。イヴ・クラインは、その青一色だけでいろんな作品を制作した、ミニマル・カラー、モノクローム絵画という表現方法を編み出した人なんです。で、LDKでは、なるべくソリッドでシンプルなままのトラックを出したいなってイメージもあったんで、そういったアート表現と音楽がつながっているのも面白いだろう、と」

ーーなるほど。

「で、“CROQUEMONSIEUR”の方は、もともと思い付きで考えた曲名だったんですよ。でも、それを聞いたOFF THE ROCKERの片われ、上村真俊君(bonjour records)が、“CROQUEMONSIEURをアーティスト名にした方が、面白くないですか?”って言うんで、ひっくり返ってしまいました(笑)。とんでもない経緯でついた名前ですけど、好きですね。今となっては、なんか」

ーー不思議なイメージの名前ですよね。食べ物ってところがいいですよ(笑)。で、「Wild Cat」と「Tiger」ですが、まず「Wild Cat」の方は、曲自体は結構前にできていたものなんですよね?

「そうですね。一年くらい前ですか。かなりムチャなつくり方をしましたね。鍵盤じゃなく、エンベロープでリフをつくってましたから(笑)。“ビ~”という延ばした音だけで、どこまで音階がつくれるのか、みたいな。でも、こういうトライって、いいですよ。だって、鍵盤の音楽って限界があるでしょう? (実際に「Wild Cat」を試聴しながら)…ヘンな曲ですね、やっぱり」

ーーリード・シンセのリフが特徴的ですね。普段の大沢さんの曲よりも、ワイルドだと思います。

「うん、「Wild Cat」ですから。本当は「イリオモテヤマネコ」でも良かったんですけど、それだとさすがに呆れられるでしょ」

ーーですね(笑)。カップリングの「Tiger」の方は、実は、過去にネットでデモを披露していた曲ですよね?

「ええ。たしか、“寅年だから”という理由でつくり始めた曲でした。一日くらいでできちゃったんじゃなかったかな」

ーーでも、バック・トラックは結構複雑なつくりになってますよね?

「すごい複雑ですね。通常ではありえないつくり方してますよ。サンプルのスタートポイントを動かしたり、ピッチを描いてフレーズを組んでます。何か音色を弾いてつくったものじゃないんですよ。「Tiger」は、DJでもよくかけてますね。この曲は、実は『SO2』に入れても良かったんです。でも、UKのA&Rと意見が合わなかったんで、入りませんでした。そのへんは、好みの問題ですよね」

ーーそうでしたか。エレクトロっぽいのに叙情的でもあるという、かなり面白い曲だと思います。そういう意味では、「Wild Cat/Tiger」は、ちょっとした意欲作、という感じでしょうか?(笑)。

「そうですね(笑)。僕、こういう感じの曲ならたくさんつくっているんで、言われれば、ネタ的に5~6曲はすぐ出てきますよ」

ーーLDKでは、こういった作品を今後もリリースしていく予定ですか?

「ええ。LDKは、そのためにつくったレーベルでもありますから、数ヶ月に一度くらいは出していきたいですね。リリースを、DJでタイムリーに使っていきたいですし。とはいえ、フロア・ライクな曲のみをリリースしていきたいわけじゃありませんけど」

ーーそのあたりは、ニューウェイブ時代にあったレーベルの良さを参考にしていきたいですね。いろんな曲を出しているけど、全体としては統一感があるという。

「ええ、そうですね。クレプスキュール、チェリー・レッド、ファクトリー、ラフ・トレード…。そういうレーベルを頭の中では思い描いています。音楽的バリエーションのあるレーベルにしたいと思ってますね。なんで、今後ともよろしくお願いします」

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YES GIANTESS インタビュー

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ボストン出身のインディー・エレクトロ・ポップ・バンド、イエス・ジャイアンテス。同郷のパッション・ピットとは旧知の仲で、パッション・ピットのメンバー、アヤド・アリ・アダミーがプロデュースした「Tuff ‘n Stuff/You Were Young」で昨年デビューを果たすと、そのキラキラのエレクトニック・ポップ・サウンドで一躍注目を集める存在となっています。

そんな彼らが、キャッチーでマジカルなエレクトロ・ポップが詰まったデビュー・アルバム『サイレン』(SIREN)を7月14日にリリースします。

ここでは、そんな『サイレン』の内容について、メンバーのジャン・ロゼンフェルド(Vo)に話を聞きました。

YES GIANTESS インタビュー

YES GIANTESS ボストンから飛び出した、最新型インディー・エレポップ・バンド

ジャン・ロゼンフェルド(Vo)、ジョーイ・サルコウスキ(Dr)、ザック・フライド(G)、チェイス・ニコル(Synth)の4名からなる、ボストン出身のインディー・エレクトロ・ポップ・バンド、イエス・ジャイアンテス(Yes Giantess)。パッション・ピット、エリー・グールディング、マリーナ・アンド・ザ・ダイアモンズといった新進アーティストをいち早くピックアップしてきたインディー・レーベル、NEON GOLDが昨年送り出した期待の新星です。

同郷のパッション・ピットとは旧知の仲で、パッション・ピットのメンバー、アヤド・アリ・アダミーがプロデュースした「Tuff ‘n Stuff/You Were Young」でデビューを果たすと、そのキラキラのエレクトニック・ポップ・サウンドで一躍注目を集める存在となっています。

そんな彼らが、デビュー・アルバム『サイレン』(SIREN)を7月14日にリリースします。プロデューサーにリアム・ハウ(元Sneaker Pimps)を招き、彼ら独自のポップ・センスをメローかつビッグなシンセ・サウンドで表現した力作です。

というわけで、キャッチーでマジカルなエレクトロ・ポップが詰まった『サイレン』の内容について、メンバーのジャンに話を聞きました。なお、彼らは8月にサマーソニックで来日することが決定しています。


ーーデビュー・アルバム『サイレン』(SIREN)の完成とリリース、おめでとうございます。現在の心境はいかがですか?

「最高だよ! メンバーみんなすごくワクワクしてるし、同時にホッとしている。ずいぶん時間がかかったから、やっと世に出せることができて、うれしいね」

ーーあなた達は、昨年パッション・ピットのアヤド(Ayad Al Adhamy)がプロデュースした「Tuff ‘n Stuff/You Were Young」でデビューして、ラ・ルー、リトル・ブーツらとライブやツアーを行なうなどして、注目を集めてきましたが、現在までの活動状況にはどんな感想を持っていますか?

「去年は、驚くような一年だったね。普通にツアーをやることだって特別な経験だというのに、すごくクールで大きなツアーに参加できたことは、僕らにとって誇りになるような経験だった。これまでの人生で見てきた全てよりも広い世界を、去年一年間で一気に見た感じさ」

ーーでは、デビュー・アルバム『サイレン』について教えてください。まず、曲づくりやレコーディングはいつ頃スタートさせたのでしょうか?

「曲づくりを始めたのは’08年の終わり頃だったけど、レコーディングを始めたのは、去年の夏くらいだったね。で、それがやっと終わったのは、すっかり今年に入ってからだったよ」

ーーアルバムのテーマは、どのようなものでしたか?

「音楽的なテーマは、僕ら自身と共に成長し、変化していったと思う。このアルバムが完成するずっと前からツアーに出ることができたのは、ラッキーだったと思うね。その結果として、時間が経つにつれてサウンドも変化していったんだ。例えば、アルバムの1曲目「Can’t Help It」と「Tuff ‘n Stuff」は間逆だね、なんて言われるのは、自分たちでも面白い。だから僕らの音楽は、このアルバムの制作を通じて、スタイル的にも全然違うものになっていったと思う」

ーー本作のアルバム・タイトルを、“サイレン”とした理由は何ですか?

「この“サイレン”は、ギリシャ神話のエピソードにちなんだタイトルなんだ(編注:“サイレン/siren”の語源は、ギリシャ神話に登場する、航行中の船人を美声で誘惑し難破させる上半身が女、下半身が鳥の姿をした海の精、セイレーン/Seirenだとされている)。このアルバムのほとんどの曲は、説明できない何か不思議なものに手招きされているようなことを歌ったものなんだ。それが、各曲を一つにまとめている、アルバム・コンセプトになっているんだ」

ーーなるほど。曲づくりでは、どんな物事からインスピレーションを得ることが多かったんですか?

「自叙伝のように、自分のことを完全にさらけ出すってわけでもないんだけど、自分がこれまでに経験してきた様々なことを小さなストーリーにして、作品に取り込んでいったよ。まぁ、ソングライターの間では、別に珍しい方法でも何でもないだろうけど。例えるなら、ショートストーリーを書いて、自分の人生に関わった人が曲の中に現れては消えていく…って感じさ」

ーーサウンドメイキング面で、特に重要視したことは何でしたか? エレクトロ~シンセ・ポップのテイストを全面に打ち出しながらも、よりメロディアスで空間的な音世界を感じさせるものになっていますね。

「もちろん、“エレクトロニック”なレコードをつくろうとは思ってたよ。でも、僕としては、その中にトランスとか、ユーロ・ポップっぽいサウンドは含まれていないんだ。そういうタイプの音楽はつくれない。エレクトロニックな作品は本当に好きだけど、僕にとってより重要な要素というのは、古典的なソングライティング、古典的なポップ・ミュージックだからね。実際、個人的に音楽を聴く時は、シンガー・ソングライター系の作品が多いし。だから、僕がシンセ~エレクトロニック・ミュージックを好きな理由は、ビッグなクラブ・サウンドというものとは違うところにあるんだ」

ーーあなた達が思い描く理想のポップ・ミュージックを具現化するために、エレクトロニックなサウンドを必要としている、ということですね。本作には、中心的なプロデューサーとしてリアム・ハウ(Liam Howe/元Sneaker Pimps)が参加していますが、彼との制作作業はいかがでしたか?

「リアム・ハウとの作業は、このアルバムの制作プロセスの中でも、ハイライトだったと思う。友達から紹介してもらったんだけど、プロデューサーとカチッとかみ合った感じで作業をした経験って、これまでなかったんだ。その結果、すごく新しい音世界が広がったと思うよ」

ーー「The Ruins」には、スタースミス(Starsmith)がプロデューサーとして参加していますが、彼とコラボレートはいかがでしたか?

「彼とは、以前NEON GOLDで一緒に仕事をしたことがあってね。で、最初はネットでアイディアをやり取りしていたんだけど、僕がイギリスに行ったときに顔を合わせて、2曲くらい一緒に曲をつくったんだ。彼と一緒に作業するのは、クールだったよ。彼は、すごく若くて、すごく作業も速くて、僕らと同じ言語を話すんだ!(←これ、アメリカン・ジョークです、おそらく)」

ーー本作のリード・トラック「Can’t Help It」は、どのようにして誕生した曲ですか?

「「Can’t Help It」は、僕にとってすごく多くの意味を持った曲だね。この曲をレコーディングしている時は、本当に多くのことを学んだよ。自分の人生の中ずっと感じていた、ある特別な感情について歌った曲なんだけど、自分が望んだ通りの言葉を書き出すことができた。すごく抽象的な思いを書き表すことができたあの感覚は、本当に素晴らしかったね。想像していたよりも、すごく大変な作業だったよ」

ーー8月には、サマーソニックで来日しますね。どんなパフォーマンスを行う予定ですか?

「日本に行けることにすごくワクワクしてるんだけど、騒々しくてエネルギーに満ちた、すごく楽しいライブになるだろう。まるでロック・バンドみたいなライブになるんじゃないかな。ライブの時、僕らは何か特別な方法にとらわれるってことがないし、できる限りワイルドにプレイする。それが、僕らにとって一番楽しいライブのやり方さ。それがクラウドにとっても一番楽しめるライブならいいな、って思ってるよ」

ーー最後に、イエス・ジャイアンテスの今後の活動目標を教えてください。

「今は、ただ音楽を演奏できるだけですごく楽しいね。たくさんの人が僕らの聴いて楽しんでくれれば、それだけで目標は達成できたって思っているよ。僕らがライブをできることなんて絶対ないだろうなって思っていたから、今は毎日ライブをやるたびに新しい感覚を覚えるんだ。本当に最高さ! で、具体的な話としては、これから数ヶ月に何作かシングルを出していきたいね。シングルとして、数ヶ月に数曲ずつ出していくのが楽しいかな。実際『サイレン』は、そういう考え方で曲をつくっていったものだったりするんだ」

DJ JURI インタビュー

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DJ / プロデューサーとして10年以上のキャリアを持つDJ JURI。ハウスやテクノをベースに、ディジュリドゥや和太鼓、三味線といった世界各地の民族楽器を取り入れた、トライバルな独自のサウンド、“太鼓DUB”を打ち出し、これまでに1枚のオリジナル・アルバムとミックスCDをリリースしている。

そんな彼女の楽曲を、全国各地のクラブ・シーンで活躍するアーティストがリミックスしたアルバム『DJ JURI remixes』が、2枚同時にリリースされた。DO SHOCK BOOZE、SYNCA、PHAN PERSIE、FLAT THREEら12組のアーティストによるリミックスを、2枚合わせて21曲収録した本作。参加リミキサーは、どのように選んだのだろうか?

「音楽でキャッチボールをしたいと思い、イベントなどで全国を回ったときに出会った方々にお願いしました。音楽性も大切だけど、お願いした方々の人間性にひかれた部分が大きかったです。完成した作品を聴いて、やはりその感覚は間違っていなかったと思いました」(DJ JURI)

本作では、原曲の持つ躍動感を生かしつつ、トライバル・テクノやハード・テクノ、テック・ハウス、ボーカル・ハウス、エレクトロ・ハウスなど、様々な形に生まれ変わった、フロア・ユースな21曲を楽しむことができる。DJ JURIは、リミキサー陣にサウンド面で何かリクエストをしたのだろうか?

「私がみなさんにリクエストしたのは、“とことんご自身の色でお願いします!”ということでした。なので、曲ごとに、各アーティストの方が持つ世界観を、ふんだんに楽しんでもらえると思います」(DJ JURI)

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2枚のアルバムに、計3曲のリミックスを提供しており、トライバルかつテッキーなサウンドをクリエイトしているDJ / プロデューサーのDO SHOCK BOOZE。彼は、リミックスする際に意識した点について、こう語っている。

「まずとても光栄でワクワクしました(炎)。DJ JURIさんの楽曲では、とにかく素材の良さが目立っていたので、それらの素材から構成されたトラック独自のトライバル感を生かしたいと思いました。あと、女性の持つ繊細さもキメ細やかに表れていたので、リミックスでは、僕の持つ無骨さを表現してみたつもりです。普段自分ではなかなか録れないエキゾチックな音も、自由に使わせてもらえたので、とても貴重な経験となりました」(DO SHOCK BOOZE)

本作について、“いろいろな世界の音楽を、とことん楽しんでもらいたい”と語るDJ JURI。彼女の“太鼓DUB”サウンドと、国産クラブ・ミュージックの最新潮流を、『DJ JURI Remixes』でぜひ感じ取ってほしい。

TOTEM × DJ JURI Remixies Launch Party
28th May 2010 @ Studio Cube326, Tokyo

【Studio Cube326 2F】LINE UP: DJ JURI, OMB, Do Shock Booze, Iori Wakasa, Killy,Nanae, MAX, 玄武, JBK
SHOWCASE: TOTEM BELLY DANCER
LIVE PAINT: One mind creation
VJ: Hicolor

【SECOND FLOOR 4F】LINE UP: eckoz, Abil, Yocchi, DJ 七福, SHICO, VEX aka honda, NATARU
VJ: Japanegga
LIVE PAINT: パール翼
SHOP: らいおんのうた(民族楽器ディジュリドゥとジェンベのお店), りょく

Studio Cube326を拠点に開催されている、屋内レイヴ・パーティー、<TOTEM>。7回目となる今回は、オリジナリティあふれるトライバル・サウンド、“太鼓DUB”を武器に、独自のダンス・ミュージックをクリエイトするDJ / プロデューサー、DJ JURI、TOTEMのレジデントDJ / オーガナイザーであるDo Shock Booze、国内外のステージでその実力をいかんなく発揮しているFRAME Recordings主宰、OMBがそれぞれ作品をリリースすることを記念して、TOTEMとのコラボレーションが実現した。

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この日のTOTEMのドレス・コードは“アニマル”ということで、会場には、動物の着ぐるみやコスプレを装ったクラウドも来場。2Fのメイン・フロアでは、新進気鋭のアーティスト陣が、トライバル、テクノ、エレクトロ、テックハウスなどを通じて、“人と音楽性のつながり”を意識した、ボーダレスな音空間を演出していた。その他にも、セクシーで妖艶なダンスを披露してくれたTOTEM BELLY DANCERや、民族楽器ショーケース、音を視覚的に彩るVJの巨大な映像美が見所となっていた。

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4Fフロアでは、ディジュリドゥ、ジャンベなどの民族楽器ワークショップ、アクセサリー、フードなど、多種多様な出店ブースとリラックススペース、ライブペイントなど欲張りなコンテンツが盛り込まれ、閉塞感が漂う世の中へのプロパガンダが遂行された。今後も、TOTEMからますます目が離せない。

photo by ka4ma

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YUMMY インタビュー

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16歳でDJ活動をスタートし、近年では<HOUSE NATION>の初代レジデントDJをつとめるなどして、キャリアを培ってきた若手筆頭ハウスDJ、YUMMY。昨今急増している女性DJの中でも、他とは一線を画す存在感を放つ彼女が、初のオリジナル・アルバム『D.I.S.K.(ダイスキ)』を完成させました!

多彩なゲストと共にYUMMYが紡ぎ上げた、ポジティヴなヴァイブスが詰まった本作。作詞作曲やトラック制作のみならず、アートワークのイメージづくりや、ブックレットのデザイン / グラフィック制作までを、YUMMYが自ら手がけているので、彼女のクリエイティヴィティーを様々な角度から楽しむこともできるアルバムです。

ここではそんな本アルバムと、ご自身のバックグラウンドについて、YUMMYさん本人に語ってもらいました。

YUMMY インタビュー

YUMMY 国内屈指のフィーメール・ハウスDJ / クリエイターが 初のオリジナル・アルバムを発表!

16歳でDJ活動をスタートし、数々のパーティーでプレイ経験を重ね、キャリアを培ってきた、若手筆頭ハウスDJ、YUMMY。2007年からは、<HOUSE NATION>の初代レジデントDJをつとめ、日本各地のクラウドを魅了してきたほか、<cloudland>や<DONUTZ>といったクラブ・パーティーのオーガナイズや、巨大ファッション・イベント<Girls Award 2010>の総合音楽ディレクションを手がけ、多方面で躍進を見せているホープだ。卓越したスキルとフロアの空気を読み取るセンス、豊富な音楽知識に裏づけされた柔軟な選曲は出色で、昨今急増している女性DJの中でも、他とは一線を画す存在感を放っている。2009年に、『HOUSE NATION』シリーズのサブ・ラインとしてリリースしたオフィシャル・ミックスCD、『HOUSE NATION Conductor – YUMMY』では、UKのエレクトロ・アイコン、ルチアーナをフィーチャーしたオリジナル曲、「Sparkle Love」を発表。同楽曲がアンセム化しているほか、Makotraxとのユニット、The signal名義でも、フロア・フレンドリーなオリジナル・トラックをワールドワイド・リリースし、高い評価を獲得している。

そんなYUMMYがこのたび、初のオリジナル・アルバム、『D.I.S.K.(ダイスキ)』を完成させた。彼女が、これまでの音楽活動を通じて描いてきた軌跡と、そこで出会った人たちとの関わりが凝縮された本作。そこには、LISA、Ami Suzuki、Ryohei、SHANADOOといった、ポップ・フィールドで活躍するシンガーや、ヒップホップ・シーンでドープなビートを響かせているEccy、コスプレ&アニソンDJとして、カルト的人気となっているSaolilith、国内きっての実力派ハウス・ディーヴァ、Tomomi Ukumoriなど、多彩なゲストと共にYUMMYが紡ぎ上げた、ポジティヴなヴァイブスが詰まっている。また、作詞作曲やトラック制作のみならず、アートワークのイメージづくりや、ブックレットのデザイン / グラフィック制作までを、YUMMYが自ら手がけているので、彼女のクリエイティヴィティーを様々な角度から楽しむこともできるだろう。それに加え、スティーヴィー・ホアンやMiChi、Sakura & Co.のオリジナル曲をYUMMYが再構築した、リミックス・トラックがボーナス収録されている点も注目だ。

24歳にしてDJ活動歴8年を誇り、『D.I.S.K.』では、アーティストとして次なるフェイズへと羽ばたいたYUMMY。彼女のバックグラウンドと、アルバムの制作風景について、本人にロング・インタビューで語ってもらった。


【独学でスタートさせた、DJの道】

ーーYUMMYさんは、LOUDではもうおなじみの存在ですけれど、これまでの歩みをひも解く話って、実はまだ紹介していなかったですよね?

「そうですね〜。何から話したらいいですかね?」

ーーまだ24歳とお若いですけど、DJとしてのキャリアはもう8年になるそうですね。

「こんなに長く続けられたことって、人生で他に無いですよ。本当に肌に合っているんだろうなぁ。ダンス・ミュージックとか、ボディー・ミュージックに出合った時の衝撃って、すごく大きかったんですよね。自分の体験って、一番信じられるものじゃないですか。生きていたら、いろんなものが好きになるし、気持ちが移っちゃったりもするけど、やっぱり原点に戻ってくるものだからね。DJしている時が一番楽しい」

ーーたしかに、そうですね。誰かに教えてもらったものも大事ですけど、自分の目で見たり、肌で感じたものは、間違い無いですからね。

「私はかつて、フロアで踊り倒していたんですけど、その感覚って、すごく特別なものなんですよ。ゴハンを食べたり、眠ることも幸せだけど、ダンスするっていうのも、それに近いよね。人間にとって必要な感覚、快楽というか。最近のクラブって、みんながフロアでガン踊りしているというよりも、ラウンジっぽかったり、社交場っていう意味合いの方が強かったりするよね。それはちょっと寂しいなって思う」

ーークラブの原点にあるものって、“ステキなダンス・ミュージックがかかっていて、体が勝手に動いちゃう、踊っちゃう”っていう感覚ですもんね。

「そうそう! ダンスしてなんぼ、だと思うんですよね。最近私も、レセプションとかでDJさせてもらったり、ダンス・フロアじゃない場所でプレイすることも増えたんですけど、そんな中<DONUTZ>っていうパーティーを毎月自分でやっていたのも、やっぱりみんなが踊っているフロアでDJをするのが一番好きだし、そういう感覚を忘れたくないからなんですよね」

ーーYUMMYさんの根幹にあるのは、“ダンスすること”なんですね。

「フロアの前列にガン踊りしている人がいると、後ろの方にいる人も、つられて踊ったりするじゃないですか。一人か二人ぐらい、フロアのリーダーっぽい人がいたり(笑)。そういう雰囲気って良いよね。遊びに来ていても、DJしていても、すごく重要な存在」

ーーユニティー感とでも言いましょうか(笑)。知らない人とも、フロアで一体になれるのは楽しいですよね。

「“ユニティー”、いい言葉ですね〜」

ーーダンス・ミュージックに衝撃を受けたのって、具体的にどんな場面だったか覚えていますか?

「初めてダンス・ミュージックに触れた場所はクラブだったんですけど、工藤静香とかSMAP(!)とかも、かかっていたんですよ。そういう曲の間に、’80sのディスコやロックとか、当時最先端だったハウスが挟まれていて。カラオケとかでJ-POPを聴くのとは、違うノリが生まれていましたね。あれがグルーヴというものだったのかな?? そういう、フロアで体を動かす快楽を知ったことが衝撃で、本当に楽しかったのを覚えています」

ーーそこからDJを始めたのは、どういう経緯だったんでしょうか?

「フロアで自律的にダンスするという、鮮烈な体験を経て、学園祭とかで、DJをやりたいなと思ったのが始まりでしたね。その時は、自分の周りにDJって全然いなかったんですよ。四つ打ちのパーティーをやっていたクルーにくっついて、いろんな現場を見てはきたんですけど、実際のDJプレイに関しては師匠がいなくて。その頃って、今みたいにDJはたくさんいなかったし、女の子も全然いなかったですね。今は、いろんな人にDJを教えてもらえるかもしれないから、良い時代だと思います。DJ含め、夜のクラブ活動がもっと身近な物になったとも言いますか。DJの縦社会みたいなものも、もっとオープンなものに、広がって来ているなと感じています」

ーーそうですね。DJでプレイする曲も、以前は“自分の欲しいアナログ盤を、ひたすら探して…”という方法でしか入手できなかったですし。そう考えると、DJというものに対する世間の認識は、だいぶ変わってきた気がしますね。

「でも、ダンス・フロアで我を忘れるまで踊り倒した経験のある人って、今は少なそう」

ーークラブに遊びに行くのは、飲みに行くのと同じノリなのかもしれないですね。

「顔見知りに会いに行くとか、普段から会っている仲間と遊びにいく感じなのかな。私の場合は、知らない人ばかりのパーティーで、“昼間の仕事なんて全く興味がないし、どうでもいいけど、この瞬間だけ共有できていればいいや”という人たちの集団に入っていくのが好きだったから(笑)」

ーーあははは(笑)。YUMMYさん自身のDJスタイルは、時と共に変化してきたのでしょうか?

「今と昔では、全然違いますね。DJを始めたばかりの頃は、ディープハウスや、ウワモノがすごく少ないエレクトロ・スタイルでずっとやっていたんだけど、<HOUSE NATION>に参加して現場を経験していくうちに、オーディエンスがどういう場所を求めているのか、どういうノリを求めているのか考えるようになって、その中で最善を尽くすということも考えるようになりましたね。でも今も、昔買ったアナログをセットに組み込んだり、常に自分がこれだ! と思った好きな音楽をかけているという意味では変わらない。自分でも困っちゃうぐらい、好きな音楽の幅が広いから、自分のスタイルを定義するのは難しいですね」

ーーYUMMYさんは、ハウスDJと呼ばれることが多いですよね。それについてはどう思いますか?

「ハウス、便利な言葉ですよね。最近は、四つ打ちのことを“イーブン・キック”って言うんでしょうか? ハウスDJは、イーブン・キックの曲だったら何でもかけられるし、BPMを早くも遅くもできるし、時間帯によっては、ノンビートやレア・グルーヴもプレイできる。私は、自分のことをハウスDJって言ってるけど、人によって、ハウスの解釈って全然違うなと感じます。後付けでもいいし、実際に遊んでいる人達が正しいし、音を捉えるほうの人間が判断するべきだなあと思っています」

ーーなるほど。そんなYUMMYさんのルーツには、何があるのでしょうか?

「UKのDIYカルチャーと、レイヴ・カルチャーですね。政治的なこと以前に、さっき話した“ユニティー”みたいな、音という夢の言語を通じてみんなが一つになる感覚、一つになるための共通した言語っていうのが、レイヴ・カルチャーにはあるんですよ。野外パーティーに行ったり、昔はハード・ハウスを聴いたりしていましたけど、“聴いたこと無い、何コレ!? アガる!”っていう、動物的な感覚に訴えるヴァイヴスやサプライズを常に提供したいし、変な言葉ですけれど、カッコつけることが目的じゃなくて、アホになれる音が好きなんですよね(笑)。その後、ダークでシリアスな方向にいったりもしたけど、レイヴ・カルチャーが持つ“みんなに与え合う感じ”が、自分の根っこにあるんです」

【スタイルに縛られず、周りの人への感謝を表現した、初のオリジナル・アルバム】

ーーDJ / クリエイターとして、YUMMYさんが目指している理想像ってありますか?

「私自身が、オープン・マインドな考え方や、どんな人が来てもウェルカムっていう懐の深さを、クラブやDJには求めているから、自分もそういう風になりたいな。『D.I.S.K.』はダイスキって読むんですけれど、まさに、パーティーという場所においては、人間好きでいたいし、ブースに入る前には“(フロアの)みんな、だいすきだいすき!”って、心の中で3回唱えています。信じてもらえ無いのですが、私はもともと、極度に人見知りでシャイなんです。パーソナリティーを人にさらしていくのは怖いことだけど、人前に立つ仕事をしていく限り、真剣に向き合っていかなきゃいけないことだと思うし。そんなパーソナルな部分をさらけ出した結果として生まれた、出会いや音楽への考え方が、初のアルバム『D.I.S.K.』には詰まっているんです」

ーーそれは、アルバムで作詞を自ら手がけたという点にも表れていますね。

「DJって、“他人の曲をかけているだけ”って思われている部分もあるだろうし、自分のDJは表現行為ではなかったんです。芸術的なDJプレイをしている人もいますけど、私はどちらかと言うと、エンターテイナーの視点でやっていて。だからアルバムを制作したことは、表現者としての自分を表に出せる絶好の機会だったんですよね」

ーーYUMMYさんは、東京藝大でアートを専門的に学んできた経歴もあるので、芸術表現には長けているイメージがあるのですが。

「表現者としての訓練をしてきたからこそ、簡単に“自分の表現”って口で言うことは、はばかられていました。“ここまでは表現だけど、ここからはエンターテインメント”とか、アートとそうでないものの線引きが、私の中ではハッキリしているんです。その基準が明確にあるから、自分のことをアーティストとは呼びたくありませんでした」

ーー『D.I.S.K.』は、YUMMYさんが描くアーティスト像に、自分自身を近づけていくプロセスの一部と言えるのでしょうか?

「それもあるし、これからもっと、そういうことを音楽でやっていけたらと思っていますよ。でも難しいですよね…DJって面白いし、いろんな音楽を何でも取り込めるから。続ければ続けるほど、深い世界だと思っています」

ーーYUMMYさんにとって、DJと音楽制作は別モノという位置付けなんですか?

「別ですね。だけど、DJをしていて“こんな曲があったらいいな”って思ったのを制作に生かすことは、もちろんありますよ。それを形にするのは、すごく大変ですけれど(笑)。DJは、乱暴な言い方ですが、元々ある曲を自分の文脈に取り込むべく、エディットをするような感覚の作業だから、制作と近い位置付けのものだと思うし。DJ活動は、楽曲制作に挑戦する大きな動機になっていますね」

ーー2009年に、ミックスCD『HOUSE NATION Conductor – YUMMY』をリリースした時のインタビューでは、“楽曲制作には、実は学生時代からトライしていた”と話していましたよね。

「学生の時にやっていたのと同じアプローチで曲をつくり続けていたら、自分の内側は、もっとまがまがしいものになっていたと思います。でも、人との良い出会いから生まれた、自分と周りの人との関係性も含めて作品にするっていう考え方が、自分には合っているなと感じたんですよね。ここ2年間でいろんな出来事があって、周りの環境も変わったし、自分の身近に、歌い手さんや楽器のプレイヤーとか、アーティストがすごく増えたんです。『D.I.S.K.』は、そういう今の自分がいる場所を、記録として残すアルバムにしたかったんですよ」

ーーそう話す通り、アルバムには、YUMMYさんゆかりのアーティスト / シンガーが多数参加していますよね。

「あとは、私がレイヴ・シーンにいた時代からの知り合いと、一緒につくったトラックもあるんですよ。『D.I.S.K.』は、そういう昔からの人間関係が、全部まとまった一枚なんです。自分って一人で生きているわけじゃないし、いろんな人との助け合いがあって今の私がいるから、それを形にして見せられたらいいなと思ったんです。ファースト・アルバムだし、一人で根を詰めてつくった、生みの苦しみを表したものじゃなくて、楽しさを共有し合いながらやっているものなんだっていう事実を、伝えたかったんですよね」

ーーなるほど。トラックに関しては、四つ打ちを軸としつつも、エレクトロ・テイストのものや、プログレッシヴ・ハウス調のものなど、様々なものが収録されていますね。

「エレクトロとかプログレッシヴ・ハウスっぽい要素は、結果として付いてきたもので、最初からジャンルを意識してつくった曲は無いんですよね。例えば、「鳥の詩」に参加しているSaolilithとは、<DENPA!!!>に出た時から仲良くなったんだけど、彼女の、ジャンルを壁にしない姿勢が大好きというか、お互い予想以上に話が合って。そこから“一緒に何かつくりたいよね”って盛り上がって、あの楽曲が生まれたんですよ。そういう、出会いありきで曲のイメージがふくらんでいったんです。だから、このアルバムに収録されている楽曲は、“自分のDJセットに、こういう音が欲しいな”っていう目線でつくったものばかりじゃないんです」

ーースタイルに縛られない柔軟性は、YUMMYさんの魅力だと思いますよ〜。あとは、Eccyさんとのコラボレート曲も新鮮でした。彼とは、以前から交流があるんですよね?

「結構前から知り合いなんですけれど、彼が四つ打ちの別名義をやってると聞いて、私のイベント<DONUTZ>に出てもらったんです。そこから、“一緒に曲をやろうよ”って言ったら、二つ返事でOKしてくれて。Eccyくんはホントにダンス・ミュージックが大好きで、UKファンキーやダブステップ周りの音を、すごく掘っているDJなんです。自分自身の世界を広げてもらったし、彼も自分のイメージをどんどん更新していくタイプの人だから、私とも気軽にコラボレートしてくれたのかもしれないですね」

ーーところで、本作ではシステムFのカバーも披露していますが、“「Cry」をチョイスするのは、YUMMYさんらしいよね”と、編集部で話題でした(笑)。

「「Cry」にはすごい思い入れがあって、私の中でトランスとハウスをつないだ曲なんですよね。ジュニア・ヴァスケスって、どハウスのDJだけど、BPMを落としてフェリー・コーステンの曲をかけていたんですよ。私が昔から好きなのって、そういう感覚なんですよね。ジャンルには、こだわりたくないんです。でも私の場合、どこかレイヴィーな要素が自然と出ちゃうからね。自分のスタイルは、そういうものなんだなって実感しました」

ーー『D.I.S.K.』のリリースをステップに、ご自身の音楽活動をどう発展させていきたいですか?

「日本語詞のハウスをつくったけど、それは必ずしも日本国内だけを意識したものじゃないんです。今後は日本だけじゃない、もっと広い場所に向けて、制作をしていきます。リリースや制作を続けながら、自分のキャラクターを確立したいなとも思う。あとは、このアルバムを聴いて私に興味を持ってくれた人が、ダンス・フロアに一人でも多く来てくれるのが理想です。DJとしてのやりがいは、アルバムをリリースしてから始まると思うから、それを感じられるようになるのが楽しみですね」

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Kylie Minogue スペシャル

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’87年に「Locomotion」で歌手デビューを果たして以来、世界的に知られるポップ・スターとして活躍するカイリー・ミノーグ。彼女が、通算11作目となるオリジナル・アルバム『アフロディーテ』をリリースしました。

ここでは、最新作『アフロディーテ』についての、カイリーとエグゼクティブ・プロデューサー、スチュアート・プライスから出された公式コメントを引用しながら、本作の内容と、本作に至るまでのカイリーの歩みについてご紹介しましょう。

Kylie スペシャル

KYLIE 愛と美の女神、アフロディーテの名を冠した、光と幸福感に満ちた最高級エレクトロ・ポップ・サウンド

’87年に「Locomotion」で歌手デビューを果たして以来、世界的に知られるポップ・スターとして活躍するカイリー・ミノーグ。彼女が、通算11作目となるオリジナル・アルバム『アフロディーテ』をリリースした。エグゼクティブ・プロデューサーに、マドンナやザ・キラーズ、グウェン・ステファニーとの仕事で名を上げたスチュアート・プライス(レ・リズム・ディジタル/ジャック・ル・コント)、ソングライター勢にも気鋭のクリエイター陣を起用した、話題作だ。

ここでは、最新作『アフロディーテ』についての、カイリーとエグゼクティブ・プロデューサー、スチュアート・プライスから出された公式コメントを引用しながら、本作の内容と、本作に至るまでのカイリーの歩みについてご紹介しよう。


11歳の頃に女優としてのキャリアをスタートさせ、テレビ・ドラマ『ネイバーズ』のシャーリーン役で大ブレイク。そして、’87年に「Locomotion」で歌手デビューを果たした、オーストラリアはメルボルン出身の世界的ポップ・スター、カイリー・ミノーグ。全世界でのシングル総セールスは2,000万枚、アルバム総セールスは4,000万枚という驚異的な数字を誇る彼女は、ここ日本でも幅広い層から支持されているスーパー・ディーヴァだ。

彼女の活動では、特に’00年代に入ってからの活躍は目覚ましく、エレクトロ・ポップ路線のサウンドを打ち出した、通算7作目のアルバム『ライト・イヤーズ』(’00)は全英チャート2位、シングル・カットされた「Spinning Around」は全英チャート1位を記録。ファンの間から完全復活と謳われると、続くアルバム『フィーヴァー』(’01)と、シングル・カットされた「Can’t Get You Out of My Head」で、共に全英チャート1位を記録。翌’02年には、アメリカにもその人気が飛び火し、同アルバムを全米チャート3位に、シングルを全米チャート7位に送り込み、デビュー以来最大クラスの世界的人気を獲得している。

以降は、9thアルバム『ボディ・ランゲージ』(’03)、ベスト盤『コンプリート・ベスト』(’04)、10thアルバム『X』(’07)、’00年以降に発表したシングルのリミックス曲をまとめた『ブームボックス〜カイリーズ・リミキシーズ 2000-2009』(’08)などの作品を発表。’04年には、「Come Into My World」で、グラミー賞“ベスト・ダンス・レコーディング”賞を受賞している。また、’07年に、10年ぶりとなる来日を果たし、人気テレビ番組に多数出演したことも、記憶に新しいところだ。なお、’08年には、エリザベス2世女王より、大英帝国勲章(OBE)を授与されている。

彼女が、昨年秋に話題をさらった、初の北米ツアーの模様を音源化した、デジタル限定のライブ・アルバム『カイリー・ライヴ・イン・ニューヨーク』(’09)を経て、通算11作目となるオリジナル・アルバム『アフロディーテ』をリリースする。エグゼクティブ・プロデューサーに、今やひっぱりだこの才人、スチュアート・プライスを起用した注目作だ。

去る5月14日にBBCラジオで初解禁された、本作からの先行シングル「オール・ザ・ラヴァーズ(All The Lovers)」に対するコメントの中で、カイリーは『アフロディーテ』の内容についても語っているので、ご紹介しよう。なお、初放送された同曲へのリアクションは抜群で、イギリスのTwitterではトレンド・トピックスの第1位を、世界でも第4位をマークしたという。

「「オール・ザ・ラヴァーズ」は、アルバム用に書かれた曲の中でも、最後にできた曲ね。レコーディングをしている最中、“この「オール・ザ・ラヴァーズ」をファースト・シングルにしなくちゃ”って思っていたわ。なぜなら、この曲は、アルバムにある幸福感を完璧に表現しているから。鳥肌が立ったわ」

また、楽曲のミックスを担当したスチュアート・プライスは、次のようなコメントを発表している。

「「オール・ザ・ラヴァーズ」は、このアルバム全体を代表する、不思議な曲なんだ。カイリーは、最高のポップ・ダンス・ミュージックを歌っているよ。キミが、心の眼でカイリーの全てを見れば、それはこの曲の中にある」

そんな「オール・ザ・ラヴァーズ」に代表される本作のサウンドは、現在シーンを賑わせているエレクトロ・ポップの中でも、最先端を行くもの。各曲ごとに多彩なソングライター/プロデューサー勢を招き、カイリーらしい華やかな音世界をつくり出している。スチュアート・プライスが、そこに彼特有の、滑らかで高揚感のあるサウンド・プロダクションを施し、アルバム全体を鮮やかにまとめ上げているのも印象的だ。

各曲のソングライター/プロデューサー勢を何名かピックアップすると、「Too Much」には、カルヴィン・ハリスとシザー・シスターズのジェイク・シアーズ、「Cupid Boy」には、スウェディッシュ・ハウス・マフィアのセバスチャン・イングロッソ、「Everything Is Beautiful」には、キーンのティム・ライス=オクスリー、「Can’t Beat the Feeling」には、リチャード・Xとパスカル・ガブリエル、そして、タイトル曲「Aphrodite」には、ネリーナ・パロット、などなど。話題を集めそうなメンバーばかりだ。日本でのセカンド・シングル予定曲「Get Outta My Way」には、実力派ソングライター/プロデューサー集団、カルトファーザーが参加している。

ギリシャ神話に登場する、恋愛・美・豊穣の女神からアルバム・タイトルをとった、カイリーの最新作『アフロディーテ』。本作は、カイリーの新たなる10年をスタートさせるに相応しい、ポジティブでハッピーなエレクトロ・ポップ・サウンドが詰まった会心作だ。

最後に、本作のジャケットやビジュアル・イメージについて語る、カイリーのコメントをご紹介しておこう。

「アルバム用ビジュアルの撮影は、すごく楽しかったわ。納得のいく仕上がりにしたかったから、少しナーバスになってたけどね。だって、タイトルが“アフロディーテ”よ。最初からハードルが高いわよね。収録曲の大半が幸福感に溢れているから、撮影でもそこを生かしたかったのよ。写真家はウィリアム・ベイカーで、私の親友でもあるんだけど、二人で何度もディスカッションしたわ。衣装の中で特に素晴らしかったのが、ゴルチエのクチュール・ドレスね。正に“アフロディーテ”そのものだったわ。他に考えられないほど完璧だった。求めていたショットは撮れたし、仕上がりも最高。ファンのみんなにも、そう思ってもらいたいわ」

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MEG『MAVERICK』インタビュー

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ファッション・フィールドでも注目を集めているポップ・シンガー、MEG。数々のクラブ・ミュージック・クリエイターと関わり深く、近年は、エレクトロ・ポップ・アイコンとして人気を博す存在です。

そんなMEGが、中田ヤスタカ(capsule)を楽曲プロデューサーに迎え、約1年ぶりとなるフル・アルバム、『MAVERICK』をリリースしました。ジャンルレスなスタイルを加速させ、ピアノやストリングス、生ドラムのサウンドと、レトロなシンセが融合した、新感覚のポップ・チューンが楽しめる本作。ミドル〜スロー・テンポの、メロディアスな楽曲が主体となっている点も注目ですね。

MEGの最新モードが詰まった『MAVERICK』の制作背景について、ご本人に語ってもらいました。今後の活動についての、衝撃発言もアリ!? それではどうぞ〜。

MEG インタビュー

MEG シンプルで温かみのある音を紡ぎ上げた、 転機のニュー・アルバム

モデル、自身のブランドCAROLINA GLASERのデザイナーとして活躍し、ファッション・フィールドでも注目を集めているポップ・シンガー、MEG。シングル『OK』(2007)を発表して以来、エレクトロ・ポップ・アイコンとして人気を博す彼女は、数々のクラブ・ミュージック・クリエイターと関わり深いことでも広く知られている。

ここにご紹介する『MAVERICK』は、そんなMEGが約1年ぶりに完成させたフル・アルバム。中田ヤスタカ(capsule)が楽曲プロデュースを手がけた話題盤だ。6作目のフル・アルバム『BEAUTIFUL』(2006)で見せた、ジャンルレスなスタイルを加速させ、ピアノやストリングス、生ドラムのサウンドと、レトロなシンセが融合した、新感覚のポップ・チューンが楽しめる本作。ミドル〜スロー・テンポの、メロディアスな楽曲が主体となっている点も注目要素だ。

エレクトロ・ポップ・アイコンから次のステップへと羽ばたいた、MEGの最新モードが詰まった『MAVERICK』。その制作背景について、本人に話を聞いた。


【“型にハマらない自分”を宣言したアルバム】

ーー前回のインタビューでは、“『BEAUTIFUL』を完成させた時には、やりきった感があった”と話していましたよね。それを経て、ニュー・アルバムの制作にはどんな気持ちで臨んだのでしょうか?

「バンド編成でライブをやるようになって、ライブでは自分の音楽をすごく伝えやすくなったなぁって感じたので、それもあって、ニュー・アルバムでは、時間をかけて歌詞を書きたいと思いました。その時に伝えたい音楽を、ていねいにつくりたかったんです」

ーー前作よりステップアップした作品をつくるために、どんなことを意識しましたか?

「エレクトロとか、クラブで聴いて耳障りがいい曲って、言葉のリズムを重視して歌詞を組み立てていますけど、このアルバムでは、ただリズムに乗っているだけじゃない、書きたいことを綴った歌詞にしたいと思ったんです。それを、ライブでも歌いたいっていう気持ちがありましたし」

ーーダンサブルな要素よりも、MEGさん自身のメッセージが重要だったんですね。

「そうですね。楽器を取り入れてライブをやってみて、ゆっくりした曲を歌うのも面白いなって思ったし。リズムだけじゃなく、きちんと歌を伝えたいと思うようになったんです。だから今作でも、わりとバラード的なものや、遅いテンポの楽曲の方が、歌詞を書きやすかったですね」

ーー実際の制作過程はいかがでしたか?

「結局、制作のスタートが押してしまって、1ヶ月ないぐらいで10曲つくらなきゃいけなくなっちゃったので、大変でした。今回は、言葉遊びみたいな歌詞じゃなかったし、一回書いてから一晩寝かせないと、ニュアンスを弱めたり強めたりっていう部分が見直せないじゃないですか。でもそんな時間も無く、歌を録りながら間に合わせることに“これでいいのかな?”って疑問に思ったりもして。そんな、“何だろう、このモヤモヤ感は?”っていう思いを表したのが、タイトル曲の「MAVERICK」なんです」

ーーそれは、思いもよりませんでした。先日のライブでMEGさんは、“「MAVERICK」は、アルバムの中で一番気に入っている曲”と話していましたよね?

「そう。タイトルに合うテーマのものを書けたから、安心したんですよ(笑)」

ーーこの歌詞をどう解釈したらいいんだろう? って思っていましたよ…。

「あははは(笑)。やっぱりアルバムを出すなら、自分のペースで制作したいんですよね。なので…型にハマらないっていう意味で、アルバム・タイトルも『MAVERICK』にしたんです。来年からの展開も含めて、今見直して組み立ててる最中で。メジャー・レーベルでの活動自体も」

ーーえぇっ!? それは、衝撃の展開ですね。

「型にハマるってことは、MEGにとって、とても退屈で窮屈なんですよ。発散したくて音楽をつくっているわけじゃないし、楽しんでもらえる人たちに、一番いい形で作品を届けてあげたいって思って。そこに、規制が出てくるとね…。メジャーでは、型にハマったこともやってみようとしたけど、自分には向いてなかったなって思うんです」

【アコースティック色を強めた、次なる音楽スタイル】

ーー中田(ヤスタカ)さんとの制作は、今回はどんな風に進めたのですか?

「今回は初めて、デモが中田くんの弾き語りで上がってきたんです。今までのデモには、実際CDに収録されるトラックとあまり変わらないものが多かったんですけど、今回はリズムとエレピ、仮歌くらいしか入っていなかったんです。そこから、最終的に楽曲がどういう風に変わっていくかわからなかったし、シンプルなオケから歌詞のイメージをふくらませなきゃいけなかったから、パターン化しちゃわないように考えたり。さらにややこしいパズルをやっているみたいな感覚になりましたね」

ーーそうだったんですね。その他にも、何か新しいアプローチはありましたか?

「今回は中田くんの中に、“いつもの手は使わない”ってルールがあったような気がするんですよ。いつもだったら、ビーって鳴らすような箇所をしなかったり、もっとドンドン、リズムが来るようなところを、あえてハズしているというか。禁止事項を彼の中で決めてつくった、コンセプト・アルバムみたいな感じがします。違うかもしれないけど(笑)」

ーーたしかに、アルバム全体を通して温かい音になっているし、ミドル / スロー・テンポの楽曲も多かったので、中田さんの、アップデートされたモードが出ているのかな? と思いましたね。

「って、中田くんも言ってましたよ(笑)」

ーーそうでしたか(笑)。MEGさん自身も、エレクトロ・ポップのアイコン的存在から、脱皮した印象を受けました。

「ありがとうございます。でも逆に、ジャンルが何かわからなくなったかもしれないですね」

ーーストリングスなど、アコースティックな音を多用していたり、シンセもゴリゴリしたサウンドではなく、レトロな音色になっていますよね。

「ちょっと懐かしい感じがしますよね」

ーー「OUR SPACE」は、ヨーロッパの民族音楽みたいな雰囲気も持っていて、かなり斬新だと思いました。

「ねー(笑)。紙一重なんですけど、面白いですよね。それぐらい思い切りの良さがある曲だと思います」

ーーMEGさん的に、新鮮だった曲は他にありますか?

「「MOSHIMO」とか」

ーーあぁー、シンプルなエレピのリフと、生音っぽいドラムが印象的な曲ですね。こういった斬新な楽曲は、作詞や歌も大変でしたか?

「面白い方向へ持っていくのか、キュンと切ないものにするべきか、最初はわからなかったですね。何を乗せても歌詞の意味が前に出てきちゃうし、シンプルなメロディーなので難しかったです」

ーーところで、レコーディングはどんな感じだったんですか?

「いつも通り、中田くんと私以外は誰も来ず。ボーカル・ブースから出たら誰もいません、みたいな感じでした(笑)」

ーーやっぱりそうでしたか(笑)。中田さんから、何かアドバイスはあったんですか?

「歌い方の指示はありましたよ。中田くんは、歌心のあるエディットをする人なので、“ここは人の力だと、ひと息で歌うのは絶対無理だけど、後でキレイに処理するから、分けて歌ってつなげよう”とか、これまでの制作よりもディレクションが多かったですね」

ーー歌詞には、これまでと違って“大人の女性の恋愛観”が描かれているように感じたんですが、いかがでしょうか?

「やっぱり、書いていてしっくりくる言葉じゃないと、“これ、みんなに伝わるのかな?”って思うので。その時の状況をリアルに残せたらOK、みたいなところはありましたね」

ーー歌詞には、これまで以上に、リアルなMEGさんが表れているんですね。

「そういう歌詞が書きたかったんです。ここ2年間ぐらいは、リズムに乗せてキャラクターを演じるのが面白かったんですけど、もうちょっと、中身の部分を残していきたいなって思い始めて」

ーーなるほど。『MAVERICK』は、シンガー / アーティストとして、パーソナルな部分を深く掘り下げたアルバムなんですね。

「だからこそ、慎重に言葉を選びたかったし、時間もほしかったんですよ」

ーーその変化は、アルバムのアートワークにも表れているんでしょうか?

「そうですね。エレクトロ・ポップみたいなものにも飽きてきたし、年相応の生々しさをアートワークでも表現したいなと思ったんです」

ーー初回限定盤は、24ページのブックレット写真集や、ポストカード、ステッカーが付いた、BOXセット仕様になっているそうですね。パッケージに対するこだわりも、さすがMEGさんだと思いました。

「CDを買った時って、家に持って帰って開ける瞬間が楽しいじゃないですか。それは大事だと思うので、できるだけ付録をいっぱい入れたいと思ったんです。やっぱり、きちんとしたものをつくって届けたいですからね」

ーーMEGさんは、CD制作だけでなく、ライブなどを含めた活動全てに対して、常にアイディアが豊富ですよね。

「私は、別にすごく歌が上手いわけでもないし、面白いことが言えるわけでもないから、MEGっていう存在自体が、みんなに面白いプロジェクトだって思ってもらえるキャラクターとして、常に何かを発信していけたらいいなぁって思っているんです。MEGというキャラクターには、退屈しないことを何でもやらせたいんですよね」

ーー繰り返しにならないように、常に新しいことを提供するのは簡単ではないので、それを実現できているのはスゴイと思いますよ。

「私は常に、自分のことを気になったくれた人を、ふるいにかけているんだと思います(笑)。“これは好きだけど、あれは好きじゃない”とか。“プロデューサーは中田くんでいいんじゃない?”って周りが言ってくれても、ハドーケン! と一緒にやってみたり(笑)。ファンのみんなは、よくついて来てくれるなぁ、マジでありがとうって思いますね」

ーー今後新たにチャレンジしたいことは、何かありますか?

「カワイイ曲を書くのは楽しいんですけど、自分じゃない人に歌ってほしいなぁってゆう歌詞が生まれることもあるんですよ。だから、他のアーティストに歌詞提供をしてみたいですね」

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